同社がカフェ業態を手掛けたのは今から6年前のこと。当時、居酒屋やレストラン等の夜業態を中心に展開していたが、昨今の若者の酒離れや少子高齢化等の変化を考慮し、昼業態をオープンすることを決めた。そこで以前から興味のあったカフェ業態を開発すべく、親交の深い仲間のもとで、数人の社員と共にカフェ運営の指導助言を受け、後に「EWD(エスプレッソディーワークス)渋谷店」をオープンするに至る。
―赤塚氏
「カフェをオープンした当初、こだわりのコーヒーを提供していましたが、それほど深みのある業態とは言えませんでした。何か1つ柱となるものが必要だと感じるようになり、そこで私が選んだのが“ベーカリー”でした。ベーカリーは初期投資が高額なことから簡単には参入できないこと。またチェーン店をはじめ、ベーカリーカフェを本格展開している企業が少ないことから、ベーカリーカフェをオープンする事にしたのです。」
業界初・日本初のパンづくりに挑戦した
ベーカリーカフェをオープンするにあたり、目玉としたのは高級食パンだ。しかし街中のパン屋でも当たり前に高級食パンは売られている。では、どう差別化を図るか。赤塚氏が重視したのは、「あれ、なにっ!?」と、あっと驚くような特徴だ。そのためにも今までにない食パンが必要だった。
そこで、赤塚氏が目指したのは「日本一柔らかいパン」だ。通常、食パンは小麦に対して水分は70%ほどしか入れられない。それ以上、水分を入れると離水し、まとまらなくなるのだ。だが、この常識をやぶる水分量の多い、柔らかいパン作りが始まった。そして完成したのが、「小麦100%、水分100%の超柔らか食パン」である。結果的に今までにない水分量の世界初の食パンを開発することに成功した。小麦100、水分100が特徴であることから、食パンのブランド名は「ワンハンドレッド」と名付けた。この食パンを目玉とした、新たなエスプレッソディーワークスが誕生した。
「ワンハンドレッド」の食パンは、このコロナ下において、テイクアウト販売でも強い武器となった。2021年1月に茨城県鹿嶋市の郊外にオープンしたベーカリー併設の「スプレッソディーワークス」では、売上の3割をテイクアウトが占める。
―赤塚氏
「テイクアウトで何より大事なのは、ブランディングだと考えています。「あれ、なに!?」と飛びついて行列を作るためにも、「業界初」「日本初」といった冠を付けられるかどうかが重要だと思うのです。私は、どんな食パンなら日本初になれるかと考えた結果、日本人が好きな「やわらかい食感」、これで日本一を目指そうと思い開発しました。それがテイクアウトでも強い武器になっています。」
2021年3月にオープンした食パンのテイクアウト専門店「ワンハンドレッド」は、7坪の店舗ながら月商1千1百万円を見込んでいる。
カフェ業態を展開する上で重視するもの、それは「席数」
最後に、カフェ業態に欠かせないのは何かを伺った。
―赤塚氏
「以前のカフェは、雰囲気の良し悪しが重視されていたと思います。しかし、今は、コーヒーにしろ、料理にしろ、カフェ業態でも“味”が求められる時代になってきました。また、ある程度、席数は必要だと思います。席数が少ないと、だんだんと「あそこ、早く帰ってくれないかな」と思ってしまいますよね。そうすると、お客様にもその雰囲気が伝わってしまい、居心地悪く感じさせてしまう。一方で席数に余裕があれば、何時間滞在されたとしても、他の席が回転しているから、それほど気にならないし、良い雰囲気を保てるんです。そうすれば、お客様の満足度や次の来店にも繋がります。カフェをするなら、席数を確保できるか、これが大事だと考えています。そのため、今回、茨城県鹿嶋市にオープンしたベーカリ―併設の店舗(FC店舗)は、しっかり客単価もとれて、席数も取れる郊外型のカフェのモデルとして、確かな手ごたえを感じています。」
今後の展開
今後、力を入れていきたいのは、既存店舗の人気メニューを専門店にして展開していくことだ。例えば、今回、食パンのテイクアウト専門店をオープンしたように、カフェで人気のハンバーグを使ったハンバーグ専門店などの展開も考えている。ただ、取材を通して赤塚氏が一貫して伝えているのは「ワクワクする面白い飲食にチャレンジしたい」ということだ。次はどんなワクワクを作りだしてくれるのだろうか。今後も赤塚氏のチャレンジを追いかけていきたい。
取材協力
株式会社DREAM ON
代表取締役社長 CEO赤塚元気氏
東京オフィス:東京都渋谷区宇田川町36-19
乙丸千夏(テンポス広報部)