頭にくる。

道路に倒れた人がいた
車を止めて、抱きかかえ、危なくない所に移動した。
心筋梗塞か、脳梗塞のようだった。
連絡がうまくいって、その人は助かった。
ヤレヤレと思いつつ、車に戻ると、駐禁の張り紙を、貼り終えたおじさんが、帰ろうとしているところだった。
間に合った!
おっさんに、事情を話してみたものの、ハナから聞く耳を持たない。
「命を助けたのに、あんたは、その価値を認めないのかよ!」
「私は、駐禁取締係りですので、詳しい事はわかりませんから。」
「だからあ、詳しい事情を説明してんじゃないか、」
「事情を説明されても、困るんです」
「命を助けたんだよ。分かってて、紙を貼るのかよ!」
押し問答の結果、おっさんの、頑なな態度に腹を立ても、結局は、罰金は、払う羽目になる。

「おっさんに怒るのは、間違ってんじゃないか」
「説明すれば、罰金にならないかもしれない。」
「怒鳴りまくっても、駐禁を貼られたら、おっさんに捨てゼリフを浴びせるのか?」
「頭には来ますよ」
「おっさんには、脳梗塞の、寝たきりの、嫁がいて、仕事が無く、職安に、2年間行って、やっと見つけた仕事。其のおっさんを、罵倒して、悪態をつくわけ!」
「寝たきりデスかぁ、辛いものが有りますね~」
「おっさんにしてみると、罵倒されるような悪い事をしたのか?」
「事情を聞いたら、分かってくれそうなもんだと思う」
「やっと見つけた仕事。研修を受けると必ず言われるよ。
駐禁取締係りは、絶対に、貼り紙を、貼ったり、貼らなかったりしてはいけない。一回でもそんな事があったら、その日からクビです。其のおっさんに、文句をいう事が間違ってるじゃないのか。
事情を説明したら、勘弁してくれると思う方が、間違っているんじゃないか」
「解ってくれないから頭に来る」
「分かりました。良い事をしましたね~。駐禁は、駐禁ですよ」
「それなら、いうだけ言って、解ったと言って、警察にいきます」
「何のために言うだけ言うんですか」
「頭に来るからです」
「おっさん相手に、頭にきたってしょうがない。其の整理がついてないから、動物と同んなじで、反応してるだけじゃないか!」
「うーむ」

寒い日曜日。家族4人で、ショッピングセンターに出掛けた。途中から、雨混じりのミゾレが、降って来た。
郊外に、イオンが、デカーイショッピングセンターを作った。2000台の駐車場は、2時頃来ると、えらい遠いところになっちまう。
幸い12時頃出たので、遠い所におかずにすみそうだ。
駐車場に着くと、ラッキー! 入り口の所が空いている。まるで横付け。
切り返し無しで、一発で入った。雨にぬれないし、家族は、一瞬幸せに浸った。直後!
「車を移動して下さい。ここは、身障者用です」
「直ぐ出てくるから」
「困ります!動かして下さい!」
語気が荒くなってきた。
「5台も有って、全部空いてんじゃないかよ!」
「動かして下さい!」
午後から雨。の予報のために、既に駐車場は、一杯。
Aゾーンはだめ、B C D E全てだめ。ズーッと離れたJゾーン。
小走りで来たので、足元は、ビショビショ。髪も上着も濡れてしまった。
入り口に着けた車から、茶髪が走って中に入って行った。ガードマンの見ている前で!
靴が濡れて、やけに冷たい。ガードマンに向かって、怒鳴った。
「なんだこの野郎!俺たちは、4人が濡れちまった。茶髪の小僧が一人で入って行った。ここは、身障者用じゃないのかよ」
ガードマンが、モゾモゾ言うのを遮って、一気呵成に、啖呵を切った。
何時も冷ややかにしか見てない女房も、珍しく、そうだそうだと、うなづいている。
調子に乗って、益々声が大きくなった。
そこへ
先程の茶髪が、手押しグルマにバーさんを載せて、買い物袋をつる下げて、出て来た。
ばーさんは、抱きかかえられて車に載せられた。
わずか2分前の怒りは、誰に向かって、何を怒っていたんだろう。?

我々 発展途上の、凡人は、目の前の、現象に怒る。
親子、兄弟、友人。この一ヶ月にあった、気分を害したこと、頭に来たことを、振り返って、
誰に怒っているか、何のために怒っているかを、相手を責めるだけの立場で無く、
「許す」
ナカナカ出来ることではないが、この練習をすると、確かに、怒りの向け方が変わってくる。