【仙台 寿屋 寿庵】夢は叶うもの。 ずっと、人と関わる仕事がしたかった!

赤間葉央さん

物心ついた時から「人が集まる場所をつくりたい」と思っていました。両親が蕎麦屋を初めて45年。わたしが生まれたときにはその環境があって、いつもお客様や従業員の方々に囲まれ、可愛がってもらっていました。まるでそれは家族が増えたような感覚で、お店に行くのが楽しくて、子供ながらに自分がこのお店を継ぐんだと決めていました。

その夢を実現するためにまず考えたことは、お店に通ってくれるお客様たちを知る必要があるということ。そこで、いろんな企業さんや経営者の方々と触れ合うであろう七十七銀行に2013年、就職することにしました。最初は、3年は勤める予定でいたのですが、配属された支店が東日本大震災の影響を大きく受けた石巻にあり、これから再建していく方々が口を揃えて言っていた「どんなに金があっても人がいないと事業を大きくできない」という言葉に心を動かされたんです。ヒト・モノ・カネが大事とはよく聞きますが、モノは蕎麦がある、カネはなんとか稼げばいい、だけどヒトに関しては、いなければどうにもならない、と。そこで当時の上司に「採用の勉強をしたい」と素直に相談したんです。

上司には将来的に蕎麦屋を継ぎたいと話していたこともあり、チャレンジするなら早い方がいいと背中を押してくれました。そうしてビズリーチという東京で即戦力採用支援を行っている会社に転職をすることに決めました。そこでは新規事業の立ち上げを一緒にさせていただき、若手の採用、企業支援、ヘッドハントの仕事もさせてもらいました。まだまだ身に着けたいことはたくさんあったのですが、両親とは2年の約束で東京に就職していたこともあり、そこから1年半は待ってもらいましたが、結局3年半お世話になって退職しました。本当だったらそのまま東京にいて仕事を続ける選択肢もあったのかもしれませんが、私は小さいころから蕎麦屋を継ぐと決めていたので、いくら仕事が楽しくてもぶれずにすみました。それは私の意志が強かったというよりは、私の意志を強くしてくれる人達が周りにいたからだと、今、とても感謝しています。そして2019年3月、ようやくこの場に戻ってきました。

「寿屋 寿庵」で、一年を通して大人気なのは、なんと言っても「寿庵の冷肉そば」。ご主人の奥様の出身地である山形県河北町谷池の名物である「冷たい肉そば」は、醤油ベースの冷たい親鶏出汁と、コシの強い蕎麦の組み合わせでクセになる味。

最初は現場にはりついて従業員と話し合い理解しあうこと、お客様の顔を覚えることを大切にしていたのですが、これからというときにコロナ禍になり当たり前のことが当たり前ではなくなりました。しかしそんな時でもやはり応援してくださる方はたくさんいて、先輩経営者の皆さんがいろいろと教えてくださるんです。自分と同じ過ちをしないようにと、アドバイスをくれたりサポートをしてくれたり。

家族経営は孤独になりがちなのですが、私はそういう先輩方に教えていただきながら仙台の飲食業界で、蕎麦だけじゃなく空間やお酒や人との出逢いを楽しんでもらえるような蕎麦屋を作りたいと思っています。美味しい蕎麦の味をしっかり伝えられるよう伝道師となって、私の店だけではなく、例えば居酒屋さんに蕎麦を卸したり、イベントに出たりして、もっと気軽に食べてもらえるようなチャレンジをしていきたいです。「美味しい蕎麦屋にデートに行こう」が当たり前になるように頑張ります。

取材協力
「寿屋 寿庵(じゅあん)」
宮城県仙台市青葉区一番町3-7-1 電力ビルB1F
☎︎022-265-1943