移動販売を始めて20年 危機を感じています<続編>

数字でわかる移動販売の難しさ

愛知県での数字です。
廃業率を考える上でのデータとして、各保健所での営業許可の新規・更新件数を参考にしてもらえればと思います。
まず、愛知県(※名古屋市・豊田市・岡崎市・一宮市・豊橋市を除く)の自動車営業許可による飲食店営業(菓子製造業・喫茶店営業・アイスクリーム類製造業を除く)の新規と更新件数を、一番古いデータから見てみます。
※名古屋は政令指定都市、豊田市・岡崎市・一宮市・豊橋市は中核市なので、県とは別にデータを管理しています。

同じ年度の更新件数は、5年前に新規もしくは更新をした業者さんなので、参考にできる年度は5年分しかないという事と、自分のように長年営業をしている場合は、新規ではカウントされずに更新件数だけにカウントされるので、更新件数の一部は10年前や15年前に新規で許可を取得していた場合もあり、更新件数の増加から廃業率を単純に計算できず、おおまかな目安という事でご理解ください。

愛知県の令和2年(2020年)の人口は約754万人で、そこから名古屋市の約232万人、豊田市の42万人、岡崎市の38万人、一宮市の38万人、豊橋市の37万人の合計387万人を引くと367万人。愛知県の約半分の人口に対してこの件数になり、その中での新規・更新の数です。多いと見るか少ないと見るかはその人次第。コップに半分の水が入っていて、ある人は「もう半分しかない」と嘆き、ある人は「まだ半分もあるじゃないか」と。同じ状況でも、考え方の違いで真逆の答えになりますからね。

ちなみに豊田市(約42万人)、岡崎市(38万人)、一宮市(約38万人)の数字も見てみます。

移動販売はブルーオーシャンなのか?

それでは、今現在愛知県でどれぐらいの数の移動販売車が営業しているのでしょうか。

この数字を出すには、昨年度の新規で営業許可を取得した件数と営業許可の有効期限が残っている件数、その中で5年後の更新率から大まかな4年後、3年後、2年後の廃業予測件数を引いた数を、愛知県・名古屋市(昨年度の新規許可件数だけのデータは無く、廃業届けを除いた有効期限の残っている営業許可の件数)・豊田市・岡崎市・一宮市・豊橋市それぞれを計算して、合計を出してみました。
その結果、出た数字は1,496件。

数字に弱いドシロートの、本当に大雑把な計算なので、何度も言いますがあくまで参考。もしも、統計学のような数字に強い方と出会う事があれば、自分の持っているデータやさまざまな事象を考慮して、より正確な数字を出してもらいたいです。

この約1,500件という数字。愛知県の人口754万人に対して多いのか少ないのかは解りませんが、愛知県で営業をしているラーメン屋さんは約1,000件。コンビニのファミリーマートさんは愛知県に約1,500件あるそうです。

営業許可にいくらかかるの?

営業許可の件数についての話はここまでで、次は営業許可証の発行に掛かる金額についてお伝えします。これも、今年の6月1日の改正に伴い、変更されました。

愛知県・豊田市・岡崎市・一宮市・豊橋市での、移動販売による飲食店営業の許可証発行に掛かる申請手数料は、新規が18,000円で更新が14,400円。そして、名古屋市だけが新規16,000円で更新が12,000円。そして、6月から新たな許可制度になったので、今後更新で手続きをされる方も新規扱い(申請手数料は更新の金額)になります。このため、この先5年は更新件数は0で新規の数字が急激に増える事になります。しかし、自分のように飲食店営業と菓子製造業の2つを取得していた人にとっては、飲食店営業の許可一つで菓子製造業の許可を兼ねてくれるので、金銭的な負担は減り、許可件数の数も影響がでます。

ちなみに、固定店舗と違って移動販売は営業する場所が固定されていないので、名古屋市の隣の市に住んでいて、移動販売車輛もその同じ市で保管されている方が「名古屋市のがちょっと安いから、こっちで許可を取ろうかな」なんて考えていたとしたら、それはダメ。たとえ地元の市で営業をしていなくて、名古屋市だけで営業をしていたとしても、車輛の保管場所ではない名古屋市での許可申請はできません。

金額の違いという事でもう一つ。保健所では許可手数料の支払いとは別に、食品衛生協会費の支払いもあります。あくまで任意なので強制はされませんが、自分も含めほとんどの方が加入し、支払っています。

協会についてはまた機会があれば詳しく書こうと思いますが、この食品衛生協会費、支部によってかなり違います。自分の地元の支部では5年で1,500円。隣の市の支部では年間3,000円なので、5年間だと15,000円。なんと、10倍も違うんです。これは、支部の規模や加盟している件数、活動の内容などが違うので一概に比べる事はできませんが、隣同士で10倍の差は大き過ぎるような気もします。

自治体によって、こんなに違う!

