武蔵と王貞治に観る鉄人

森下篤史

俺は経営者の端くれで、いつまでも発展途上と位置付けてきた。
志は千里を走るが、謙虚でなくてはならぬと思ってきた。
王貞治と武蔵を読むと、道を極めた人間の凄まじいまでのプロ意識、達人の意識を垣間見て、いかに、自分の道の求め方が甘くて、中途半端だという事が分かる。
謙虚である事と、発展途上だからいいやという甘えは、全く別のものである。

王貞治
基本的にプロというものは、ミスをしてはいけない。
プロは自分のことを、人間だなんて思っちゃいけない。
百回やっても千回やっても、絶対俺は出来る、という強い気持ちを持って臨んで、初めてプロと言える。

宮本武蔵 五輪書
太刀を手にするときは、「敵を切るためだ」と強く念じることだ。
実際に敵を切るときは、手の内に違和感がなく、手がすくまないような握り方をしなければならない。
戦闘で敵の太刀をうったり、受けたり、押さえつけたりする場面があっても、
「是が非でも相手を斬り倒す」と強く思いながら太刀を手にしないといけない。
構え方は五つに分かれてはいるが、その目的はいずれも人を斬るためであり、これら以外の構えはない。
どの構え方も、「構えていると意識せずに人を斬ることだ」と心得よ。

王貞治のような気持ちになったこともなければ、ましてや武蔵のように練習中にさえも「斬り殺す」凄まじいまでの、自己の精神の昇華。

2019年の大晦日に見つけた2人の鉄人。
俺にとって、これから10年、遥か遠くからこの鉄人の弟子になるべく、天よりの導きであると意識して、
だらけた1年を、捨て切って、来年のスタートとしよう。

ビジネスアスリート 森下篤史