実家(天竜の支流)で冬支度。
果樹、庭木の剪定。村の上のほうから、三石の、お婆が、降りてきた。
俺が高校の時から、ずーッとお婆だ。
「お婆ちゃぁ、上の村に何しにいってきたぁ?」 お婆の家は村の下にある。
「娘の嫁ぎ先があるもんでよ」
「何しにいってきたのよ」
「茶の木のせんていよ」
「茶の木の剪定なんて、お婆ちゃ 元気だねぇ」
「そいでも、わしゃぁ、最近つらいよう」
「なにがつらいだいねぇ」
「物忘れをするようになっちまってよ」
「物忘れって、お婆ちゃ、いくつになっただいね」
「今年で、97だがいね」
東京に戻って。
「昨日、一昨日と実家で、百姓してきたよ」
社員「なにをするんですか」
俺 「まあ、庭木の剪定、茶の木の、肥料やり、だなぁ」
社員「ご飯は、どうするんですか?」
俺 「畑に植わっているもんを、食うのさ」
社員「食べたものは、肥料ですか?」
俺 「当たり前だよ」
社員「エロジジイですねぇ」
俺 「エロ爺とは何だ、このやろう!」
社員「そんなことは、言ってません」
俺 「言ったじゃないか、このやろう」
社員「エコロジー、と言ったんです」
俺 「そんなものぁ、おんなじだぁ、このやろう!」