後継者をどうするか問題

「この先、どうしようか。」

後継者を作ることは、今テンポスにとって非常に重要な課題だと捉えています。しかし、人を育てるのが好きで、今までいろいろやってきた私でも、「こりゃぁ~大変だ」ということばかり。今日は、日経新聞を題材をに、後継者について話したいと思います。

 2021年3月1日、日経新聞は自動車メーカー「スズキ」の鈴木会長が91歳で退任すると報道した。これまで強力なリーダーシップで経営してきた鈴木会長に代わり、息子の鈴木社長と、社長を補佐する人員を増やし、集団指導体制のもと経営を行っていくとのこと。しかし、この集団指導体制は上手くいかない場合が多い。

 JALや日産がなぜ業績が低迷しているのか。どちらも優秀な人材は何百人もいるはずだ。それなのに、倒産しかかったということは、優秀な人材が何人いてもダメだということがいえる。

ところが、大塚家具で考えると、組織を引っ張る強烈なリーダーがいれば良いというわけでもない。カリスマ創業社長の力量だけでやっいると、市場の変化に会社が対応できなかった時、業績は悪化してしまう。優秀な人がいるだけでもダメ。強烈なリーダーがいるだけでもダメ。必要なのは、強烈なリーダーの下で、専門的な見地から経営者に高度な判断を与える、専門集団を配置することだ。

集団指導体制は、「集団無責任体制」と紙一重

平時のときは、集団指導体制でも5年、10年は会社を続けられるだろう。しかし、複数の指導者の合議によって意思決定する集団指導体制では、有事は乗り越えられない。例えば電気自動車を今後どうするか会社で決定する時に、集団指導体制だと「エンジン自動車の時代だからまだ見極めよう」という話になりやすい。「利益の半分をかけてでも電気自動車に進むぞ」という結論が出せないんだ。「集団指導体制」は「集団無責任体制」と紙一重である。

 とはいえ、テンポスを含め中小企業は、「集団指導体制」なんて考える必要はない。集団指導体制は売上規模が5000億とか1兆円の会社になって初めて必要になってくるものだ。だから、社員100名、300名の小規模の会社が「集団指導体制」なんて考えはじめたら、それは会社が消える道をたどりはじめたとういことだ。会社が小さい時、その後成長するかはは経営者の熱量次第といっても過言ではない。

後継者問題、苦労は覚悟しているかい?

 創業社長は自分の引退が見えてきたとき、後継者をどうしようか考えるよね。だけど、50人、100人くらいの小規模の会社は後継者なんて考えなくて良い。なぜなら小規模の会社に優秀な人材がまず入社することはないし、新卒もたまたま面接に来たくらいのレベルだから、何年勤めても幹部にはならない。今から自分の右腕を作るのは難しいことなんだ。だから、あなたの代で終わり。いくら運動してもアンチエイジングしても80歳か100歳で人は死ぬのと同じで、企業にも寿命がある。

そもそも、なぜ後継者を作りたいのか。たいていの中小企業は大きな発展を望んではいない。起業後、創業者の力量が大きければ従業員が100人の会社になり、小さければ30人の会社になるという差はでてくるが、その後、従業員を30人から100人にしようとか、上場しようとか、そういう発展を望む経営者は少ないんだよな。だから、もし今を維持するだけで良いなら、2代目は、真面目にきちんとやってくれる人に頼めばいい。きちんとやることをさえやっていれば、引き継いだ後も10年、20年は会社は続くだろう。しかし、現状維持は「衰退」である。維持するということは、ゆっくりと潰れる方向に向かっているということだ。テンポスも、ただ物を仕入れて売って利益を出していれば楽だよ。幸せだよ。だけど、発展させようとするから、トレーニングしたり、新事業をするから苦労するんだ。

もし、それでも維持するだけでなく発展のために後継者を作りたいなら、経営者は自分がまだ50歳とか60歳の時に、引き継がせたい人に会社を任せてみることだ。そして、自分は他の事業をやるとか、別法人で新しい仕事に集中する。会長になって、その下に社長を置いても、本物の社長にはならないからだ。ただし、任せっぱなしは心配なので、月に1回、2回報告してもらいながら、その報告が2ヵ月に1回、半年に1回と減らせるように育てていく。そして、自分(経営者)が方針を言うだけで、戦略をたて動ける人に育てていく。これができるか数年かけて見極める。もしダメだと思ったら、また自分が社長に戻ればいい。その時にはもう70歳になっていると思うけど、引退は80歳に延ばせばいいんだ。そして、会社が落ち着いてきたら、また後継者を育てていく。また失敗したら引退を90歳に延ばす。90歳まで現役で働くなら、60歳から後継者育成を始めても3回はチャンスがあるよ。それでも育てられないなら、やはりこの規模の会社ではダメだと思って、会社をたたむしかない。

自分はどちらの道を進むか

 言葉はきついが10年、20年かけて潰れる方向に向かうか、発展するために生きるか、この2つに1つだ。ゆっくり潰れてもいいなら後継者の問題はそんなに心配しなくていい。挑戦も変革もする必要はない。うまくやる人を置いておけばいいだけだ。ただ発展させたいなら、挑戦し続ける強烈なリーダーを育てないといけないから、簡単には引退できないよ。ま、テンポスもその内の1社なんだけどさ。

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記者:スマイラー特派員
乙丸千夏(テンポス広報部)