飲食業界のパクリについて
S(スマイラー:以下S):今回のテーマは、ズバリ「飲食業界のパクリ」についてです。お相手は都内で飲食店を経営されているHさん(以下:H)です。
H:うちは焼肉店を6件経営していますが、お客様にお肉を焼かせないサービス「お任せ焼肉」を始めたらすぐによその店にパクられてしまいました。
S:よそでやられちゃうとお客は流れてしまいますよね。Hさんが最初に始めたんでしょ?
H:そうですね。2015年にはやってましたから。「お任せ焼肉」が話題になったのが2016年でしたから、うちが最初でした。飲食業界にはTTPって言葉がありますから。(TTP:徹底的にパクる)
S:一つの業態がヒットすると、成功業態をパクれば、リスクを取らないで成功する確率は高くなりますからね。こんなことを繰り返していると、今後はこっちがやってやる、なんてパクリ合戦なんてことにならないかな。
H:印象的だったのは、少し前だけど「鳥貴族」が「鳥二郎」を不正競争防止法で訴えた事件がありましたよね。あれには正直、そこまでやるかっておもった。
S:あそこは、ラーメン店でも同じようなことをやっていました。たしか「にく二郎」だったかな。店の外観から看板のデザイン、のぼりの文字まで同じでしたよ。
H:ご存知のとおり、料理やレシピには著作権がないんで。だから同じ業態のお店を作ったり、同じ料理を出したりしても罰せられることはない‥
S:でもモラルの問題はあるのではないですか?
H:この間読んだホリエモンの本にいいことが書いてあったよ。
S:どんなことですか?
H:人気店に行って、インスパイアを受け、何か料理を作ったとする。すると「それはパクリだろう!」といううがった意見もあるかもしれない。
S:うがった!ですか?
H:確かに、「これはいい」と思って、全く同じものを出すのはどうかと思うけど、そこからヒントを得て「パクる」のは決して悪いことではない、とホリエモンは書いてました。
さらに、そもそも、すべての文化は「パクリ」とともに進んできている。料理でいうと「鶏の唐揚げ」に著作権があったらどうなるって?
S:それは極端ですね。
H:大切なことは、ただ「パクる」のではなくて、インスパイアを受けて新しいものを生むこと、敬意を払って一歩先に進めることだ、ともホリエモンは書いてました。「鶏の唐揚げ」の例でいくと、かけるソースを工夫するとか、鶏の産地にこだわるとか、料理をより美味しくするために、お店ごとにいろいろな工夫があって「鶏の唐揚げ」という料理がますます魅力的になっていくと思うんですよ。
S:確かにお客様に美味しい料理を提供することが一番大切だと思いますよ。著作権があったら、そんな色々な工夫ができなくなってしまい、お客様にもメリットがないですからね。でも、さっき言った「モラル」の問題はどう思いますか?
H:例えば繁盛店に似せて、看板から内装、メニューから全部パクる理由って、お客さんにここは今人気の〇△※◇だと思わせることが狙いなのかな?そうやって客を集めて、肝心の料理は手を抜いているかどうかはわからないけど、繁盛店のように見せかけてお客を集めるやり方、つまりお客様をだますようなやり方だったとすれば、やっぱりだめなんじゃないかな。
S:それって、結果的にお客様をだましていることになりませんか?そんなことを繰り返していると、お客様は飲食、外食から離れてしまうような気がします。
H:そうならないためにも、うちは食材にこだわって本当に美味しい料理を提供して、お客様に喜んでもらっているから大丈夫ですよ。
S:それはよかったです。おかげでスッキリしました。ありがとうございました!