【神奈川県 元祖へっころ谷】スーパージャンクフードジャンキーがなぜ、発酵食にのめり込んだのか?

手打ちほうとうと発幸(発酵)創作料理の店
元祖へっころ谷 店主 古屋賢悟氏

20代前半までジャンクフードが大好きで、一日2箱を吸うヘビースモーカー。
まるで余命3ヶ月芸人のような!?不健康な生活を送っていた古屋さんだったが、結婚を機に両親が営むほうとう屋「へっころ谷」で働き始めてから人生が動き始める…。
日本一の “ほうとうバカ”という古屋さんは、なぜ、発酵食にのめり込んでいったのか!?

ほうとうなんて簡単でしょ!

子どもの頃から両親が作るほうとうを食べてきた古屋さんは、ほうとうを作るなんて簡単だと考えていた。ところが、いざ自分で作ってみると“麺が全然ちがう”“もちもち感が全然ない”つまり全然美味しくなかったのだった。

「こんなはずでは、と思いましたよ」

負けず嫌いな古屋さんは山梨中のほうとうを食べ歩き、毎日麺を打ち、出汁の研究を続けた。そして、小麦粉は在来種のブレンド、塩はこだわりの国産塩を使って練り上げることで理想の麺を完成させた。さらに地元農家と交渉し自家栽培の自然栽培野菜を使い、出汁は化学調味料など一切使わず、天然醸造の生味噌をブレンド。

「美味しければいいんです。」

と言い切る古屋さんのほうとうは7年連続「全国ほうとうランキング」日本一を獲得するまでになった。

やっぱり発酵食でしょ!!

「へっころ谷」は山梨出身の両親が今から43年前、同郷人のために神奈川県藤沢市で始めた郷土料理ほうとうの専門店だ。そして16年前に古屋さんに代替わりした。

「ほうとう自体が知られていない中で、商売するなら絶対他店がやっていないことをやろうと。ほうとう☓発酵なんて誰もやってないし、と思いました。」

飲食店が新しいことを始めようとしたら準備もお金もかかる。だったら今使っているお醤油を醤油麹に変えてみたり、砂糖をちょっと甘酒に変えてみたりとか、そういうところから発酵食を取り入れてみるのが良いと古屋さんは言う。

「結局美味しさは増すし、お客さんも腸内環境がすごく良くなるので絶対に『体の調子が良くなった』って言ってくれるんですよ。『お通じがすごく良くなった』って報告が毎週のように飛び込んできますよ。こっちもお客さんの元気な笑顔をみると、じゃあもうちょっと頑張ってみようかってなりますよね。最初からあまりハードルを高くしないで、発酵食の効果を、お客さんの喜ぶ声で確認すればいいと思います。しかも発酵食の効果を実感したお客さんはお客さんを呼んできてくれますから。」

古屋さんが本格的に発酵食にのめり込んでいったのは2011年の東日本大震災がきっかけだった。福島の原子力発電所の事故で、発酵食品が体内被曝に効果があるということで発酵情報がイッキに拡散した。塩麹ブーム起きたのもちょうどその頃だ。
古屋さんも得意のお味噌づくりのワークショップを案内すると2時間で定員オーバー。そういう状態が続いたので、それじゃあお味噌だけじゃなくいろんな発酵食品を通じていろんな人と情報をシェアしながら、アドバイスするようになっていった。

人間に必要な酵素には2つあって、消化酵素と代謝酵素。発酵食品は胃腸にすごく優しいから、消化に使う酵素が少なくてもいいんだよね。その分を代謝酵素に使えるから、つまり体を治す力も強くなる。

発酵食にのめり込む理由!!!

自分も含めて今の日本人の食生活は乱れに乱れていると古屋さんは言う。それを本来の食生活に戻して行くのは飲食店のミッションの一つだと。飲食店は単に空腹を満たす場所だけじゃない。

風邪でもインフルエンザでも、もちろん新型コロナウイルスでも結局は免疫力が大切。発酵食品で腸内環境を整えて免疫力を高めるという話はとてもわかりやすく、見直されていますよ。

「ハレ(非日常)の日とケ(日常)の日という話があるように、ハレの日のご飯ってパーティーのように楽しめばいいと思うんです。でも、今は毎日がハレの日のご飯ばっかりになっているのではないでしょうか。日常で利用する外食店はもっと健康志向であるべきだと思います。」

「僕も20代前半まではジャンクフードが大好きだったんです。それが今のような食生活に戻れたのは子どもの頃、親がほうとうを食べさせてくれて、大切に育ててくれたからなんです。三つ子の魂百までって言うように、小さい頃に日本人に合った正しい食生活を体験していれば必ず戻ってこれます。」

素材本来の味わい、天然出汁の香り、天然醸造調味料の旨味を子どもたちの大好物に詰め込んだ「おこさまごぜん」。3歳までの食経験がその人の一生の味覚を左右する、店主の思いが込められたメニュー。

そう言われると、今の子どもって古屋さんのような原体験が無いのかもしれない。3歳までの経験がその人の食生活、しいては人生を決めてしまう。それを大人になってから変えるのは結構大変だと思う。結局バーガーチェーンが3歳の子ども達におもちゃで釣ってハンバーガーを食べさせるのと同じことを、古屋さんは発酵食品でやろうとしている。それは古屋さんが親から受け継ぎ、次の世代に伝えていかなければならないからだ。

古屋さんが今、力を入れているのが「シェアシード」。今や国内の種の99.9%がF1種。F1種の野菜から採れた種は発芽しない。地域の気候や風土に適応している、ちゃんと発芽する在来種は「へっころ谷」に行けば分けてもらえる。みんなで在来種の野菜を育てて、収穫したら種をシェアする活動だ。

取材協力
手打ちほうとうと発幸(発酵)創作料理の店 元祖へっころ谷
神奈川県藤沢市亀井野3丁目30−1 電話0466-82-1702

記者:スマイラー特派員

谷口光児(テンポス広報部)