すごい部下を作るには、あなたはどちらのタイプ?

前号に引き続き、部下の育成についてお話します。あなたは、部下にはある程度強制的に仕事をやらせるのと、納得させて仕事に取り組んでもらうのと、どちらが大切だと思いますか?

7月2日、日経産業新聞にユニ・チャームグループの社長の高原さんが「人は感情で納得して行動する」というタイトルで寄稿されていた。ユニ・チャームといえば、時価総額2兆7千億円、国内上場企業3,800社の中でも時価総額トップ50位に入る会社だ。ユニ・チャームでは、幹部社員が会社の戦略やプランを部下に伝えるとき、部下を説得するのではなく、納得できるように伝えることを大切にしている。そのため、一方的に会社の方針を説明するのではなく、部下一人ひとりの発言を促し、幹部はしっかり聞くことを大切にしているのだ。しかし、この「納得してもらう」の考えをそのまま中小企業に持ち込むのは非常に危険だ。

大規模企業と中小企業の闘い方は違う

ユニ・チャームのように規模が大きく知名度が高ければ良い人材は勝手に集まってくる。ここでの“良い人材”とは、能力の高さだけでなく、人間関係の作り方が上手だったり、前向きな姿勢で仕事に取り組む等、資質が高い人のことだ。しかし、テンポスを含む中小企業には良い人材はほとんど入ってこない。「金曜日までに電話掛け100件して」と指示したとしても、「忘れていました、やっていません」となる人がほとんどだ。指示を出した当人も指示したことを忘れてしまっている。だから、そういうレベルの人に、会社の方針や目指す姿を説いて、納得させることに時間をかけるのは無駄だよということ。納得してもやらないのだから、我々のような会社は、上司は「やれと言ったらやれ」と指示して強制的にやらせることが大事なのだ。

勉強ができる人とできない人の違いは?

東京大学の入学者のうち6割は親の年収が950万円以上という調査データがある。経済的に余裕があるということは、子供を塾に行かせたり、家庭教師を付けたり、子どものやる気とは関係なく、子供に勉強をさせてきた。強制的に勉強させられるから、子供は自然と人よりも学力が付いてくる。算数の掛け算も同じで、「ににんがし、にさんがろく」と九九を歌に合わせて歌っていると、いつのまにか計算しなくても掛け算が出来るようになっている。小学校の音楽の授業では、先生が「さぁ、私の真似をして」と、まずは生徒にみようみまねで歌わせていると、音痴の人でも自然と歌えるようになる。そして、歌えるようになったら、作者の気持ちを考えるとか、少しずつグレードの高い教育を行っていく。つまり教育とは、強制的にやらなければならない環境を作ることから始めるということだ。
あなたが営業部長なら、トーク練習をこれでもか!というくらいやる。その上で成果を上げるために取り組むことは、強制的に部下の訪問件数を増やすこと、電話掛けの件数を増やすことだ。これができたら、次はもっと件数を増やす工夫をすること。納得させるようなことは後でよい。では、「納得させる」とはどのような状態を指すか。それは、部下を巻き込むということ。「巻き込む」にも2つの条件があり、1つはチーム全員が参加していること、部下本人が自ら参加しているという状態を指す。大切なのは「強制→納得」の順番である。

「馬鹿垂れ!」「くそたれ!」を慎むときがきた

上場企業3,800社のうち、テンポスホールディングスの時価総額は320億、今、国内1500位の位置にある。1997年に“ゴミ屋”から始まった中古厨房屋が、日本を代表する企業の一部になってきたということは、テンポスで働いている人も、それに見合った行動や、ものの言い方をする人材が求められるようになってきたということだ。
ものの言い方でいえば、俺自身が幹部社員に「馬鹿垂れ!」「カス!」「クズ!」とか1日に7回くらい連発しているから、まずはこれを5回に減らさないといけない。今までは、ひたむきに生きるとか、躾をするとか、手抜きをしないとか、そんな考えを大切にしてきたから、手抜きをしているのを見ると、「馬鹿野郎!、そのビルから飛び降りろ!」とすぐ言っていた。これからは慎ましく生きるかな、いや無理かな。

テンポスは「ビジネスサイエンティスト」を目指す

テンポスは経営理念に、「ビジネスサイエンティストを目指す」を掲げている。これは、テンポスが見つけた発明発見・ノウハウは国家人類のためであり、そのノウハウを世の中の役に立つよう広めていくことが、テンポスの役目であるという意味だ。その一つに、今取り組んでいるのが「従業員の給与5割アップ」だ。テンポスのような労働集約型の企業は、人間の手による仕事量が多く、簡単に生産性をあげられるビジネスモデルではない。賃金を5割アップするというのは非常に難しいことだ。だけど今それに挑戦している。中古厨房屋ごときでも「給料を5割アップしても利益が出せる」を実現できれば、そのノウハウを同じ労働集約型企業にノウハウとして提供していくことができる。

◆前回の記事

部下に遠慮して言うべきことを言えない人へ


7月28日、株主総会を行いました。70歳で老練、80歳で熟練。俺は74歳だから、まだまだってこと。同時にテンポスグループ10社の子会社の社長と幹部の育成に猛烈に取り組んでいく。

記者:スマイラー特派員

乙丸千夏(テンポス広報部)