2019年4月、上野千鶴子さんが東大の入学式で「これからあなた達は努力しても報われない世界に出ていくんですよ」と、祝辞を述べて賛否両論が起こったよね。
だけど、これは当たり前のことである。
飲食店が一生懸命頑張ったからと言って売り上げが上がらないのと同じさ。「今月はこうしよう」「来月はこうしてみよう」、そんな試行錯誤を繰り返して見つけた“お客さんが喜ぶ努力”が出来て初めて、ようやく今までの努力が報われる。努力しても報われないのは、その努力の方法が間違っているときだ。でも、正しい努力が見つけるにはとても時間がかかる。だから、大抵の人は報われる前に途中で諦めてしまう。
上野さんの「努力しても報われない世界」という見方に賛成だという人は、努力の方向が間違っていることに気づかず、上手くいかなかった人達だ。オリンピックに出たいと努力しても出場できるものではない。東大に入りたいからと勉強しても合格できるものではない。それでも、工夫しながらいろんな勉強法や鍛錬を積み上げてきた人達だけが、成功をつかむことができる。努力というのは簡単には報われないけど、何で努力をするのかというと、努力をしなければ目標を達成することができないからだ。
徳川家康は、人間の一生とは、重い荷物を背負って坂道をのぼるようなものだと言った。気を抜いたらザザーッと下に落ちてしまう。だからといって荷物を降ろすわけにはいかない。重い荷物を持って坂道を歩くのが人生なんだから。そこには、報われるとか、報われないとか、そんな次元の話ではないよ。だから天下人の家康と比べると、俺なんてまだまだ甘いよね。
会社が儲かってもいないのに飢餓や地球環境問題について心配する人へ。利益もろくに出せていないのに社員を幸せにするとか、きれいごとを言っている人へ。我々が生きている実業界はきれいごとを言う世界ではないということを伝えたい。
二宮金次郎が殿様の命令でいくつもの村の再建に行った時、村の豪農や豪商を集めて、「お前らは馬糞に生えてくる糞茸だ」と言っていたそうだ。続けて、「お前らは、村の貧乏人がぺこぺこ頭を下げるから自分が偉いように感じているようだけど、その財産はお前が稼いだものではない。ご先祖が稼いでくれた財産だろ。たまたま裕福な家に生まれただけで、お前達は何も偉くはない。それなのに、もっと自分の財産を増やそうと思う精神が糞茸なんだよ」ってね。そう論したうえで、不自由なく暮らせる資産があるなら、その資産を貧乏人や村に役立つようなお金の使い方をしないといけないと説いたそうだ。
二宮金次郎の言う「糞茸」とは、充分な財産や恵まれた環境があるにも関わらず、自分だけが幸せになることを考えている人の事である。会社の規模も大きくなって充分な資本のある会社の社長が「糞茸」だったら悲惨だよ。だから、二宮金次郎のように従業員のためや、お客様のためといった「利他の心」をもって経営することは大切なことなんだ。
しかし、実際は「自分だけが生き残ればいい」というくらいの気概を持って仕事に取り組まなければ、会社が大きくなる前に競争社会で負けてしまう。だから仕事の動機が「お金を儲けたい」とか「自分だけが得をしたい」と思う事が悪いわけではない。その本能が会社を成長させるエネルギーの元になるからだ。そして会社が成長して充分な資産が出来るようになったなら、そこで初めて従業員のため、お客様へのためにと還元していってくれ。そうなって初めて社員も幸せにすることが出来るようになる。
うちの会社もずっと「ブラックテンポス」なんて言われてきたけど、経常利益20億円をこえることができたので、これからはお客さま、従業員にどんどん還元していきたい。
顔が良い人というのは、コミュニケーションを取るときに、「あなた頑張っているね」「大丈夫なんとかなるよ」、こんなプラスのストロークの投げかけをすることが出来る人だ。プラスのストロークをすることで、笑顔も自然と出るし、周囲に感謝できるようになり、いい人間関係が築けるようになる。だから、プラスのストロークを言う人の近くに身を置くことは大切なことだよ。プラスのストロークをお互いにすることで、一日一日がプラスになっていくからね。だから、仕事ではどんどん成功に近づいていくし、生活面では良い人と結婚して明るい将来を築いていけるだろう。つまり「顔の良い人」とは、木村拓哉のような色男と付き合えと言うことではなく、プラスの投げかけや態度をとる人達と付き合えという意味である。
一方で、会社の中でマイナス思考な人、いつも悪口を言っている人の顔というのは、どことなく歪んでいるだろ。そんな人を自分の近くに置いておくと、自分の神経や精神もマイナスな方にひっぱられて、顔も歪んでしまうから気を付けて。
smiler50号 森下篤史
(記事:オト)
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