私の知り合いが独立する前に、某商業施設内に入っているレストランの料理長を務めていた際の出来事です。
当時の後輩、ホールスタッフの男性のお話、彼を仮にAさんと致します。
Aさんは、妻子持ちにもかかわらずバイトの女の子に手を出して離婚をするようなだらしのない奴だが、前職で居酒屋の店長を務めていたという経歴もあり、仕事は人一倍できるとの評価を周りからは受けていたのですが、ある時、他のパートさんから笑い事では済まされない相談をちらほら受けるようになりました。
「Aさん どうやらレジからお金抜いているみたいですよ」「Aさん お客さんからお代金いただいてレジを通さずに懐に収めていますよ」と。
ホール・厨房を統括している当時の店長に相談してもなかなか動いてくれないのでパートさんは私に相談したという。
言われてみれば、Aさんは最近新車を購入したり、Aさんのおごりでしょっちゅう従業員を飲みに連れに行ったりと、やたら羽振りが良い。
料理長である自分の職務外だけれども、これだけパートさんから相談されては仕方がない。過去の伝票や帳簿を洗い、Aさんの不正の証拠を揃え、従業員全員が集まる朝礼でAさんに問い詰めてみた。するとAさんはすんなりと白状し自身の不正を認めた。
店長はちゃらんぽらんであてにならないので、料理長がエリアマネージャーとオーナーに報告することにした。当然解雇処分は免れないだろう、下手すれば事件や裁判沙汰になるかと思いきや、上司からは「Aさんの処分は店長と料理長で決めてください。」との指示。
あぁなるほど店長がちゃらんぽらんならその上もちゃらんぽらんか。と思いつつも、慢性的に人員不足状態が続き、仕事のできるAさんに今抜けられると明らかに業務に支障が出る。
泣く泣くAさんには、二度と同じ過ちを繰り返さないことを約束に勤務を続けてもらうことにした。Aさんも「二度とやりません。」としっかり反省してその後も勤務を続けてくれることになりました。
その後、程なくして料理長は退職し、独立しました。独立後数年経って、まさかの情報を耳にすることになりました。
なんと、その後Aさんはそのレストランの店長になっていたのでした。
普通そんな事件を起こした人間を店長に起用するか…？！
いやいや彼は改心して真面目に働いて出世したのだろう…と思ったら大間違い。
当時の事件を知る従業員が全員退職した後、Aさんはやりたい放題。相変わらずレジ金泥棒も続けていたそうです。
もはや呆れを通り越して笑ってしまいました。
その噂を聞いてから数年後、そのレストランは商業施設から撤退、親会社も倒産しました。
因果応報とはこのことで、上がちゃらんぽらんなら、そりゃあその下もそうなるよね。知り合いの料理長もオーナーになった今、諸々杜撰にならないよう気を付けなければと言っていました。
（40代 男性 イタリアン）
取材・文 テンポス浜松店 横山夏樹