飲食店を儲かるようにする

ステーキのあさくまを立て直す過程で、つくづく実感したのは、飲食業の現場は、いわば格闘技で、スポーツの現場と同じということだ。

だから当初の俺の役割は、野球で言う監督だった。それも、相手に対する戦略を考えるような監督ではなくて、春のキャンプで若手を鍛え上げるトレーニング重視の監督だった。

店長をコーチにする、エリアマネージャーというコーチを作るために、彼らをトレーニングする。彼らの仕事は現場のスタッフをトレーニングすること。

売り上げアップとか、粗利率を上げようとか、人件費率を下げるとかは全て、話し合いとか意識付けではなくて、トレーニングなんだ。

ドラッカーに教わった目標管理とか、マネジメントとか、戦略思考など一つも使えない。

だって、野球の外野手に、フライの捕り方をどう教えますか? ピッチャーかまえと打者のスイング、風力、風向、気圧を考えて、こう捕れと教えるのが、ドラッカー流のやり方だよね。

顧客のニーズを捉えて、顧客を創造せよ。

その上で戦略を立てよ、優先順位をつけて、動機付け、やる気を出させる。 全て役に立たない。そんな事を教えたって、フライは捕れるようにならないでしょう?

とにかく、カンカン、ノックを打って、外野手に体で覚えさせる。ボールがこう来たときには、何も考えなくても、適切に体が動くまで、トレーニングしないとダメだ。ピッチャーのかまえとか打者のスイングとかを見て、外野手が自分の立ち位置を判断するのは、必要ない。

客がコップを割って、水に濡れたら、判断しないでおしぼりを持って行き、考えて物を言わないでとっさに「お怪我はありませんか」といえるようにする。

判断や分析は、フライをきちんと捕れるようになってから、考えればいい。