コロナ前の1.5倍の売り上げ。テイクアウト販売は導線作りに勝機あり

大阪の商店街に店を構える中華バル「one soup(ワンスープ)」のテイクアウト販売の勢いがすごい。運営するのは、店舗設計デザイン会社「株式会社カームデザイン」だ。同社の代表取締役社長の金澤拓也氏は、2010年に「洋食使いを日常に」をコンセプトに外食事業を立ち上げ、現在、東京都・大阪を中心に16店舗を展開するに至る。今回、コロナ渦が巻き起こる中、のれんを変えた新業態の出店や、テイクアウト販売だけで、通常営業の1.5倍を売上げる等の成果を上げている、同社の取り組みについてお話を伺った。

中華バル「one soup(ワンスープ)」は、4月27日からテイクアウト販売を開始したところ、たった4日間で通常の店内飲食と変わらない売上をあげた。さらに約1カ月後にはテイクアウトだけで通常営業の1.5倍を売上げるまでになった。

では、具体的に何をしたのか。まずは、店の外に長机を置き、その上で弁当販売をした。また、住宅立地であることから、幅1500mmほどの冷凍ショーケースを長机の横に置き、店内で調理した料理を冷凍食品にして販売。しかし、これだけではインパクトがない。興味を持ってもらうために、長机に明るいオレンジ色のテーブルクロスをかけ、ショーケースには、冷凍食品の商品名と価格を記載したPOPを大小15枚ほどを貼り付けた。さらに、遠くからでもPOPの存在に気付いてもらえるように店舗の外壁にもPOPを掲示。(写真1)

また、視認性を高めるために、黄色生地に黒文字で大きく「中華弁当」と書かれたのぼりを2か所に設置した。(写真2)これらの取り組みによりお客様の呼び込みに成功。購買率をあげるために、冷凍食品のパッケージには、完成品のシール写真を貼り、食欲をそそらせる工夫を行うことで、売上アップに繋げた。

この結果に対して金澤氏は、「スピード感をもって動いてくれた従業員に感謝しています。」と話す。

テイクアウト販売開始にあたり、金澤社長が描いた売り場のレイアウトの指示書

ディナーはおまけになる。今後、業態変更もいとわない

4月29日に新業態「GOOD SOUND COFFEE(グッドサウンドコーヒー)」をオープンした。テラス型の店舗で、こだわりのオーガニックコーヒーを楽しめる。しかしそれだけではない。「時間を売る」という戦略のもと、「音」を使った空間づくりにこだわった。国内の音響メーカー「エムズシステム」の屋外用スピーカーを使い、上からはボサノバやジャズの音楽を流し、足元からは川のせせらぎの音が流れるように音響設備を配置。お客様は音を感じながらゆったりとした時間を楽しめる。今回、テラス席のため断念したが、店内型の店舗であれば、全てのテーブルにスピーカーを仕込む案もあったのだとか。

緊急事態宣言の中でのオープンだったが、コロナウイルス感染拡大前に立てた売上目標もなんなく達成。アルコール需要に左右されない業態であることから、今後も展開していく考えだ。

新業態「GOOD SOUND COFFEE(グッド サウンド コーヒー)」は全席テラス席

6月1日にオープンするのは、中華そば「出汁と麺ときどき和パスタ腹一杯」。肉おでんと野菜巻き串の酒場業態「ハライッパイ」の“のれん”だけを変えて臨時的にラーメン店を営業する

。コンセプトは時間を楽しめるラーメン店。老若男女に楽しんでもらいたいから、出汁の効いたさっぱりとした飽きのこないラーメンを提供する。サブメニューには、「出汁焼売」「出汁おにぎり」なども用意。お会計時には、かつおぶしの入ったパックをお土産として手渡しする。オープン後の反響次第で、そのままラーメン店として続ける考えもあるとのこと。

出汁御膳 ハーフ&ハーフセット 1,380円

特製 花咲く煮豚らぁ麺 1,280円

「今後、アルコール需要はますます低くなると感じています。外食産業はランチがメイン、ディナーはおまけというように逆転していく可能性だってあります。そのため、私たちはアルコール業態の売上に依存しない『昼業態』『物販』『テイクアウト』にシフトしていく考えです。」

取材協力

株式会社カームデザイン
代表取締役社長 金澤拓也氏
大阪市西区南堀江1-25-12 RE-015 1F
TEL:06-6532-1108

記者:スマイラー特派員
乙丸千夏(テンポス広報部)