出落ちじゃなくて、目的はリピートとクチコミ

コラム「マーケティングとか言うからややこしい」

ええっ、こんなに!パックから溢れすぎ!

耐油性のあるCPP(無延伸ポリプロピレン)のいわゆるテイクアウト用フードボックスに、はみ出る以上にはみ出ている唐揚げのカタマリ。ビニール袋も油まみれになっちゃうんだから、もっと大きなパックに入れてくれればいいのに…と思いながらも、この超ド級の大盛り感がまた嬉しいんだよなあと誰しも感じることだろう。そういやレジ袋が有料化されたのに請求されてないな、というのはさておいて。

これは、週末に私の家の近所にキッチンカーでやってくる唐揚げ屋さんのお話。パックは3倍くらいの高さまで口が開いているのだが、これで500円というのだから驚きだ。

なんせインパクトがすごい。CPPのパックは入れ物じゃなくて単なるお飾りだ。ダメ押しに店主が最後の1個を隙間に詰め込む演出もピカイチである。初めて買ったときの衝撃は150メートル場外弾であった。育ち盛りの子どもをもつママさんたちが行列をなす。ヘルシーとは言えないが、茶色大好きな子どもたちの笑顔は確定だ。

食に精通している読者の皆さまでさえ、すでにヨダレ大放出かもしれないが、そんなお話はここまでにして、そろそろ本題に移るとしましょう。

インパクトって大事です

インパクト、訳せば「衝撃」ということだが、例えばテレビで「ザ・衝撃映像」なんて番組を見入ってしまうのは、きっと人の脳が欲している体験のひとつだからだろう。ただし、テレビのそんな映像は1回見れば十分である。何回も見たくなる映像はそんな一発屋のVTRではなく、心を揺さぶられるような体験を提供してくれるものに違いない。出落ちだけの漫才やコントじゃ満足できないのと同じだ。インパクトを狙って何かしらのメニューを出すのであれば、ただその一瞬だけではなく、人の期待値を超越した満足感を提供することを考えなければいけない。

件の唐揚げキッチンカー。もちろん美味しいからまた買いたいと思うのだが、圧倒的なボリューム感と美味しさ、そして最後の1個を隙間に詰め込んでくれる店主の太っ腹な演出、これらの掛け算で結果的に心が揺さぶられるのだろうと考える。

戦略でいえば、明確なのはファミリー層というターゲット。

他人が超ド級の大盛り唐揚げを買っているのを見たら目を引いちゃうし、それが美味しかったら1週間後に子どもたちのカラアゲ大合唱が始まるかもしれない。そしてまた並ぶし、すると家事も息抜きできちゃうから、ご近所さんについついそんな話をしてしまうかもしれない。パックは相変わらず大きく口を開けている。そりゃあキッチンカーの前に列もできるわけです。若いファミリー層のリピートやクチコミを獲得するにはどうすれば効果的か。 “インパクト”を単に出落ち芸で終わらせてしまったらもったいない。

記事執筆

ビズクルー株式会社
代表取締役 田中 良平
集客やビジネスモデル構築を強みとする。飲食店のチラシやPOPなどを格安定額制で丸投げできる「助太刀丸」を運営。

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