わたしが飲食業に入ったのは22歳のときです。当時は福島県郡山市で会社勤めをしていたのですが、その事務所が閉まることになり、転職先を探している中で、当時の上司から「行きつけの飲食店が新しくスポーツバーを開店させるからオープニングスタッフで受けてみたらどうか」とお話があったのがきっかけでした。
最初はアルバイトとしてカウンターで見よう見まねでお酒をつくっていました。もちろん私は完全な素人でしたが、一緒に働くことになったオープニングスタッフの皆さんは、素人ではありませんでした。飲食店経験者の方々や、バーテンダー協会の方もいました。その中で、自分が足を引っ張るわけにはいかない、早くカクテルの種類を覚えて肩を並べたいという焦りもあり、出勤のたびに一生懸命勉強したことを覚えています。
一度、みんなで同じカクテルを一斉につくって、スキルを競う大会が社内で開催されたことがあります。その時にバーテンダーの方に褒めてもらったんです。「貴女が作ったカクテルが一番おいしい」と。それがとっても嬉しくて、ますます頑張るようになりました。
同時にキッチンのほうも少しずつ任されるようになっていき、1年ほどたつと社員に昇格することができました。
5年ほどして、私の主人の仕事の都合で宮城に来ることになりました。最初は昼職に就いたのですが、今度はコロナの影響で今年の1月に事務所が閉まることになってしまいました。そこで「飲食店をやるなら今しかない!」と、関西から主人のお母さんを呼んで、一緒に飲食店をつくることにしたんです。実はお義母さんは関西で長年飲食店を経営していて、その腕を借りて「近い将来、宮城で関西の味を提供できる飲食店をつくる」というのが私たち家族全員の夢だったんです。
コロナ禍で不安なこともありましたが、周囲の後押しと大家さんの心優しいサポートのおかげで、無事5月にOPENを迎えることができました。
お店のスタイルは決めていて、お出汁のきいたおばんざいを毎日だいたい5種類以上。その他お料理は、仕入れ次第でメニューは変わりますが常時25種類くらいは準備できるようにしています。基本はお義母さんが料理担当なのですが、いずれは私が継ぎたいと思っていて目下修行中です。
宮城にも関西出身の方は多くいらっしゃいます。その方たちに安心して故郷の味を提供できるように、そして女性一人客の方でも、安心して飲みに来ていただけるように、居心地のいい空間をつくっていきたいです。そして私自身も若女将として自立した女性になっていきたいと思っています。
いま、お店ではPB商品の開発も密かに進めています。「万能辛みそ(ヤンニン)」や「おかず海苔」また、定番メニューで人気のある「あご肉炒め」をブランド化していくために日々取り組んでいます。ぜひお店に来たらその美味しさを体感していただきたいですし、いつでも心を休めに気軽に立ち寄っていただけたら嬉しいです。
◆取材協力
「関西居酒屋 Jaw meat & おばんざい」
宮城県仙台市青葉区国分町2-10-11 第三吉岡屋ビルB1 第4号室
☎︎022-398-4393