食洗機は文明の利器。でもシンクから3メートル離れていたら?

標題の件は、「こんなことあり得ないよね?」というひとつの例である。ホール担当が下膳した食器を、洗い場担当が簡単に仕分けながらシンクに浸ける。溜まってきたから3メートル先の食洗機にセットして…と、ここで「なんでやねん!」というツッコミが100%返ってくるだろう。食洗機を入れているお店ならば、遠くてもシンクから1~2歩の位置にあることがほとんどのはずだ。
同様に、お冷とグラスがパントリー付近ではなく厨房の奥にあるのもあり得ないし、調理スペースと冷蔵庫が対角にあるなんてことも考えものだ。もちろん、業態やメニュー、お店の構造や規模によって変わることはあるが、おおむね間違ってはいないだろう。

何の話かといえば「動線」についてである。特に従業員側の動線設計はどのお店でもしっかり考えてあるだろう。
調理スペースは料理人が数歩ですべての作業をこなせる環境が望ましいし、従業員同士が交差しない動線づくりは安全かつ効率的にオペレーションを回すことができる。当然それはピーク時の回転率にも影響する話になってくる。

話を「集客」に移そう。集客を難しく考える飲食店の方がとても多く感じるのだが、店内の動線を考えて経営している方であれば、意外と飲み込みやすい話であることを先にお伝えしておきたい。集客も「動線」が大いに関係してくるからだ。

購買行動のプロセスの一つに「AIDMA(アイドマ)」というものがある。Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)という流れでモノを購入するに至るという一般的な流れを示したものだ。これをもっと大きな括りにすると、認知段階→感情段階→行動段階というプロセスとなる。
これを飲食店に置き換えて分かりやすく示すと、
「チラシが入っているな。おっ、美味しそうじゃん。しかも増量クーポンまでついている。今月いっぱいのクーポンだし1回くらい行ってみようかな。近くに寄ったときに入ってみるかな。クーポンを財布に入れておこう」
そして後日、
「午後に近くで買い物したいし、お昼はあのチラシの店で食べよう」
という流れで入店という行動に至るということだ。どう戦略を組み立てるかによって来店する数は変わってくるが、シンプルにいえばこのような流れで一見さんがやってくる。

そこから2回目の来店に結びつけるための動線を作るならこんな感じだ。
「LINE登録か、よくあるよね。あ、登録すると食後のドリンクサービス、しかも今日使える。今日使えるんだったらドリンクだけでもゲットしておくかな」
こうして登録してもらったLINEに魅力的な写真やコピー(文面)、新メニュー紹介などを定期的に配信していくことで、再来店(行動)してもらう確率を上げていくのである。

お店の「動線」と同じ考え方であることをご理解いただけただろうか。動線ができていれば集客も効果的に回りやすい。
注意を引いてもらうためのツールはチラシでも店頭のポスターでもネット情報でも構わない。それらを魅力的な構成にしてより関心・欲求を高められるようにし、行動に移してもらうまでの動線を作ることはそう難しくない。
それぞれのステップにはたくさんの手段があり、その手段はターゲット層や業態などによっても変わるはずだ。一点、集客動線を作るにはチラシやポスター、グルメサイトへの掲載など「認知段階」に取り組まないと事が始まらない。大きな負担にならない程度の投資は臆することなくチャレンジしてみることをおすすめしたい。

記事執筆

ビズクルー株式会社

代表取締役 田中 良平

集客やビジネスモデル構築を強みとする。飲食店のチラシやPOPなどを格安定額制で丸投げできる「助太刀丸」を運営。