【Smiler Special INTERVIEW 】いま、頑張れない人は、いつまでたっても頑張れない人なんだろうなあ(後編)

秋葉弘道

東京都練馬区の生鮮スーパー「アキダイ」社長、秋葉弘道氏。テレビ取材が年間300件にも及ぶという、日本で最も有名な八百屋の主人だ。秋葉社長は、青果店を4店、スーパーのテナント2店、居酒屋1店、カラオケバー1店を経営する腕利きの経営者でもある。コロナ禍で商売が難しい時代に、強く生き抜くコツを秋葉社長に聞いた。彼がなぜこれほどまでに注目を集めるのか、今回のインタビューからその秘密が垣間見えた。
秋葉弘道氏インタビュー前編はこちら→https://smiler.jp/2021/07/15/post-7258/

アキダイ

レールはいらない。茨の道でも自分で走る方がいい

秋葉社長の経歴はユニークだ。工業高校電気科を卒業後、大手電機会社に就職。生徒会長を務め、成績も良かった秋葉社長は、有名私立大学の推薦枠をもらえていたという。しかし、それを使わずに就職。さらに、その電気会社も辞めて、高校時代にアルバイトしていたという八百屋の世界に飛び込む。

「高校時代の俺は、納得いかないと納得いくまで何故って問い続けるような生徒だった。学校の先生みたいな事なかれ主義が嫌だったんだよね。引かれた楽なレールをそのまま走るのは違うって感じてた。事情があって家計の助けにもなりたかったので、結局就職を選んだ」

しかし、その納得いくまで問い続ける精神は、会社に入ってからも顔をのぞかせ始める。

「入社できて嬉しかったし、勉強にもなった。でも実際に仕事する中で、ちょっと違うなって思うこと誰でもあるでしょ。そういう時に、めんどくさいからこのままでいいやって思考停止する人と、いや自分はこういう生き方じゃダメだ、と突き詰めていく人がいると思う。俺は後者で、それで高校生の時にアルバイトしていた職場に戻った」

茨の道へ

それは、秋葉社長にとっては茨の道に入っていく決心でもあった。朝8時半から5時半まで仕事して、週に二日休める仕事から、朝5時に市場へ行って、夜中に帰ってくる仕事に変わったのだ。

「バカみたいでしょ。だけどどっちが自分らしくいられるかって考えたらそういう結論になった。大手企業って、誰か一人いなくなっても何も変わらない。逆に変わっちゃいけない。一人いなくなったら大変なことになっちゃうなんてこと、あってはいけないわけ。それが違和感の原因。大企業で働いて、敷かれたレールを一生懸命走るっていうのが、しょうにあわなかった。俺の場合はレールはいらない。茨の道でも自分で走る方がいい。そう思って辞めた」

本気になるためのワンステップ

秋葉社長は、高校時代のアルバイト時に感じた充実感や達成感を思い出し、その世界に戻る決心をする。しかし、面白いことにすぐに戻るのではなく、いったん運送屋に就職する。

「本当に好きかどうかって、ワンステップ置いてみればわかりやすい。結婚する相手でも、一回離れることで気が付くことがあるでしょ。やっぱり絶対この人がいい、必要だって。で、八百屋でたくさんのお客さんと生活を共に過ごすのが自分には楽しい、必要だと改めて実感したわけ。おかげで、八百屋というビジネスを一生の仕事とする決意ができた」

秋葉弘道

コロナ時代を強く生き抜くために

「どんな時でも商売のコツって、お客さんを喜ばせられるかどうかっていうこと。そしてそれを自分の喜びとして感じ、続けていけるかってこと。お客さんの喜びを仕事の価値観にできることが大切。売上を上げることや利益を考えることも、とても重要なことだけど、それ以上に大切なことがそこにあると思う」

いま飲食店がやるべきこと

秋葉社長は、今苦しい思いをしている飲食店にも檄を飛ばす。

「俺もそうだけど、給付金をあてにしていてはダメなのよ。いま何をしなきゃいけないのかっていうことを考えていかないと。俺が考える、いま飲食店がやるべきことは、やっぱり感染症対策。これからの時代、お客さんの安心は付加価値になる。価格や美味しさ、店の雰囲気などと同じように、安全性もお店の売りにしていくことが重要なんじゃないかな。これは、コロナが落ち着くかどうかとは関係ない」

大切なお客様を守るために、そしてスタッフを守るために、感染症対策をしっかりと考えることが、いま最も重要なことだと指摘する。

「そして、その中でどれだけのパフォーマンスができるかだよね。美味しい料理を提供していてもお客様が来ない来ないって言ってるところいっぱいあると思う。でも愚痴で終わってはいけない。今できること、するべきことを考えないと。でもこれって俺たちスーパーも同じ。常に試行錯誤しながら、工夫を凝らしていくことが大切」

現状維持は退化につながる

どんなことでも満足した時点で終わりだと秋葉社長は言う。満足すると、考えることを、工夫することをやめてしまう。それでは変化し続ける時代についていけなくなる。

「常に美を追求している人は、どんどんきれいになる。商売でも、これでいいやと妥協せずに追及し続けることが大切。もっといいお店にしよう、もっと美味しいものを提供しよう、そのためにはどうすればいいだろうか、と次から次へと考えていくことが重要かなと思う」

つまり、いろいろな意味で時代の変化が速い現代は、現状維持は退化と同じこと。お店も進化していくこと、変化していくことが要求されるのだ。

「中長期的な目標を作ることも大切。それがない状態で頑張っても、それは現状維持にしかならない。すごく頑張っているのに結果が伴わないというときは、そのあたりを振り返ってみるといいのかも」

今できることは何か

そうは言っても、実際に営業できない状態に追い込まれている店も多いと思う。苦しい状況のなかでにモチベーションを維持するにはどうすればいいのだろうか。

「厳しい状況の中で、休業の選択をした場合、そんな時にしかできないことをすればいい。例えば料理の勉強。そう考えて実行できる人は生き残れると思う。自分への投資だよね。

勉強したからって必ずうまくいくというわけではないと思うが、その瞬間は無駄だと思っても、長い人生のなかで、後々生きてくることは必ず、ある。とりあえず今できることがあれば、それを頑張ればいい。今頑張れない人は、いつまでたっても頑張れない人なんだろうなあ」

秋葉弘道

 

 取材協力 

フレッシュランド「アキダイ」代表取締役 秋葉弘道氏 

「アキダイ 関町本店」東京都練馬区関町北1-15-11 

☎03-5991-3267