雄二郎、俺のガムをそそそっんなに食うな。

俺の車は、スカイラインのGT
未だ12万キロしか走ってないのに、カランカラン音がする。
板金屋の雄二郎によると、スカイラインは、走りは良いが、繊細で毎日磨いたり手入れをする人の車ですよ、
森下さんのような無精者の乗る車じゃあない。
2万キロも3万キロもオイル交換をしない様な、無頓着な人に持たせたのが間違いです。
ときやがった。
いつおかしくなっても不思議じゃあない。
レベル5とぬかしゃあがった。
未だ走れるのに交換するのは忍びなかったが、仕事の車だし約束の時間に行けなくなることもあると、思い切って傷だらけのスカイラインを買い換えることにした。
「雄二郎!150万くらいのやつを探してくれよ」
「森下さん、この傷だらけのスカイラインをみてください。150万もだしたって、1ヶ月もしないうちに傷だらけになりますよ。5~60万でいいのを探してきますから、その方がいいですよ。」
と言うことで65万の、10年使用のクラウンをあてがわれた。
勿論ナビは新東名を走れば、富士の裾野の山ん中を突っ走っている。
案の定、
1ヶ月もしないうちに、CDが聞こえなくなった。
直して持ってきた。調子を見るためにドライブしましょうと、奴は助手席に乗ってきた。
走り出して5分した頃か、「森下さん、ここにあるガムもらっていいですか」
「おおいいよ」が終わるか終わらないうちに、運転席にあるキリシトールだかなんだか、500円くらいしたガムをつかんで、口に放り込んだ。
「おい、雄二郎、お前ガム幾つを口に入れたんだ」
「4っです」
「なっなにぃ、4つだとぉ」
「何を興奮してんですか」
「何をって、ガムの容れ物のなかを見てみろ」
「欠けたのが随分ありますねー」
「欠けたのじゃないだろっ、よく見てみろ。ひと粒が、半分になってるだろ。」
「きったねぇ、食い散らかしたんですか」
「馬鹿たれ、もったいないから、半粒づつ食ってんだ、人の気も知らないで、ガバッとつかんで、4粒も食いやがって」
「ガム4粒食って怒るんですか」
「アタリメェだ、この野郎4粒ったら、8回分じゃないか、」
「ガムですよガム!」
「お前なあよ~く考えてみろ、ユニセフで言ってんだろ、世界には5才まで生きられない人が500万人います。あなたのその一粒が、子供の命をつなぐのですって」
「言ってませんよ」
「うるせ~、ガム4粒食うなぁ~この野郎」
「ガム食って怒られたの初めてですよ。」
「オメィ明治ったなぁ、私立だろう、ワガママでロクなもんじゃないなあ」
「ガム食って明治のケチをつけるんですか」
「お前に会った時から、欲望に流される不良だと思ってたら、やっぱりそうだった」
「あー嫌だ嫌だ、歳くってくると、偏屈になるって聞いたことがあるが、隣の人がそうだとは思いませんでしたよ」
「なに減らず口をたたいてんだ」