初期投資が低く開業がしやすい一方で、トレンドに左右されやすいことから、ラーメン店は3年で7割が閉店すると言われている。そんな中、東京都大田区、蒲田エリアで8年ラーメン店を営なんできた麺場voyageの店主、貝原光さんに創業から現在までの経営の道のりを伺ったところ、いつまでもチャレンジし続ける店主の強い想いがあふれていた。
麺場voyageの店主、貝原さんがラーメン店の開業を志したのは大学4年生のとき。地元、金沢から東京に上京し、大学に通いながら新横浜のラーメン店でアルバイトを始めたところ、ラーメンを作る面白さにどっぷりとはまっていった。大学では中学・高校の教員免許を取得したが、本当に自分のやりたい事は何かと考えたとき答えは一つしかなかった。「今までにないラーメン店を作りたい。」周囲から猛反対されたが、開業への強い想いは揺らぐことなく、卒業後はラーメン店開業のための道へと進んでいく。
ラーメン店は基本的に、単一メニューを出す業態でトッピングやサイドメニューの数も少ない。しかし開業前に、幅広い食材やお酒の知識を身に付けておくことは最低限しておきたいと考え、ラーメン店以外にも居酒屋やバーで5年間の修行を積んだ。そして開業資金を貯め、2010年の27歳の時にラーメン店を開業した。
麺場voyageのラーメンは、鮮魚貝とキノコの出汁がベースとなっている。何故、キノコなのかというと、シイタケが持つ「グアニル酸」の旨味とホタテをはじめとした鮮魚貝の旨味を合わせることで、今までにない旨味のあるラーメンを提供したいという想いから使われれている。レギュラーメニューは、塩ラーメン・つけ麺・和え麺(汁なし)で、和え麺で、それ以外にも「生桜えびの和えそば」「すだち秋刀魚ー麺」など常時、期間限定メニューを3種類以上提供している。
2017年、物件の契約満了により同じ町内に移店したのだが、その時に始めたのが、『ホタテ最中(もなか)』のトッピングだ。しいたけ・しめじ・まいたけを素揚げした『キノコフレーク』をホタテの形をした最中の中に入れ、それをラーメンにトッピングしたところ、その見た目の可愛さと、キノコフレークを崩しながら食べることで、最後まで味の変化が楽しめると評判を得た。
最中(もなか)のトッピングはこんな使い方もしている。ニュータンタンメンをインスパイアしたメニュー、鯛の出汁を使った『ニュー鯛タンメン』では、鯛の形をした最中を使い、その中にキノコフレークと鯛の刺身の切り身を入れている。ラーメンに直接、鯛の刺身を入れてしまうと、スープの温度が下がったり、刺身に火が通ってしまうが、最中に入れればその心配もない。
最中のアイディアは、貝原氏の故郷、金沢の文化からヒントを得た。「移店のタイミングで何か新しいものを作りたいと考えた時、地元の食材にたどり着きました。金沢には、最中のような焼き麩(ふ)の入れ物の中に、乾燥させた野菜や調味料を入れ、お湯を注ぐだけでお吸い物ができる『宝の麩』という金沢名物のお土産があります。そこから、今のホタテ最中のヒントを得たのですが、いつもメニュー作りでは、美味しいことはもちろん、感動や驚きをお客様に感じてもらう事を切にしています。だからこそ、他の人とは違う視点で物事を考えるように心掛けています。」
麺場voyageをOPENしてから8年、固定客がついてきた今、次なる挑戦は“リッチ”ラーメンの定着だ。ホタテやキノコ、時にはウニやサンマを使う等して創作麺を作り続けてきたが、今後は、アンコウや高価格帯の貝類を使う等、新しいラーメン作りに力を入れていきたいという。「ラーメンには1,000円の壁があると言われていますが、価格帯に縛られず、もっといろんな食材を使ったラーメンの美味しさをお客様に知って頂きたいですね。もっと感動や驚きをお客様に感じてもらえるようなラーメン作りにこれからも挑戦していきたいです。」
既に、岩牡蠣を使った1900円のラーメンを期間限定でテスト販売しており、手応えを感じている貝原氏。これからも麺場voyageの挑戦は続いていく。
麺場voyage (めんば ぼやーじゅ)
東京都大田区蒲田4-37-7
TEL:03-6424-5596
記事:オト