上田よ、抜け出せよ 目を覚ませよ!

上田よ!
お前の今までの取り組みは、ずる賢い嫌な野郎だ!
目端を効かせて、いいとこ取りをして、テメエの手柄のように振る舞う最低の男だ!
ひたむきにやるのは馬鹿らしい、コツコツとやれない。
本人が知らないだけで、周りはみんなずるい男だと思っている。
ただお前は類まれな才能がある。
目端が効くから、テンポスのためになる仕事はなんなのか、見つけて、手が打てる。
なのになんだ今の生き方は!馬鹿野郎!
だけど、そこから立ち直った男がお前のすぐ側にいる。

俺はガキの頃から目端が効いて、自分が楽をすることを優先していた。
掃除をするときも、運動場の整備をするときも、手抜きをした。
分け前をもらう時には、一番良い位置を占めた。
大学の時にアルバイト先で、相変わらず手抜きして一人前にバイト代をもらっていた。
昼休みに同僚の「奥原」にこう言われた
「森下よ、いつもサボっ仕事してるようなふりしているが、それで何か得してるのか、そうすると嬉しいのか」
俺は 衝撃を受けた。
「サボったら得だ」と思っていたからだ。
夜 寮でよく眠れなかった。
「サボったら得なのか」この言葉が頭の中を駆け回る。
サボったら得なことは何もない、楽チンだと嬉しいわけでもない。
自問自答しているうちに、夜が明けていた。
俺は痩せていたから、寮で、鉄アレイで運動している。
だったら、土方をやるときも、運動がわりに、頑張ったって損なことはないじゃないか。
そこに行き着いた。
以来仕事で手を抜くことはなくなった。
会社をやるようになって、仕事は楽をしてはいけない、外注にやらせれば良いとしてはいけない。
人が嫌がること、大変な事に商売の元があると考えるようになって。
目端を効かせて儲けようとはしなくなった。
上田よ、俺と一緒に、黙々とやってみようじやないか。