会社を潰しそうになった経験を話してくれた

株式会社トライブライトの緒方宏さんを紹介します。緒方さんの前職はテンポスバスターズです。2015年の10月に退職され、テンポス に入社した時からの目標だった飲食店を開業されました。あれから5年、今回のコロナ騒動も含めて、どういうふうに飲食業界を歩んできたのかふり返っていただきました。

順調なスタート

2015年の11月半ば、お店として形になってきたので、私一人で実験する形でサイレントオープンします。そして12月11日、柔らかステーキと鉄板料理の「肉バル甲子園テッパンメシ」をグランドオープンしました。翌年の春には読売テレビに取り上げられ、地元のグルメ誌からも取材が入るなどなかなか順調な滑り出し。売り上げも好調な推移を見せて行きます。11月には地元西宮市のフードイベントからも声がかかり、イベント事業なども始め、ますます人々に知られるように。すると、近くの兵庫医大という大学病院から「お医者さん達の弁当を作ってくれませんか」という要望があり、2017年2月に高級弁当の仕出しを始めました。これが予想を超えて好調でした。口コミでどんどん広がって、近隣の西宮から尼崎、大阪や神戸、明石まで配達エリアも広がっていきました。

事業拡大、そして会社設立

開店前に弁当をいっぱい盛り付けて、それからランチ営業をするようなことをしていたのですけど、いろんな弊害が出てきたので弁当専門の製造工場を作ることになりました。オープンからずっと手伝ってくれていた女性を社員登用し、2017年6月に高級弁当の製造、配達専門の「テッパンメシ hanarekitchen」をオープンさせます。そこでその女性社員がかなり売上を伸ばしてくれて、本店も好調、磐石の体制になってきました。

その頃は採用もすごくうまくいってました。社員を2名採用し、私はテンポス時代のような経験をさせてあげたい、もっと活躍できる場を作ってあげたいという思いから、ちょうど本店の近くに手ごろな居抜き物件が出ましたのでそこを借りました。当時21歳だった男の子に店長やってみないか、ということで飲食店としては2店舗目となる低単価の肉バル業態「新感覚肉酒場 スタバル甲子園」を2017年の10月にオープンさせます。社員も増え、独立してから丸2年経ちようやく株式会社トライブライトを設立しまして法人成りをしました。

2号店でつまづくも2店同時オープン

残念なことに、「スタバル甲子園」はオープンからずっと赤字を垂れ流し、それを改善する妙案も浮かばず2018年8月に閉店します。まあ、勢いだけでやってしまうとうまくいかない典型的な失敗でした。それを糧にして今度は多店舗展開に挑戦しました。2019年7月、地元甲子園の隣、今津というエリアで牛タン料理の「シタツヅミ 西宮テッパンメシ」。もう一つ隣のエリア阪神西宮で海鮮居酒屋の「はんにし海鮮酒場 魚日和」という2店同時オープンします。違う業態と違うエリア、違ったコンセプトでやれば両方コケることはないという戦略です。幸いなことに2店舗ともオープンから好調、売り上げも結構いい数字を叩き出していたんです。なんとか安定してきたかなと思っていた矢先でした。新型コロナウイルス感染症拡大による営業自粛です。

会社をつぶしてはいけない

ご存知の通り外食店はかつて経験したことの無いダメージを受けるわけです。本店の「テッパンメシ甲子園」は5年やってきたおかげで、テイクアウトメニューに切り替えても売上を作ることができました。しかし、一年経たないお店って予約は全てキャンセル、新しいことを始めるための投資などするどころではありません。

高級弁当「テッパンメシ hanarekitchen」についても注文はすべてキャンセル、大きな集会などが開催できない状況だったので、新しい注文も全く入らない状態が2ヶ月続きました。実は、私の会社はこの高級弁当が事業の柱だったのです。それが本当にゼロになりましてキャッシュが回らない、いよいよ倒産の危機を迎えました。

何としても会社を存続させないといけない。私はそう決断し他の全てを棄てて一つに集中して利益をあげる戦略に打って出ます。本店に集約し、現在一つの場所で店内飲食、テイクアウト、そして高級弁当の配達という事業をやっております。

再起をかけた勝負

私は、新型コロナウイルスによって外食産業自体が否定されたように感じました。今後第二波第三波が来ると言われる状態で、今までと同じことをやっていてはいけない。これまでの外食産業の常識が通用しない、全く違ったものに変わったと捉えています。結局強かったのは歴史のあるお店です。私は「テッパンメシ」にまず特化し、ブランドとして『テッパンメシ』を確立させようと考えました。物販の話も進み、工場と提携しましてソースをOEMで開発しました。ハンバーグの加工食品のOEMも商品化が進んでいます。全国に『テッパンメシ』という名前を轟かせます。そのためにトライブライトと言うトライ(挑戦する)+ブライト(輝く)。〜輝く人生をあなたに贈るための挑戦〜という経営理念のままに、『テッパンメシ』というブランド名をそのまま社名に変更します。

これから時代は適者生存です。今回、新型コロナウイルスのせいで、予測できない事態が起こっても生き残ることを第一に考えるべきだと思いました。どんなことが起きても生き抜くこと、あきらめないことを学びました。時代の変わり目を敏感にとらえて時代に合わせた形に自ら変化していくというのが私のビジョンです。

取材協力:株式会社トライブライト

兵庫県西宮市甲子園七番町9-21

電話0798-61-2941

記事:スマイラー特派員
大橋一徳(テンポス西宮店)