閉店する人が後悔する25のこと-日々の心掛け編

2回にわたりお届けした「閉店する人が後悔すること」はおかげさまで大好評につき、25の後悔すべてをテンポスホールディングス代表取締役社長の森下篤史による解説を加えて紹介することとなりました。本号では、飲食店経営者の日々の心掛けについて伺いました。

後悔No.25 支払いを遅らせたり、都度値切ったりして嫌な店主だったこと

年間100億円の売上規模の会社の原価率が35%だとすると年間35億円の仕入れをしていることになる。そうすると仕入れ担当者は知らず知らずのうちに上から目線になる。よくよく注意をしていないと、ごく普通の人でも すぐに“上から目線”になってしまうんだ。言葉遣いだけじゃないぞ。俺なんて態度を見てるとすぐ分かる。では、どういうところに現れてくるかというと、例えば午後3時に業者と会うとなった時に都合が悪く3時10分になってしまった。このときに、 “上から目線”になっている人は、業者に対して「すみませんでしたね。」と、簡単に言うんだよな。それに対して取引業者は文句を一切言わない、なぜなら対等でないから。卑屈になっているから、買ってもらって成績を上げたいから。だから10分遅れたことについて軽くすいませんでした、で済ませてしまう。これだからどんな人でも知らず知らずのうちに上から目線になってしまうわけだ。

勘違いしちゃいけないのは、なにも、業者はあなたを尊敬しているわけでも何でもないんだよ。年間35億円も買ってくれてるから、食材の業者は腰を低くして、場合によっては卑屈なぐらいあなたに話を合わせようとする。こちら側の言う事が少しくらいおかしくても、いちいち抵抗しないで「そうですね」と言ってくれる。仕入れ担当者は自分の言う事は何でも相手は聞いてくれると勘違いする。こうなると、自分は正しいことを言っていると、己の勘違いに気が付かなくなるんだ。だから、仕入部長を5年も10年もやっていると、鼻持ちならないバカ人間の出来上がりだ。気を付けなきゃいけないのは、一店舗や二店舗やっているようなオーナーでも同じことが起きるってことだ。一店舗や二店舗には規模の小さな業者が来る。その規模が小さな会社はやっぱりお店に対してへり下ってぺこぺこする。そうすると、コスト引き下げのために値切ってるかのように、35万6700円支払うべきところを勝手に6700円をカットして35万しか払わない人が出てくる。まるで値切るのがオレの仕事だ、みたいにね。これは値切ってるんじゃなくて単純に嫌な人、最低の人のやり方だよ。業者は文句言わない。だから当の本人は値切ったと思っているんだろうが、これは最低の嫌な人間がやる業者いじめだ。

仕入れ交渉をして値段を下げてもらうこと、これは商売上の真剣勝負だから、相手のギリギリのところまで要求しながら値切るというのはあり得る。だけど、気をつけないといけないのは、我々は常に業者あっての店を運営しているということ。だから上から目線で物を言う社員に対して俺は厳しく指導している。同じことで一店舗のオーナーであろうが、二店舗のオーナーであろうが業者あってのお店だってことだよ。ここんところ忘れないでもらいたい。

後悔No.14 神社にお参りに行かなかった

これは何も神頼みでお願いに行けといってるんじゃない。つまり、あなたは飲食店を経営している、ここで仕事をやっているのはあなたの努力以外にも、周りのみんなの応援や、商売の環境が上手くいったから生き長らえているわけで、それを忘れると、自分が頑張っているから商売は繁盛してるんだという勘違いをしてしまう。

例えば、俺の住んでいるところは火曜日と金曜日が生ごみの日だ。朝、5時半にゴミでいっぱいになったビニール袋を提げて、それをでかいポリバケツに入れておいて会社に行く。そうすると夕方に帰ってバケツを覗いてみると、中のごみが無くなっている。昔、俺の田舎では台所の外にでかい“ぼうら”という篭があって、その中に台所などのごみを放り込んでいた。今のようにゴミを収集してくれるサービスなんて無かったから、ゴミがいっぱいになると、それを担いで、畑にたい肥代わりとして撒いてまわる。それを俺がやってた。時には、ぼうらのなかから染み出た汁のせいでにおいがへばりつく。それでも溜まれば畑にもっていく。そして捨ててくる。そういうことを繰り返しやってきたもんだから、ポリバケツに生ごみを入れておけば夕方にはなくなっているのを見るたびに、ありがたいもんだな、と思う。ゴミがなくなっているだけで、ありがたいなあと思えるんだ。つまり、商売をやってて、お客さんが来てくれるのを当たり前だなんて思わないで、お客さんとはありがたいものだなあと思える、そういう癖をつけないといかんのだ。いろんなことをありがたいもんだな、ありがたいもんだな、って思い続けた結果が、何かのきっかけにお寺だとか神社に行ったときに思わず両手を合わせるんだよ。神様、ありがとよ、おら、ここで今日まで健康にやってこれた。感謝の報告だぜ、神社のお参りってのは。苦しい時の神頼みで行くんじゃないよ。ありがとよのお礼の報告に行くんだよ。そういうのを忘れて、一人よがりで商売をやっちゃあいけませんよ、ということだ。

