ラーメン店と他の飲食店の経営の間にある1%の大きな違い。この1%を攻略することが成功のカギである。

繁盛塾の木村康宏代表

「ラーメン店の看板娘が経営コンサルタントと手を組んだら」などの著書で有名なラーメン専門コンサルタント、木村康宏さんにラーメン店経営の秘訣をお聞きしました。

ラーメンと他の料理の一番の違い。それは多くの料理が洋食や和食といった大きなカテゴリの中に属するのに対して、ラーメンはその商品名自体がカテゴリとなっていることです。

その状態を生み出しているのは料理としての特異性です。たとえば天丼といえば、ご飯の上に天ぷらが載っているというイメージでほぼ統一されます。しかもサクサクとした衣の歯ざわりなど、お客様の評価の基準もある程度均一化されています。しかしラーメンの場合は何をしようと自由。スープの種類も多種多様で、あるいはスープがない場合もあります。その評価の基準には決まりきったものがなく、個人個人の好き嫌いに委ねられるのです。

その結果、ラーメンの場合はいかに他店との違いを出すか、よりお客様のハートに強くアプローチするかが勝負となります。

結果、ラーメンの場合は誰もがファンになることよりも、熱烈なファンを作ることが繁盛店づくりにプラスになります。極端な話、都市部であれば100人中20人が最高と感じれば行列が出来ます。熱烈なファンを作ると、必然的にその副産物としてアンチが生まれるわけですが、このアンチが生まれることを怖がらないこと。これが繁盛店を作るポイントです。

とはいえ、ラーメン店でも店舗経営の原理原則の99%は同じです。たとえば、お客様を大切にすればリピーターになりやすく、逆に対応が悪ければお客様が減ってしまう、お店は清潔であるべきなどです。しかし、ラーメン店はその特異性である1%を知らないと原理原則99%を知っていても失敗するし、逆に原理原則を大切にしていなければ、いかに商品のファンが熱烈であっても廃れます。

一方で、市場におけるお店のポジショニングによって商品の尖らせ方は変わってきます。1店舗であれば強力な個性でアンチを生むくらいが良いですが、7店舗を超えるあたりからは業態として丸くして、30店舗になるときにはファン層の裾野を広くすることが求められます。つまり、ラーメンの特異性1%が大切なのは特にスタートアップのときで、この特異性を追求することができないと、鳴かず飛ばずで加速していかないのです。

では、この1%の特異性を極めるポイントは何でしょうか?一言でいうと「思い切り」。どこかひとつズバ抜けて印象に残るポイントを創り上げていることです。繁盛しているラーメン店の店主を見ていると、クリエイターの発想を持っています。0から1を生み出して、その1を磨き上げる人が長く繁盛を続けています。この1%への取り組みは人それぞれですが、何か自分だけのものを作り上げてやろう、この市場に新しい価値を提供してやろうという姿勢が、ラーメン店をはじめとする専門飲食業で勝ち続けるためには効果的です。前例探しや正解探しでなく、頭のネジが3本外れているくらいの発想で枠組みをぶっ壊していくような人が新しいものを生み出し、業界をリードしています。そんな人をこれからも育てていきたいと思っています。(談)

■取材協力
株式会社繁盛塾
連絡先:03-3201-5688

http://hanjyoujyuku.co.jp/

記者:スマイラー特派員
谷口光児(テンポス広報部)
Smiler53号 ラーメン特集