実録!飲食店火災 「何が起こった!?」(前半)

飲食店火災で一番の原因は「火元の放置」です。近年、飲食店から出火する火災が増えていると聞き、テンポスのお客様の協力を得て、飲食店火災はどのようにして起こり、店主はどんな苦労を強いられることになるのか、復活までのストーリーを特派員がレポートします。

《火災事故の概要》
●発生日時:令和元年8月17日11時20分頃
●発生場所:ラーメン店 厨房内
●状況:コンロにかけていた鍋から出火し、換気扇のダクトに付着した油汚れを通じて天井裏の配管に燃え移った。けが人はなし。ほぼ全焼。
●原因:アルバイト従業員が仕込みでコンロに火をつけたまま買い出しのため外出したため。
●影響:火災を起こした本店の従業員は継続雇用し、店主は営業再開に向けて迅速に対応した。その結果、火災からわずか一ヵ月あまりでリニューアルオープンを果たす。

外が騒がしいと思って外に出たら、自分の店が燃えていた

火災を起こした本店のすぐ隣がオーナーの自宅でした。火災発生時、オーナーは自宅にいました。外が騒がしいので外に出たら自分の店から大量の煙が噴き出していたそうです。「短時間でこんなに燃えるのかと思いました。ですからとにかく従業員のことが心配でした」

幸い、火災発生時はお客様のいない時間帯でコンロに火をつけたまま外出したアルバイト一人だったのでけが人はいませんでした。いち早く火災に気づいたご近所の方の通報で早めの消火活動が出来たことも幸いしました。

写真を見ると、エアコンが燃えて下に落ちているのがわかると思います。消防署の現場検証の結果、鍋からの火が換気扇の油汚れから天井裏の配管へと燃え移ったのが原因ということでした。オーナーに確認したところ、ダクトの清掃は定期的にやっていた(一ヵ月に一回程度)とのこと。にもかかわらず、なぜこんなことになってしまったのか。

被害の大きさに愕然となる

当初は、コンロ周りと天井部分だけの被害だと思われましたが、結局建物の外側は残し、中はスケルトンにしてすべて作り直すことになりました。痛い出費になってしまうので、使える機器は使いたいところでしたが、

①タテ型冷蔵庫は上部に機械が付いているので使用不可

②家具は燃えていないが、においが取れないのですべて使用不可

③熱機器(コンロなど)は煤がすごいが、清掃して点検した結果、使用可能

④厨房機器の多くは本体が無事でも電源コードが焼けて使用不可

⑤エアコンは焼失、配管からすべてやり直し

⑥券売機(リースではなく買取)は火元から遠いので大丈夫だと思われたが使用不可

結局、火より熱による被害の方が大きいのです。オーナーの店舗は火災保険に加入していたものの、“財物補償”は入っていなかったので、厨房機器や備品関係のほとんどは手出し(実費)になってしまいました。

飲食以外、やることないんで(笑)

少し落ち着いた8月下旬、オーナーに今回の事故を振り返っていただきました。まず火災を起こしたアルバイトに対して、どのようなケアを行ったのかを訪ねると「本人は相当ショックを受けていたみたいですが、僕の日頃の管理不足と意識が低かった結果だと思いました。」でも、日々の仕事の中で防災について意識するってなかなか難しいと正直思ったのでそのあたりを訪ねると、

「保険や防災のフロー、起きた時の対応策をあらかじめ準備していないと本当にダメです。後回しにしておくとゼッタイ痛い目に遭います。外注してでもやらなきゃだめです。」今回の火災事故は平屋の一階建てなので大火災にならなかったけど、これがテナントビルに入っている店舗だったら、と考えたら思わずゾッとした。

9月に入り、オーナーの段取りの早さとSNSに流れるたくさんの心配や励ましのコメントに後押しされてわずか一ヵ月あまりでリニューアルオープンにこぎつけたのです。今回の火災についてあらためてお聞きすると、オーナーがぽつりとおっしゃっいました。「火事で自分の店が燃えちゃって、自分が店に居たらこんなことにならなかった、そんなことばかり考えてたんです。実際そうだと思います。しかし、オープンして6年、あっという間でしたが、焼けてしまったことでいろいろ考えさせられました。それは店舗との関わり方、でした。」(後半に続く)

後半は、火災事故をきっかけでオーナーが気付いたこと、そしてお金の話(店舗火災による収支決算の全貌を一挙大公開)、そしてリニューアルに向けて大きな力になったお客様との交流などについてお伝えします。

*この記事は、同業者の教訓になればと言うオーナーのご厚意で掲載させていただきました。テンポスバスターズも微力ながらリニューアルに向けたサポートをさせていただきました。

記事:スマイラー特派員
杉山俊介(テンポス静岡店)