食と不動産 幸せの方程式−上

株式会社髙木ビル 代表取締役 髙木 秀邦
株式会社PLEIN 代表取締役 中尾 太一

コロナ禍でよく聞かれるのが家賃交渉の話。電話に出てこない代わりに請求書だけはきっちりと毎月送られてくる。「話ぐらいはさせて下さいよ」というのが飲食店の本音だ。そもそも普段からコミュニケーションが取れていなかったのが問題ではなかったのか。コミュニケーションが成立しないというより、それだけ遠い存在だった不動産オーナーと飲食店の双方が新しい価値観で時代の荒波を乗り越えていく。家賃従量制が目指す先には何があるのか、シリーズでお送りします。

不動産会社がなぜ家賃従量制にするのか

家賃従量制についてお聞きします。
髙木ビル(不動産)だけではできないし中尾さん(飲食店)だけでも不可能。例えば中尾さんが不動産屋に行って家賃従量制にしてくださいと言っても100%不可能だと思うんです。

髙木−一般の不動産オーナーからすれば家賃を従量制にするなんて、普通考えればほぼ無理だと思います。そこら辺はなかなか譲れないところですからね。
では、なぜやるのかという根っこの部分をお話したいと思います。
僕は、不動産で何か新しい価値を作りたいと考えた。中尾さんも飲食業をもっと魅力的な職業にしたいと言う。そのためにはもっとチャレンジしやすい仕組みのようなものを作りたいという考えがあったんです。そのために今までアンタッチャブルな部分に手をつけてお互いが手を結んで出来上がった仕組みだと考えています。繋がったという感覚が僕には強くあります。
そういった意味では、家賃従量制が主語ではないんです。そうではなく、この業界とか仕組みを何とかしなければいけないという思いが根っこにあるんです。

中尾−僕としてはこの時期にとてもありがたい存在だと思っています。可能性をめちゃくちゃ感じているというのが正直な感想です。うちの店で言うとコロナをとてもポジティブに捉えていて出店もしていますし事業拡大のチャンスだと考えています。そこに髙木社長という尊敬できる方と一緒ならば僕の会社だけじゃなくって業界の課題に対してあるひとつのカタチを提案できると思ったのです。

飲食店経営の課題

コロナで駄目になっちゃうお店は別にコロナがなくっても駄目なんじゃないかな。そんな中でコロナをチャンスだと捉える中尾さんのような方が飲食の世界にいらっしゃるのは救いですよね。それって以前から問題意識と言うかそういうのをお持ちだったということですか。

中尾−そうです。ウチは最初から週休二日制で運営しています。個人で飲食店を経営していると店主は儲かるけど従業員は給料が安く、修行という名のもと体をすり減らして働いて20代30代が終わってしまう。そこを変えたいと思いました。なぜなら僕は飲食業が好きだからです。自分の子どもにも飲食業をやってほしいと思っています。だから20代をボロ雑巾のように働かされて、料理のことは分かってもそれ以外のことは何もわからないみたいな人になってほしくないんです。食に関わる人はもっとハッピーになるべきだと思います。そのためにはやり方を変えなければいけない。その中の一つが、髙木社長と僕がやっている事業です。全てが変わるとは思っていませんが、一つのモデルとして定着していくのではないかなと思います。

不動産の価値とは

髙木社長からすると飲食とは水商売、不確定要素が多い。客商売とはそういうものかもしれませんが、特に飲食は数字が読めないビジネスだと思うのです。こういう店に入ってもらいたいとか逆にこういう店には入ってもらいたくないとか、選別があるのではないでしょうか。髙木社長からすると中尾さんという経営感覚に優れた人がいらっしゃるから組めるということではないでしょうか。

髙木−どんなお客さんに入ってもらいたいか?今までの不動産の考え方では、それは「なるべく賃料が高く取れるテナント」に入ってもらいたい、その方が収益が上がるという考え方です。確かに、それは月次単位では正解です。
僕は、東日本大震災の後不動産相場が乱高下する中で「本当の不動産の価値とは何だろう」と考えた時、月次のような短期的な考え方ではなく、長期的視野でどこと一緒にビジネスをするか、といった価値がより重要だと思いました。大手がどんどん大規模開発を進めていく中で我々のような中小不動産会社は生き残れない、そういう危機感があってこのようなカタチになっているのです。不動産オーナーとして箱を貸しているという上下関係だったのが今このように並んで座っている、そういう関係なんです。これって中小ビルオーナーだからこそできることなんだなと思っています。だから貸してるという感覚は全くなくって一緒にビジネスをやっているっていう感じなんです。一緒にどんなメニューがいいとか食のプロではない僕が本気になって一緒にメニューを考えている。これが僕にとってはすごく新しい感覚で不動産の新しい可能性の第一歩だと思っています。

では実際に収益を上げていくためには中尾さん主導で進めていくわけだが、その中で不動産オーナーの髙木社長はどのような付加価値を提供するのだろうか。不動産オーナーとしての強みと言うかこのスキームでどういう強みを活かして行くのだろうか(次号につづく)

記者:スマイラー特派員

谷口光児(テンポス広報部)

取材協力:株式会社髙木ビル
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株式会社PLEIN 東京都港区南青山6-3-13

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