後悔No.24 目標もなく、真面目に働いていれば何とかなると思っていたこと

真面目に一生懸命やっている人が、陥る罠だよ。たとえば、モノを作るだとか、あるいは気持ちいいサービスをするだとか、そういうふうな心構えで商売をやったとしてもひとりでやっているうちは何とかなる。でも3人、5人と使うようになるとお店のサービスを良くするために、どんなトレーニングをどれくらいやっているんですか?ということに尽きる。でも真面目だけの人は、トレーニングもしないで口で言うだけ、といことを平気でするんだ。自転車に乗りなさい、自転車に乗りなさいよ、って言っているだけで自転車に乗れるようになるわけがない。そんなものお父さんが子どもを公園に連れてって、これ乗れって自転車を与えて30分も練習させる。そんなことを3週間でも繰り返していれば、自転車なんて大概の人は乗れるようになるもんだ。そういうことをしないで、自転車乗れ、自転車乗れ、ってそんなもん100回言ったって乗れるようにはならん。

つまり、店の店員が良いサービスを提供できる店にしたいと思ったら、心構えなんてのをオーナーが100回言ったって出来るようにならないってことだ。それよりも動いてる時間を測って、もっとテキパキ動けるように練習をする。にっこり笑って、感じ良く「いらっしゃいませ」と言えるように何回も何回も練習する。飯を食い終わったテーブルの上を片付けるのも、常にオーナーが気を配って店員に行ってこい、と指示する。これは心構えがどうのこうのでなく、体がそうなるように訓練するってことだ。真面目に一生懸命やってれば何とかなるんじゃなくて、何とかなるための仕掛けを作っているかどうかが大切なんだ。美味しい料理を作ったら美味しさが伝わるPOPを作ってみたり、これ、新作メニューを作ってみたんでちょっと食べてみてください、って試食してもらうとか。なにかの割引をして新メニューを大勢の人に食べてもらえるような仕掛けをしないで愚直に一生懸命なんて馬鹿の極みだよ。何かやろうとしたら必ず仕掛けることを忘れんように頼むよ。

後悔No.1 よその店を見に行かなかった

我々の商売とは、美味しいとかサービスが良いとかはこれは全部お客が判断することなんだ。あそこの店主は一生懸命やっているとか、誠心誠意対応しているとか、お客はわかってくれてるだろう、なんて勝手に思い込んじゃいないか?!誠心誠意やることは大事だけど。では、あなたがやっている誠心誠意にお客さんがオーケーと言ってくれているかどうかなんて、どうやって判断すればいい?

まずは来店客数が伸びているかどうか。これがあなたのやっていることへの評価なんだ。だから来店客数が増えなければ、あなたのやり方をお客さんは評価しなかったということだ。じゃあ、お客を増やすには何をどうしたらいいか?周辺の繁盛している店、繁盛していない店を少なくとも5~7店舗は見てきて、なぜ繁盛しているのか、していないかを常に研究するんだよ。

大事なことは、近くの飲食店よりもちょっとサービスが良いとか、あそこの店よりちょっと美味しいとか、っていうだけでいいわけだ。つまり客商売で完璧を目指す必要など無いということだ。この料理はどこよりも美味しいと自惚れて、比較もしないで料理を作り続ける暇があったら周りの店のサービスを観察して自分の店の基準を作りなさい。

仮にあなたの店が前年対比で客数が増えていたとしても、お客さんの気持ちが変わるってことはしょっちゅうだから、安心してはいけない。常に競争店舗を見てきては、自分の店をもっとこうしたいと変えていくことが商売、商(あきな)いなんだ。ただ、一生懸命やっているだけの人は勘違いした挙句、自己満足の店になり下がる。そして挙句の果てに客には分かりっこない、客が悪いなどと言うんだよね。周りの店を見に行って自分の店のやり方と比較することをやってください。

閉店する人が後悔する25のこと」
1よその店を見に行かなかった
2客が来たのに嬉しさを「いらっしゃいませ」といえなかった
3従業員の我儘をそのままにしておいた
4小さな不正に目をつむっていた
5残ったもの鮮度の悪いものを出した
6業者のいいなりに仕入れた
7感情的に客、従業員に接した
8いつも美味しいものを出すと決めていなかった
9客の意見を聞こうとしなかった
10美味しさの分からん客だと思っていた
11厨房 店を綺麗にしなかった
12業者に感謝しなかった
13どんぶり勘定を続けていた
14神社にお参りをしなかった
15女房を使うのは当たり前だと思っていた
16客の名前を覚えようとしなかった
17約束事、時間を守らなかった
18そのうち、売り上げが上がるようになると思っていた
19 接客がイマイチでも、料理が美味しければお客は喜ぶと思った
20赤字が続いても、やめようとしなくて、返せなくなった
21借金で不義理をして、身近な人、大事な人を失った
22家族子供を大事にしなかった
23 見ればわかる、食べればわかるとタカをくくって、売る努力をしなかった
24 目標もなく、真面目に働いていればなんとかなると思っていた
25 支払いを遅らせたり、都度値切ったりしていやな店主だった

Smiler42号

森下篤史

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