人間関係を築ける人と築けない人、自分の感情をコントロールする術とはSmiler vol.47

前号から引き続き私が人生の中で大切にしていることをお話しします。自分はどんな人生を作り上げていきたいか、そんな事を考えながら、読んでみてください。平成最後の親父の小言をお届けします。
知らなかった・なるほど・そうだねと言え

自己主張する時に、他者肯定ができない人がいる。相手が何かを話した時に、すぐに「そうだね」と言えない人だ。一言、相手の話を否定するようなことを言ってしまう人は、対人関係において『自己否定』のスタンスで生きているからなんだ。しかも、そんな人は、さも地が意見のように主張してくるが、結局は相手が話した事と同じような意見を言っていることがある。「一泊二日で富士山に登ろうよ!」と話しをしたとする。すると、「膝が痛いから」とか「疲れるばかりだよ」、なんてケチを付けるようなことを言うくせに、結局は山登りに参加する、そんな人が周りにいるだろう? それなら最初から「そうだよね」と言っておけばいいのに、いちいち否定してくるんだよな。そんな人と何回話しても分かりあえたな、と感じられるような人間関係を築くことは出来ない。しかも、他者否定していることを本人が自分で気づくことは難しいからなおさらだ。もし、あなたが営業マンならそれは致命的なことである。

セールスの基本原則は、お客さんと心を開いて話せるかどうかだ。そんな場を作るためには、お客さんが何か言った時に、「そうですね」と肯定し、反対に、自分がお客さんに質問をする時は、お客さんに「そうですね」と答えてもらえるような質問をしなければならない。例えば、こんな会話だ。

営「ここ何十年で、子供を生む家庭が減っていますよね」

客「そうだね。」

営「我々の時代は一年間で200万人生まれていたのが100万人を切っていますから、採用する側としては大変ですよね」

客「アルバイト募集の広告を出してもさっぱりだよ」

営「そうですよね。しかも飲食業界は人が定着しなくて大変ですよね」

客「そうなんだよ、応募は減っているし、定着率を上げていかないといけないんだよね。」

こんなふうに、「そうですね」「そうなんだよ」という会話を続けていると、だんだんとお客さんが心を開いてくれるんだ。だから、人との会話では「そうですね」と言うに限る。3日前に、「外国人なんて使い物にならない」なんて言っていたのが、今日は「いや~外国人は働き者だよ」と、言っていること前に言ったことと少しくらい違っても「そうですね」と言っておけばいい。「数日前までさんざん外国人はダメだって言っていたじゃないですか!」なんて言う必要はない。ただ、ここで気をつけないといけないのは、人の悪口に対してはあまり相槌を打ってはいけないということだ。悪口を言ったり誰かを陥れようとする話になったら「そうですか」とだけ言って、すぐに別の会話に変える。悪口の話に同意してはいけない。同意してしまうと、別の場面で、「山田さんは、あなたの事を嫌いだと言っていた」となってしまうからね。ちなみに、悪口の話になった時に反論するような事は、相手を面白くない気持ちにさせるからわざわざ言わなくて良い。

人間関係を作り上げていく時に大事なことは、「そうだね」「なるほど」「知らなかった」という相づちを打つこと、しかし悪口には同意しないことだ。そして、「そうだね」が言えるようになったなら、次のステップは良い意味で相手を焚きつけるような事が言えるようになることだ。「桜が咲きましたね」と言われたなら「そうですね、花見をしたら気持ちいいでしょうね。皆さんでやりませんか?」というように、相手の話を肯定し、なおかつその気にさせるような言い方をすることで、一歩進んだ人間関係を築いていくことができる。これができれば、相手を思うように動かせるようになり、自分の人生をより豊かにしていくことだって出来るんだ。

辛い出来事は神様が自分を試していると思え

辛いことが起こった時、当人にとっては一大事のように感じてしまうものだ。しかしその時に、自分を励まし前向きに考えられる人と、逃げたり自暴自棄になってしまう人がいる。なぜ、そんな違いが出るかというと「閾値(しきいち)」という人間が持つ感度のコントロール方法に関係しているんだ。

閾値とは「辛い」「嬉しい」等を感じる感度の値のこと。付き合っていたカップルの男が彼女と別れていつまでも寂しいとくよくよしているのは、「寂しい」という感度が高すぎるからだと言える。反対に、「寂しい」という感度が低い人は、新しい出会いを作ろうと趣味のコミュニティに入ったり合コンに行って新しい彼女を作ってしまう。もし後者のような人になりたいと思うなら、「寂しい」という感度を下げなければならない。

終戦から20年経った頃、沖縄に行った時にタクシードライバーからこんな話を聞いた。最初に空襲にあった日、数十人も人が死んで、街は大変な大騒ぎだった。痛みで叫び声を上げる怪我人の対応に追われ、遺体安置所には悲しみにくれる人でごったがえしていたという。そのドライバーもショックでその日はご飯が喉を通らなかった。しかし、空襲が何日も続くと、死んだ人はリアカーに詰め込んで運び、一人一人ではなくリアカーを倒してドサドサっと人間を捨てるように降ろしていた。そんなふうになってしまったと暗い表情で話すタクシードライバーだったが、それは、そのドライバーがひどい人間になったというわけではなく、ただ辛いという感度が鈍くなっていっただけなんだ。それくらい、人の感度は変化するものだよ。

では、どうすれば「辛い」という感度を下げる事ができるのか。その一つが、「神様が自分を試している」という考え方だ。辛いできごとが起きた時に神様が自分を試していると考えることで、「こんな事でクヨクヨしても仕方ないな」客観的的に自分を見ることができるし、辛いという感情も和らいでくるものだ。幸せになる人、成功する人というのは、幸せになる、成功する選択をしている。自分を客観的に見て励ます力をつけることで自分が選択する行動も変わり、幸せな人生を送る手助けをしてくれるんだ。

だからこそ、「辛い」「嬉しい」といった自然に抱く感情そのままに従って生きるのではなく、自分はどんな時に辛いと感じるのか、嬉しいと感じるのかそれぞれの項目を書き出してみることで自分の閾値をコントロールしていくことが出来る。そして辛い、悲しい、あの人が嫌いといった感度が高い人は、その感度を下げる練習をして感度を鈍くする。反対に、嬉しい、感謝いった感情の感度を上げて感じやすくすることで、自分の人生を良いものにしていくことができる。

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smiler47号 森下篤史

(記事:オト)