【ラーメン店・あさひ町内会】厳しい時こそ、守るな、攻めろ。 コロナ禍に人気ラーメン店を作った男に学ぶこと。

あさひ町内会店主本山敬也氏あさひ町内会 店主 本山敬也氏

東京都・都営三田線板橋区役所駅前から徒歩3分の立地にある、ラーメン店「あさひ町内会」はオープンから1年で人気店となった。店主は、北海道の味噌ラーメンの名店「すみれ」で10年以上の修業を積んだ本山敬也さん。後悔のない人生を送りたいとオープンしたラーメン店。しかし、オープンから2カ月後にコロナが・・・。

オープン直後から絶好調

オープンに向けて準備を進めていた時、その様子を見に来る一人の男性がいた。連日、見に来られるので、本山さんは「入りますか? いいですよ」と声をかけ、店内に招きいれた。

「どんなラーメン出すんですか?」「どこで修業されたんですか?」

男性は熱心に質問してきたという。すると、その後、この時の様子がネットに上がっていた。その男性はけっこう有名なラーメン好きブロガーだったようだ。これが宣伝にもなり、オープン直後から好調な滑り出しとなった。

あさひ町内会ラーメン

先が見えないからこそ仕掛け続ける

ところが、オープンしてわずか2カ月後、20204月に第1回緊急事態宣言が発令され、売上はカクンと落ちた。今後どうなるのか先行きの見えない状態に不安が募っていく。

そんな時、女性アルバイトスタッフが、「テイクアウトやりませんか?」と言ってきた。本山さんは渋った。プライドもあったからだ。しかし、その子はまた言ってきた。「テイクアウトやりましょうよ」、彼女に押され、テイクアウトを始めることに。

すると、すぐにテイクアウトだけで13万円売れた。4万円売れる日もあった。予想外の結果に驚きつつ、落ち込んでいた気持ちが高まるのを感じた。

こういう時には、いろんな施策を仕掛けることが大切だ。限定商品を出したりもした。味には絶対の自信があるからこそ、お店を忘れられてしまうことが一番怖い。今どれだけ悪あがきするか、それが未来を必ず明るくするという思いだった。

そうこうしているうちに、9月頃に雑誌4社の取材、YouTubeの撮影2件が入った。なかでも登録者90万人のラーメンユーチューバーが取り上げてくれたことは大きかった。

あさひ町内会

SNS に投稿した動画が2万回再生!

そして、本山さん自身も動き出す。そのタイミングで、渾身の限定メニュー「20年前恋した味噌ラーメン」を110食で販売開始したのだ。通常提供しているマイルドな味噌ラーメンと比べて、あえて暴力的な濃さにした中毒になる味噌ラーメンだ。少しは世間から興味を持たれ始めていると感じた本山さんは、さらに自分の思いのたけを綴った動画をSNSに投稿する。2万回再生された。

結果的に、202010月以降はコロナ禍の中でも、困らない業績に戻っていた。

「売上が上がった理由が何だったのか分からない。しかし諦めずに手を打ち続けてきたことが一つ一つ繋がった結果なのだと思う」と、本山さんは話す。「テイクアウトを薦めてくれたスタッフに感謝しています。最初にすすめてくれたときは、『少し早いかな』と濁した返事をしていて、ちょっとしつこいなとも思っていました。それでも、また言ってくれたんですよね。本当に感謝しています」

あさひ町内会

初期投資金額に自分でもびっくり

「自分でもドン引きの金額です」と言った上で、内装工事に1700万円をかけたと話す本山さん。もともと居抜きとスケルトンの間の状態だった物件は、厨房区画がとても狭かった。それを広げるために一度、内装を壊して作り直した。それだけで300万円の費用がかかったという。「こんなにお金をかけてと、周囲からは心配されましたが、それでも中途半端でやるくらいならという気持ちでした。これまで時間もお金も全部ラーメン作りに費やしてきました。ここで妥協しては意味がない。それに、へんにお金を残しておくと、うまくいかなかったときの逃げ道になってしまうなと。このお金があるから大丈夫、みたいな。だから、運転資金はしっかり確保した上で、後悔しない店を作りました」

開業して人気店となった今でも、ほとんど贅沢はしていないという。総菜も割引にならないと買わないよと、ニカッと話す本山さん。

今後は店舗展開するよりも、この店をもっと良いものにしていきたいと考えている。本当においしいものをずっと、ずっと追求していく。お客様に喜ばれているか、自分は知らず知らず手を抜いていないか。ひたすら、良いものを作っているか?お客様は喜んでくれているか? を考え、100%のものを提供していきたいと力強く話してくれた。

あさひ町内会

記事:乙丸千夏

#取材協力
店名:あさひ町内会
店主:本山敬也氏
住所:東京都板橋区板橋3-5-1 リビオタワー板橋 1F
TEL03-6915-5569