居酒屋の店主が始めたサンドイッチとおにぎらずの専門店。売れなかったら即控室!

愛知県名古屋市で「焼酎居酒屋モモガッパ」、「鶏焼き酒場 かっぱの茶の間」「厚切り豚と本格焼酎 ブタガッパ」等の居酒屋を運営するのは、有限会社チェルビックの取締役、楠本 愛氏。これまで居酒屋一本だった同社が、2020年10月にテイクアウト専門店「パンカハンカ」をオープン。試行錯誤の日々を取材しました。

―楠本氏

新しくオープンした「パンカハンカ」は、野菜やお肉、卵などの具材がたっぷり入ったサンドイッチ及びおにぎらずのテイクアウト専門店です。店名の「パンカハンカ」は、「パン」と「ハン(飯)」を意味しています。ショーケースに並ぶ商品は、コロナ禍の中、すべてお客さまや従業員の声から生まれたのです。

昨年、緊急事態宣言が発令され、御多分に洩れず私たちの店もお弁当販売に力をいれるようになりました。もともとサラリーマン向けにボリュームのあるお弁当を販売していたのですが、テレワークが増えると、少しずつ女性のお客様のご購入も増えていきました。そこで、女性向けの商品としてサンドイッチを販売してみようと思ったのです。その中で、お客様のお話を聞いてみると、テイクアウトしてもコロナ対策のため、ランチは自分のデスクで食べることが多いというのです。すると、どうしても仕事をしながら食事をしてしまう。でも食事って生活の中でとても大切なものです。それなら、「パソコンの操作ができないくらい、食べることに集中してしまうサンドイッチを作ってしまえ!」と。そこで、具材がぎっしり入ったボリューム満点のサンドイッチ「わんぱくサンド」が誕生しました。

「おにぎらず」はアルバイトの学生さんに、まかないの代わりとして提供したことから生まれた商品です。時短営業のため、2時間働いたら「はい、お疲れさん」というのはなんとも悲しいなぁとの思いから、家でも食べられるよう、具材たっぷりのおにぎりを持って帰れるようにしました。すごく喜んでくれましたね。そこで、どうせ作るならと、その「おにぎらず」も店頭でテイクアウト販売するようになりました。

雇用を守りたいから新業態に踏み出した

ご存知の通り、緊急事態宣言後もコロナの猛威はとどまりませんでした。時短営業の中で営業を続けるには、人員も減らさなければなりません。「このままではみんなの生活を守ってあげられない。」焦りを感じるようになりました。見通しのつかいない状況が続き、何か始めなければという想いもありました。社員の雇用を守るため、会社を守るために、テイクアウト専門店のオープンを決意したのです。既に好評だった「わんぱくサンド」と「おにぎらず」この2つの看板商品で挑戦することにしました。

私らしい「テイクアウト専門店」って何だろう

ご縁があり出店場所は商業施設の食品売り場に入らせて頂くこととなりました。商業施設というと土日が忙しいイメージですが、この施設は平日の客数が多いこと、特に朝が忙しいと聞いていましたね。通勤途中のサラリーマンだけでなく年配の方も多く来店されます。「2ヵ月に1回の年金の受注日は大忙しよ」と聞いていましたが、なるほどなと思いました。

物件が決定してから数週間後にはオープンというタイトなスケジュールでしたが、無事オープンすることができました。しかし、1週間もたたないうちにだんだんと面白くなくなってきたのです。なぜなら、テイクアウト専門店は、毎日、同じ商品をきちんと同じ場所に並べることが大事であると考え、グランドドメニュー7,8種類を、毎日大量に作り販売していました。しかし、その同じことの繰り返しに面白さを感じられないのです。居酒屋では常連のお客様ほど日替わりメニューを頼まれていました。私も日替わりメニューを大切にしていました。だからこそ、「パンカハンカ」で同じメニューだけを出し続けることに迷いがありました。しかし作り手が“面白い”と思わなければ、魅力的なものなんてできません。そこで王道の「カツサンド」を外すなど、メニューを一新することにしました。居酒屋をやってきた自分だからできるメニュー作りを始めたんです。今では「ルーロー飯おにぎらず(税込300円)」「チャーシューと煮卵のネギラー油サンド(税込450円)」等、特徴ある商品を提供しています。新商品はどんどん投入し、売れなければ2日でやめることもあります。売れないとすぐに控室行きです。芸能界よりもうちは厳しいですよ(笑)。

結果として、売上も上がり、自分はとことん居酒屋の人間なんだなと自覚した瞬間でもありました。

今後の展開について

サンドイッチのお店は、おしゃれで、インスタ映えするお店が多いですよね。ですが、映えさせることに力を入れすぎて、「それほど美味しくなかった」「“映えるゾーン”しか具材が入っていない」等、そんな商品をたくさん見てきました。でも私は飲食人のプライドとして、写真を撮って終わりではなく、「食べておいしい」「得したな」と思って頂けるような、お客様に損をさせない店作りをしていきたいんです。中途半端に終わらせたくないという気持ちは人一倍強いです。

今後も居酒屋と同様、手を変え品を変え、何事にも取り組んでいきたいと考えています。「今日が底辺なんだから、いろいろやって変えていけばいいんだ」が私のモットーです。多店舗展開も視野に入れながら、明るい未来に向かってチャレンジしていきます。

取材協力

有限会社チェルビック 取締役 楠本 愛氏

パンカハンカ(わんぱくサンドとおにぎらず)

名古屋市中村区名駅1-2-2 近鉄パッセB1

記者:スマイラー特派員
乙丸千夏(テンポス広報部)