現在東京都内に100軒以上はあるといわれている馬肉専門店だが、その先駆けと言えるのが「馬喰ろう」だ。現在11店舗展開しており、新橋店は25坪ながら月商800万を超える人気店である。自らを馬肉の啓蒙集団と名乗り、馬肉文化を牽引し続ける創業者の沢井圭造氏にその想いを伺った。

「元々は兄が経営する馬肉専門メーカーで営業を担当していました。当時、都内で馬肉料理と言えば赤身や霜降りの『馬刺し』で、世間のイメージは高級珍味といったところでしたね。営業を始めた頃は、都内の店をひたすら回り馬刺しを売っていました。」

しかし、『赤身』『霜降』『中トロ』と部位が限られていたこともあり、いつしか馬刺しの営業も頭打ちになってしまう。そんな時に、信州や東北では、馬刺しが一般的な家庭料理として親しまれている事を聞いた沢井氏は地方へと営業を広げていくことにした。

「私みたいな東京の業者が相手にされるのか・・・そんな不安もありましたが、『分からないならまずはやってみる』と腹を決めて信州に行くことにしました。」

しかし、そんな沢井氏の心配は杞憂に終わった。東京で販売していた価格・品質の規格で営業をしてみると、「この質でこの価格は安いよ!」と評判を得たのだ。これまで地元企業の独占状態だったその地域ではメーカーの言い値で取引がされている、そんな状態だったのだろう。手応えを得た沢井氏は東北、中部、九州へと営業網を拡充させていく。やればやるほど売上がついてきた。同時に『馬肉』に魅了され今の「馬喰ろう」の骨格となる体験を重ねていった。というのも、地方によっては馬肉が一般家庭として当たり前に食べられていること、部位が牛の同じ数だけあること、焼肉にしたり、すき焼きにしたり、味噌鍋に入れたりと様々な食べ方があることを知るうちに、『馬肉』という可能性が沢井氏の中でみるみる広がっていったのだ。

「馬肉はこんなにも美味しい食べ方があるのに知らない人がいるなんてもったいない。これを東京の飲食店さんんにも教えてあげよう」

そんな気持ちで東京に戻った沢井氏は、早速いろんな飲食店を回り説明しては、展示会に出展しプレゼンをして試食をしてもらう等、あれやこれやと手を尽くした。しかし話しは聞いてはくれるが、実際に取り扱う飲食店はほとんどいない。東京での馬肉料理と言えば『馬刺し』の一辺倒り。『馬刺し』以外の料理がお客に受け入れられるのか、そんな不安で踏ん切りがつかない飲食店がほとんどだったのだろう。

それでも、馬肉の魅力を伝えていきたい。もっと多くの人に食べてもらいたいという想いを捨てきれずにいた沢井氏は、自身で馬肉店を2005年に開業する。それが今の「馬喰ろう」だ。自分の店が成功すれば、他の飲食店でも馬肉を取り入れやすくなるはず。どんんどん真似してもらい馬肉の魅力を広げて欲しい、そんな想いだった。その想いもあり、現在展開する11店舗(FC:4)は、お客が様々な食べ方を楽しめるように、大衆居酒屋、焼肉スタイル、馬しゃぶ酒場など、複数のブランドで展開している。

馬肉への想いは誰にも負けないが、飲食店経営はド素人

オープン当初神田の店舗は大赤字。うまい馬肉を安価で出したら売れるだろうという当初のもくろみはすぐに崩れ去った。馬肉という強力な武器があっても食べてもらえなければ意味がない。毎日のようにメニューを書き換え、店の席を変え反応を見てはまた模様替えの繰り返し。一品無料サービスも積極的に取り入れお客の呼び込みに奔走した。すると試行錯誤を重ねるうちにオープンから半年後には利益が出るようになった。

さらに、多くの人に馬肉の魅力を知ってもらおうと、お客と一緒に楽しめる企画を立てて次々に実行していった。例えば、夏になると必ず作るのがノベルティの「馬喰ろう団扇(うちわ)」。この団扇を“左手”で仰ぎながら来店したら一品サービスするという。もちろん右手ではダメ!と沢井社長は笑う。他にも、毎年1月には宝くじならぬ「ばにくじ」を全店で1万枚程配る。抽選で一等は馬刺し盛り合わせが永久無料のブラックカードをプレゼント。永久無料、ものすごいインパクトである。当選者はfacebook上で発表し、同店のfacebookページの盛り上がりにも一役買っている。今では、予約必須の繁盛店となった馬喰ろうだが、味や値段を特別変えたわけではないが、知恵と工夫で頑張る沢井氏をはじめスタッフたちの姿が人々の心を掴んだのだろう。

「うちわを左手で仰いでご来店いただいた方に赤身馬刺しをプレゼント!」という表記。裏面には、「この馬刺しの匂いを嗅いでみて下さい。」といったユーモアな一言が書かれている。緒に楽しむ工夫が大切と沢井氏は語る。

馬肉啓蒙集団の活動は続く

現在は、社団法人日本馬肉協会を設立し、高まる馬肉需要に答え生食文化を守るためにも様々なセミナーを開催している。同協会が主催している馬肉検定は飲食関係者のみならず一般の受験者も増えており、その注目度の高さがうかがえる。

また今後はグループとして関東の郊外や地方へ出店していく考えだ。また、馬肉料理を一般的に食べてもらうためにランチ業態の開拓や中食への参戦も精力的に行っていきたいと話す。沢井氏の描くビジョンは無限に広がっていくが、「馬肉の魅力を多くの人に伝えていきたい」という創業からの想いは一貫して揺るがない。この強い信念が馬肉文化を定着させてきた原動力になっている。

株式会社 馬喰ろう
代表取締役 沢井圭造
馬肉問屋 馬喰ろう-新橋店
東京都港区西新橋1-17-10 正明冨士ビル1F
TEL 03-6268-8348
//www.bakurou.com/

 smiler41号 編集部乙丸