名古屋市の天白区島田住宅に「おとうふ茶房 高野の里」があります。オーナーは、上品な雰囲気と笑顔の素敵な女性、山田愛子さん。こだわりは、豆腐をベースにしたヘルシー料理。材料は徹底して国産のものを使用し、化学調味料は極力使いません。
ヘルシー志向の流行に乗り出店されたのかな、と思いきや、そこには、山田さんご自身の強い思いがありました。
ここからは、山田さんのお話をどうぞ。
―開業したきっかけは何ですか?
以前、大病で死ぬ寸前まで体調を壊したことがありますが、そのときは奇跡的に改善することができたんです。それで、残りの人生最後に一勝負してみようと思い、おとうふ茶房 高の里をオープンしました。
―でも、60歳という年齢でのスタートに不安はなかったんですか?
もちろん、不安もありましたが、お店を開く前に、「豆腐すくらむ」でフードアドバイザーとしてレシピ開発をしていたので、料理に自信があったこと、周囲の方々が優しく後押しをしてくれたこと、日本政策金融公庫から融資をいただけたことでお店を開くことができました。プレオープンの日は、それがゴールであるかのように嬉しくて、号泣しちゃいましたね。
―オープンしてから苦労されたことは何ですか?
オープンしてから2年間は、テイクアウト専門の惣菜屋で、初めは商品力の高いおいしい料理を並べていればお客様は分かってくれるし、ばんばん売れていくと思っていました。でも、蓋をあけてみると、商品の大半が売れ残ってしまっていたんですよね。しかも、最初はお客様に良い商品を食べてもらいたくてフードコスト60%かけていたんです。
―60%ですか!?
商売になっていなかったんです。お客様からは、「趣味の店ですか?」って言われることもありました。そんな中、ある日お客様から「温かいものを食べたい」と言われて、6席だけのイートインを始めました。それが良かったのか、お客様も増えてきて、今では、テイクアウトよりイートインの方が売上を上回るようになりましたね。同時に、仕入先やメニューの改善もして、フードコストも30%まで下げることが出来ました。
―惣菜やだとロスも多くてコスト的に大変ですよね。
話しは変わりますが、店が軌道に乗り始めた2年前に、また体調を崩されたそうですね。その時は心臓を患ってしまい、4ヵ月の入院を余儀なくされました。その間は、店を休業しようかと悩みましたが、お客様から忘れ去られるのもいけないと思い、スタッフだけで、看板料理の「おとうふの蒲焼き重」一品のみで営業したんです。
しかし、みるみる客数は減っていき、客数ゼロの日も続いてしまいました。本当に経営的にピンチでしたね。そうした経緯もあって、今のランチはお客様が飽きないように、季節感のある和とフレンチスタイルのミニコースを毎週入れ替えて提供させていただいています。オリジナル料理も、エビチリやみそかつ、ステーキなど自信作を増やしているところです。おかげさまで復帰してからは売上げは右肩あがりで、月の売上は100万円くらいです(約10坪)。
―それは、すごいですね。最後に店や料理に対する思いを教えてください。
お店を始めてから5年間は、本当にうまくいかないときや体調が悪い時は、正直やめたいと思いましたが、お客様の声でなんとか続ける事ができました。ご意見ノートをテーブルに置いていますが、その声を励みに頑張ってこれたんです。また、良い素材にこだわっているため、原材料費が高く、一生懸命頑張ってもなかなか儲けが出ない時期に、安価な外国産を使おうか誘惑に負けてしまいそうになったときもあります。しかし、お客様や自分自身に嘘をつくのは嫌だという想いは捨てられず、安心・安全な食材をつかうことを、今でも貫くことができました。これからもお客様を大切にして、頑張っていきたいと思います。
―ありがとうございました。
店舗DATA
おとうふ茶房 高野の里
愛知県名古屋市天白区島田が丘720番地
地下鉄桜通線「神沢駅」より車で3分
営業時間:8時~18時