20代の頃は、飲食店専門の居抜き物件サイト「ぶけなび」の社員として働いていた陽子さん。仕事柄もあってか、飲食店で飲んで食べるのが大好き。好き極まって、一念発起して行きつけだった新宿鶴巻町のバー「Sacchimo(サッチーモ)」で働くことに。そこでわかったことが、「私の天職は飲食店で働くこと!」だった。約3年程この店で働き、自分のお店を持ちたいとコツコツお金を貯めて、8年前に念願であった自分のお店「seasonal bar Nanairo(鶴巻町ナナイロ)」をオープンさせた。
お店という名の家庭を作りたい
「お客様に『ただいま』と言って、いらしていただき『おかえりなさい』とお出迎えする。そんなバーにしたかったんです」と、穏和な人柄がわかる笑顔で語る陽子さん。常連客のほとんどが、近所で働く人や住人。仕事帰りや、サンダル履きで、フラット毎日寄れるそんなバーだ。というのも、バーとしては珍しくチャージもなく、1杯500円からとリーズナブルなだけに、1杯だけ飲んで帰ろう、1杯だけ飲んで寝よう。そんな日常ユースができるわけだ。
常連ばかりの店に、いわゆる一見さんは、なかなか入りずらいものだが、この店のアットホームな雰囲気に、1人初めて入ってもすぐに常連客と和気藹々となり、また行きたいと思わせる。それこそが、8年で培った陽子さんと常連客が作る、まさに「家庭のようなお店」ならではの魅力なのだろう。
そんなお店だけに陽子さんは、「転勤や引っ越しされて、遠くに行ってしまった方も多いのですが、とにかくいつでもここに戻って来れる。そんなお店にしたいんです」と、この店をこの場所でずっと続けていきたいという。
コロナ禍の終わりがいまだに見えない今、お酒主体の夜営業がメインのバーは、出口がまだまだ見えない状況だ。オープンから順風満帆だったこの店も初めての危機を感じているはず。都の要請に従い17時からキッチリ19時までのお酒の提供、閉店20時。実質、たったの2時間の営業でもいいから、お店を開ける。そう、笑顔で「お帰りなさい!」とお客様を出迎えるために。
取材協力
seasonal bar Nanairo(鶴巻町ナナイロ)
東京都新宿区早稲田鶴巻町596 ☎︎080-4295-0716