牛一頭買いで競合店の1/5価格で提供

取材に向かった先は、神奈川県相模原市の工業団地の中にある炭火焼ハンバーグ&ステーキ 「CHERRY’S(チェリーズ)」。人気の無いこの場所になぜ出店したのか、代表取締役の小山幸希さんに聞くと、「単純にお金がなくて他に借りれるところがなかったからなんですよね」と、ゆっくりとした口調で話す。

商売を始めたのは19歳。大学に通いながら、兄に借りた30万を片手にBARをオープンした。3店舗まで展開したが、父親の看病を機に地元の神奈川県に戻り、2013年に10席の「チェリーズ」をオープンさせた。

肉は北海道の契約農家から、毎月約4頭、年間約50頭の牛の一頭を買い付け、自社の加工工場でステーキ用の肉と、ハンバーグ用のミンチの肉に加工している。それを、運営する飲食店3店舗と、提携店へ配送するのだが、この4頭だけで、月間売上の1500万円にあたるそうだ。

しかし、客単価は2~3千円とリーズナブル。加工した肉を、都内のステーキ屋で食べる1/5価格で提供しているため、原価率は40~50%にのぼる。それでも経営が成り立つ理由について小山さんは、「利益率は少ないですね。僕らの場合は、同業者から、小山君の店はステーキ屋じゃなくて、ラーメン屋だよね、って言われることが多いんです。食べに来てくれるのは、工場で働いている、いわゆる”おじさんたち”なんです。ランチなら3~4回転、夜は2~3回転するから、1日を通して7~8回転しています。だから、僕らは、その働くおじさん達のための食堂なんです。」と楽しそうに話す。

しかし「食堂」という言葉がピンとこない。店内はレンガ調で洒落ているし、壁には管楽器が飾られてあり、照明にも凝っている。おじさんが食事をしている姿は想像しがたい。これに対して、小山さんは、「唯一、店造りでこだわったことが、”作業服を着た人達がかっこよく映る”かどうかなんです。町工場の職人さん達が、かっこよく生きる街だと思うから、僕もそんな店にしたかったんですよね。」と話す。

2012年に1号店をオープン後、14年にはステーキ業態の「スタンプ」をオープン、15年に焼肉業態の「喜治」、17年6月には、喜治2号店オープンと、順調に店舗を拡大している。そんな中、今後の展開について伺うと、「早く現場に戻りたい。今は、基盤を固めるために、店の外に出ることが多いですが、やっぱり、お客様から、おいしかったよ、とか、ありがとう、とか直接聞けるような現場に立っていたいな思っています。そのためにも、早くスタッフを育てていきたいですね」と飲食人らしい熱い思いを話してくれた。

ルチャ株式会社
代表取締役 小山幸希
ハンバーグ&ステーキ CHERRY’S
神奈川県相模原市中央区田名2294-13
☎︎042-813-0770