では、愛知県以外の新規と更新の金額はどうなっているのでしょうか? まずは、愛知県の隣の静岡県。新規16,000円、更新12,800円です。

日本の中心、東京・新宿区では新規18,300円、更新がなんと8,900円。しかも、一つの保健所で取得すれば都内どこでも営業が可能という、人口密度から考えると恐らく日本一コスパのいい営業区域かと。ただ、その分ライバルも多いので何とも言えませんが、大手の飲食関係の企業さんで、全国に支店もしくは営業所などがあり移動販売を始める場合、営業区域に関してもしっかりと調べた上で許可を取得した方がいいと思います。

次は、大阪府・大阪市北区。新規16,000円、更新が12,800円。名古屋市とほぼ同じ金額ですが、大阪府は移動販売にはあまり向いていない地域。何故かというと、まず許可そのものの手続きが愛知県と比べると大変。
おまけに、政令指定都市と中核市で営業をしたい場合は、それぞれの都市で別々に許可を取得しないといけません。愛知県や東京都とは全く違うやり方。もしも、大阪府全ての都市で営業をしたいと考えると、10カ所もの保健所で営業許可を取得しなければいけません。おまけに、今後中核市が増えた時には手間がまた増える事になります。

一番最近では、寝屋川市が平成31年に中核市へ移行したのですが、中核市になる前に寝屋川市で許可を取得して営業していた方は、府内の政令指定都市と中核市以外は自由に営業ができていたのに、中核市になってからは、暫定的に次の更新までは今まで通りに営業できても、更新時に再び寝屋川市で許可を更新した場合、寝屋川市内だけでしか営業が出来なくなってしまいます。

実は、愛知県も以前は大阪府と同じ状況で、愛知県・名古屋市・豊田市・岡崎市・豊橋市(一宮市は中核市になる前)それぞれの保健所で営業許可を取得しないと営業ができませんでした。そこで、当初は保健所で「絶対に不可能です」と言われながらも、一人で何度も各所の保健所で交渉を続け、最終的には豊橋市保健所の所長さんと直接話す機会をもらい「この要望は必ず県知事に伝えます」と約束していただきました。2011年6月に県知事が記者会見の席で「移動販売に関わる規制を緩和します」と話してくださり、翌年2012年4月から、一カ所の保健所で許可を取得すれば県内全ての地域で営業ができるようになりました。

大阪府も、近いうちに緩和される事を願っています。そして、いつか大阪での営業を再チャレンジしたいです。

次は北海道・札幌市。新規17,500円、更新が12,200円。

続いて沖縄県那覇市。新規16,000円、更新も16,000円。

今回、北海道と沖縄には共通点があり。6月の改正を機に、愛知県や東京都のように営業区域の制限を撤廃したとの事です。自主的に撤廃をしたというのは、本当に凄い事で、できれば、この流れが日本全国でおきてくれれば、自分としても夢の実現にまた一歩近づく事になります。自分は北海道から九州までバイクで旅をした事があり(沖縄は普通の旅行で)できれば、各地でお世話になった方々に、今度は移動販売車でお礼を兼ねて旅ができたらなんて思っています。

変われ! 移動販売

以前、内閣府規制改革ホットライン宛に、移動販売の許可について県ごとにかなり違いがあり、できれば国で、ある程度統一して貰えないかと要望を出した事があります。その後、内閣府規制改革推進室の参事官補佐という方からもう少し具体的に知りたいとのお返事が届き、改めて移動販売の営業許可についての疑問や改善点などを送らせて貰いました。

そして6月の改正は、まさに自分が要望を出した事に近く、県ごとにバラバラで決めていた事の一部を国が統一した基準を作り、それに沿った形で新たな制度に見直されるという、過去にないぐらいの大きい変化でした。

コロナ禍というタイミングと、自分自身も20年という節目。改めて、移動販売という職業についてさまざまな視点から考えていきたいと思っています。

※今回、コロナ過の中、貴重な時間を割いていただき、情報を提供して下さった保健所の方々には本当に感謝しています。ありがとうございました。

◆前回の記事はコチラ
https://smiler.jp/2021/09/14/post-7536/

ペンネーム:たこハシロウ

10代で両親を亡くしホームレスも経験。今は買い取った学習塾の6号教室で一人暮らし。5号教室は制作途中のバーカウンター、台所は元職員室、黒板は特大のメモ帳、下駄箱には工具とキャンプ道具。今も一人で改装中。過去にテントと寝袋、調理器具をチョッパーハーレーに積み、北海道・東北・北陸・関東・関西・九州、全国各地で調味料や食材探しとたこ焼き屋巡りの一人旅を経験。2001年、軽自動車のウォークスルーバン を一人で改装し85万で”HIRO君のたこ焼き屋。”を独学で起業。今は2台目で走行距離は地球約5週。営業回りは2000軒、出店した場所は100ヵ所を越える。10代で両親を亡くしホームレスも経験。今は買い取った学習塾の6号教室で一人暮らし。5号教室には制作途中のバーカウンター、台所は元職員室、黒板は特大のメモ帳、下駄箱には工具とキャンプ道具。今も一人で改装中。過去にテントと寝袋、調理器具をバイクに積み、北海道・東北・北陸・関東・関西・九州、全国各地で調味料や食材探しと、たこ焼き屋巡りの一人旅を経験。移動販売車も全て一人で改装し85万で起業、今は2台目。

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