じっと耐えるべき人と、チャレンジすべき人 今、何を選択することが正解なのか

2回目の緊急事態宣言が発令されました。先行き不透明な中で、飲食店は何をやるべきか。どうすれば生き残れるか。前号に引き続き「今を生き抜く」をテーマにお話しさせて頂きます。

市場競争の中で生き抜く会社とはどんな会社か。それは、どんな商品がお客様に喜ばれるかを探し当て、それを提供できる会社だ。喜ばれる商品を提供できれば売上はあがり、できなければ売上は下がる、単純な話である。しかし、この “お客さまが喜ぶもの”を探し当てるのが難しい。お客100人に「何があると嬉しいですか?」と聞いても、お客も自分が何を求めているか知らない。だから、お客様の声をヒントにしながら、本当に求めているものを見つけ出さないといけない。難しいよなぁ。難しいからこそ、大企業だって倒産してしまう。でも倒産した会社が怠けていたかというとそうではない。どの会社も血まなこになってニーズを探して商品を開発してきた。

強者が絶滅し弱者が生き残った恐竜時代から学ぶ飲食の生きる道

今から6600万年前、地球に隕石が落ちると世界中で津波や山火事が起き、大量の粉塵が太陽を隠したことで地球が寒冷化し恐竜が絶滅したと言われている。しかし、地球上で強者だった恐竜は絶滅したのに、ネズミやモグラ、そんな小さな哺乳類は生き残った。小さな生物は太陽が無いなかコケを食べたりしながら、なんとか生きのびたのだ。そういう生物が今の時代を作っている。

ここで何が言いたいかというと、コロナの中、飲食が生き残るためには、今はじっと耐えなければならないということだ。例えば、家賃は払ってもせいぜい1割にするとか、従業員の出勤は最低限にして、残りは自宅待機にするとか、取引先には頭を下げて、怒鳴られようと支払いを伸ばしてもらう。これがじっと耐えるということだよ。もし、家賃も下げられない、従業員も減らせないなら閉店するしかない。今でさえ耐えられないなら、コロナがあけても生き残るのは難しいからだ。昭和40年代から外食市場は伸びて一時は29兆円を超えるまでになった。しかしそこから市場が飽和し、市場は22兆円まで下がっている。そして今コロナだ。外出自粛により市場はさらに縮小している。自宅で食事する人が増え、外食をしないことに慣れてしまうなど、食のライフスタイル自体が変わってきている。今後はさらに外食は減るだろう。だから今、経営が立ち行かない店は赤字が膨らむ前に閉店した方がいい。もう一度飲食をやりたいなら世の中がおさまってから店を出せばいいんだ。踏ん張りたい気持ちは分かるが、立ち直れなくなるまで赤字が膨らんでしまっては、もともこもないよ。

今利益がでている会社がやるべきこと

じっと耐えなければならない店がある一方で、今は赤字が少しとか、少し利益が出ているとか、体力のある会社もある。例えば、テンポスグループは利益は前年比で7割減と大幅に減益しているが、テンポスバスターズ単体でみれば業績は好調だ。また、テンポスグループは現預金及び株式も含めると150億円ほど保有しているから、テンポスバスターズ以外のグループ会社が赤字が続いたとしても存続できる体力がある。そうすると我々がやることは、ひたすら社員教育することだ。

今から25年まえの創業間もないころは、「リサイクル」なんて綺麗な言葉はなかった。中古品を扱う会社は “リサイクル屋”ではなく“ゴミ屋”だった。簡単にいえば、社会で落ちこぼれた人が仕事を求めて入る、そんな立ち位置だった。しかし、時代の変化の中で、“ゴミ屋”が “リサイクル屋”と言われるようになり、新入社員のレベルは国立大卒級の高学歴が入社するようになった。ただこの人たちは、頭はいいが意欲は高くも低くもない、いたって普通の人たちだ。一方で創業から働いている人たちは意欲は高いが頭が良いわけではない。この人たちをひっくるめて教育していく。ただの物売りの従業員から飲食店の経営を応援できる従業員に育てていく。そのために、今は一人あたり年間240時間の勉強をさせている。なかでも、WEB事業を持つ「テンポスドットコム」「テンポスフードプレイス」は、年間400時間の勉強をさせる。働く時間を減らして、勤務時間に勉強させる。会社は人件費を払いながら勉強させるのだから、これは先行投資である。

意気込みだけではどうにもできないこともある

このように、飲食店はじっと耐える道と、今の状況をチャンスと捉えて社員教育したり、M&Aで新しいことに取り組む道、この2つの道がある。どの道を選ぶかは、自分の意気込みではなく、今置かれている状況を見てどちらかを選択する。繰り返すが、状況を見誤って意気込みだけで店を続けると、赤字が膨らんで、再起不能になってしまうからな。

じっと耐えるなんてできない、何か新しいことを始めなければと焦る気持ちも出てくるだろう。だが、例えばテイクアウト、ゴーストレストラン、キッチンカーを始めたからといって、それが利益の支えになるか? ならないよな。目新しい取り組みをすると、メディアに取り上げられるから、それをやったら儲かるように思うかもしれないが、テンポスにくるお客様に直接聞いても、ほとんどの人は利益にならないと答えるよ。キッチンカーをするために車を買っても、買った車の回収ができない。だから、今利益が出ていないなら、無理に設備投資して新しいことを始めるのではなく、じたばた余計なことはしないで、赤字が大きくならないようにじっとしているに限る。今は、政府の発表によって、来店客が減ったり増えたりする。適切な判断ができないときに、焦っていろいろやらないほうがいい。一方で黒字の会社は準備をすすめていく。社員教育する、M&Aして外食以外の事業に進出するとか、会社の体質を変えていく。最後になるが、今あなたが置かれている立場で、やるべきことが分かれる。なんとか生き抜くぬくぞ。

▶smiler vol.55 額に汗して働く人が一番偉いが評価が低い時もある
▶smiler vol.56 人の改革よりも自分の改革が第一と心得よ
▶smiler vol.57 仲間と抱き合い涙するような組織作りは必要か
▶smiler vol.58 「社員の幸せの追求」と嬉しそうに話すビジネス界の青年たちよ、世の中そんなに甘くない!
▶smiler vol.59 成功する人と成功しない人の違いとは
▶smiler vol.61 売れない営業マンや、強く言えない上司が、相手の「NO」を「Yes」に変えるには?
▶smiler vol.62 こじれた人間関係を修復するには
▶smiler vol.63 退職届けをだす前に読んで欲しい、あなたが仕事で辛いと感じてしまうわけ

記者:スマイラー特派員
乙丸千夏(テンポス広報部)