「定食屋」が提供できる付加価値とは

東京都、東武東上線の「大山駅」「中板橋」で居酒屋と食堂を運営するのは高田博氏。2020年7月にオープンした「食堂 高ひろ」はコロナ禍の中、月商坪30万円に(通常営業時)迫る人気店だ。今回、食堂業態にスポットをあて取材しました。

―高田氏

皆さんの飲食の原点は何ですか。私は子供のころの食事体験にあります。私は3世代家族の家庭で育ちました。その時に体験した、家族揃っての食事の楽しさや、“お袋の味”は私にとってかけがえのないものです。そんな家庭の手料理を味わえる、そんな場所を提供したい、これが僕が飲食を続けている理由です。

初めて店を持ったのは6年前です。その時は立地柄、居酒屋をオープンしましたが、いつかは定食屋をやりたいという想いはありました。その後、2019年11月に「めしと酒 高ひろ」をオープン。ここでも物件が2階で、なおかつ間口が狭いことから、居酒屋業態にしましたが、そこから定食メニューを出すようになりました。オープン後、売り上げの面でも確かな手応えはありましたが、商圏上、まだまだ伸びるはずだと現状に納得はしていませんでした。そんなとき、同じ沿線の物件情報が入ってきました。1階路面、間口もしっかりとれることから、2020年7月に「食堂 高ひろ」をオープンしたのです。看板には大きく「食堂」と書きました。ここでは、鮮魚を使った定食メニュー30種に加え、「めしと酒 高ひろ」の居酒屋メニューも提供しています。

定食メニューが豊富なわけ

「食堂 高ひろ」は、居酒屋使いするお客様も多く、棚にはボトルキープが20本以上並んでいる。食堂としてはもちろん、仕事帰りに酒と肴を食べる飲み屋としても利用できる、いろんな使い方ができる店舗だ。それにしても定食メニューが多い。本日のオススメも含めると30種類はある。理由を伺うと、

「定食はグランドメニューに加え、鮮魚を使ったおススメメニューを提供しています。豊漁なときは、その分メニューも増えますね。また、お客様にとってメニューはたくさんの中から“選べる”状態にすることが大事だと思っているからです。」

迷ったときはお客様が喜ぶ顔を思い浮かべる

―高田氏

私たち「定食屋」は何か特別なものを作っているわけではありません。それこそ、家庭の味といいますか、“お袋の味”がテーマですからね。それに加えて、自分たちはどんな付加価値を提供できるかを考えた時に、例えば、家庭で作るにはちょっと大変なタルタルソースにとことんこだわるとか、副菜のキャベツは全て自分達で千切りし氷水につけて、キンキンの状態で盛り付けをして提供する等、そういうところだと思っています。今はコロナでデリバリーやテイクアウトが増えていますが、お店で出来たての料理を食べる価値を楽しんでほしいと考えています。

これからのこと

―高田氏

直近では中野店のオープンを予定しています。業態は同じく食堂です。坪数は36.8坪で席数は60席。厨房を広くとり、中野店を含めた煮炊きもののメニューは中野店で仕込み、各店舗へ配送したいと考えています。

また、まだ調査段階ではありますが、業態転換の制度を活用し東北の鮮魚を販売することも検討しています。実際にオンラインで東北の生産者の方からお話を聞く機会もありました。ただどうしても送料の部分がネックとなってしまうため、恐らく、宅急便ではなく、自社で東北まで直接買い付けに行く方法をとるでしょう。はじめのうちは自分を含めたスタッフが買い付け、配送を行う予定です。実際に産地に行くことが、スタッフにとっても刺激になると思うし、一番の研修になると考えています。今は、どの業界もコロナで厳しい時です。その中でも東北地方は震災復興の中でコロナに直面した厳しい状況にあります。この業態転換を行う事で、いち飲食企業として復興の一助を担えればと考えています。

取材協力

食堂 高ひろ

東京都板橋区中板橋14-11

03-6315-2915

店主 高田博氏

記者:スマイラー特派員
乙丸千夏(テンポス広報部)