ぼけてきたらどうする?

66歳 同級生夫婦の、年1回の旅行は、岸和田だんじり。
晩飯をかこんで、勇壮な地車(だんじり)の後、自分達の45年前の、向こう見ずに、暴れまわっていた話が途切れて、誰とも無く、健康の話、医者とのやり取り、栄養、運動の話になった。
遂に行き着いた。「惚けたらどうする」
惚けてまで生きていたくないね。
誰もがそう言う。
周りに迷惑かけるばっかりで、 そこからは、身の回りの惚けた身内の、素行の凄まじさが、これでもかこれでもかと、競ってるかのように話しが出た。
俺が言った。
「マダラ惚けの時が大事だ。その時に、自殺するつもりだ。」
「マダラ惚けの時に、自覚が有るのか」
「3年前の夏、田舎で百姓をしていた。小便をしたかったが、30分もすればお昼だと我慢して、草刈りを続けた。
膀胱がパンパンになったが、我慢していた。
「お昼だよー」の声を頼りに、草刈り場を離れた。
飯を食い終わって、膀胱の張りに気がついて、慌ててトイレに行った。
5~6滴しか出ない。詰まっちまったと思った。膀胱も張っている。
たが、まてよ。昼飯前に小便をしたんじゃぁないか。
トイレではしてない。戻る途中の、畑か、道の脇に違いない。
犯人探しの刑事になったように、家を出て、草刈り場までの道を、登ってった。
道の右ひだり、木のした、だんだん思い出した。蔵の裏の畑で、 地べたを見ると、うごかぬ痕跡が有った。夏の直射にあたって、乾いてはいたが微かに濡れている。
完璧に思い出した。」
以後そこまでの事はないから、アルツハイマーでは無いと思うが、予兆ではあると思う。
皆んなはえらい事になったな~と言う顔つきである。
「何だよその顔は、そういえば、この4年、頚動脈が、75%の閉塞で、毎月、観察で、病院通いだつたのが、2週間前の、超音波検査で45%以下になったってよ。」
「そりゃ~良かった。そんでもよ、頸がすすかすかになっても、ぼけちゃぁなぁ。」
つまり
惚け始めは、本人に解るのでは無いか。
だから、俺は惚け始めたら、青酸カリを飲むつもりだ。
どこにいけば買えるんだ。知らん。それじゃ無理だ。その通り。
実は、次の作戦も考えて有る。
5年前に、仲間で黒四ダムに行った時、ダムの高さを見ると150m以上ある。これは飛び込むのに良い。
マダラ惚けになったら、黒四ダムに行って飛び込む事にしている。
「あんな遠い所だと、ダムについた頃、ボケがきて、何をしに来たか忘れて、お土産なんかかって帰って来たり、どこにいるのか分からなくなって、警察の厄介になったりして、家族が迎えにいかなくちゃあ行けなくなるから、羽田の辺りで飛び込んでよ。との女房殿の仰せであった。
自殺のやり方は、もうちょっと考える必要がありそうだ。