閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声

森下篤史

豊田佐吉が、木製足踏み式の機織り機を作って50年、遂に世界一の性能のG1(特許40件)という自動織機を発明した。
木製足踏み式の機織り機とは、何百倍の性能の機械ではあるが、機織り機というカテゴリーの中の発明である。
綿を糸にするほどの発明では無いし、糸を布に織るほどの発明でも無いが、
僅か50年で発明、特許を重ねあげたG1は見事と言うほかはない製品である。
佐吉の発明にかけた50年は、没頭して、苦難を乗り越えた年月である。
松下幸之助しかり、本田宗一郎しかり、トップは、作ってはダメ作ってはダメを繰り返して、1日4~5時時間しか眠らないで、何日も続け、精も根も尽き果てて、諦めかけた時に神の声が聞こえる
「間も無くだぞー」
そこから更に、没頭を続けて、ある日突如ひらめいてくる。
こうやって1つ1つ、発明を積み重ねて、完成品が出来上がる。

テンポスは、販売業であり、サービス業で、佐吉の様な、試作を繰り返して、途方にくれる様な事はない。
そこのところが まだまだ 二流である所以だ。
どんなサービスを提供するか、そのサービスのグレードを如何に上げるか、
売り方をどうするか、顧客満足してもらうには、接客、商品、店作り、提供の仕方、集客方法
をどうすればよいか、
人の採用、活用、働き甲斐のある職場つくり、
投資家に対する価値の提供
やる事は山の様にあるにもかかわらず、俺は毎日6時間も寝ている、耳鳴りが聞こえるだけで「神の声」など聞こえるわけでもない。
経済界の巨人の領域に近づいてもいない。
その分伸び代は、物凄くあるって事だ。

静かな夜
向こうでは、女房のパソコンを叩いている音が聞こえる。
俺は耳の奥で蝉が鳴いている。
閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声 芭蕉

ビジネスアスリート 森下篤史