店を閉めることは”悪”じゃない

今回、株式会社Home Agentは不動産が本業ですが、今から3年前飲食事業も始められました。きっかけは、“すすきの”のど真ん中、非常に好立地な希少物件を専属でリーシングを行っていたところ、レイアウトの問題などで契約を見合わせるケースが続き、必要な設備もすべて整っていることもあり、自社で飲食事業を始めることにしました。

不動産の会社が自ら飲食事業を経験する

株式会社Home Agent様は、飲食で開業したいお客さまに物件の良さを伝えるだけではなく、他社とはちょっと違う、一歩踏み込んだリーシングをされるのが特徴です。と言うのも不動産業なのに(と言うと失礼ですが)飲食の勉強会に参加するなど、常日頃からアンテナを立てていらっしゃいます。だから自ら飲食店を経営することは、ある意味必然のことだったと思います。細木さんは「成功すれば自分たちが提案してきたことが正しかった、という裏付けになりますし、より自信を持ってお客さまにご提案出来ますからね。」とおっしゃいます。

コロナの影響

不動産に携わっているHome Agentにはいろんな店舗の情報が入ってきます。そういうメリット以上に、実際に店舗を経営することで知識ではなく生の情報が得られることが大切、というのは我々テンポスも全く同感です。

「ウチの居酒屋は日中、喫茶店として違う店名を掲げて営業しています。内装もカーテンとか装飾品で簡易的にイメージを変えています。最近取り組み始めたテイクアウトは、まだ収益といえる程ではありませんが、市場の流れだとか、現場から得られる情報はとても貴重です。率先して自らの店舗で実行することで、本業の不動産のお客さまにフィードバックできる、そういう連携をとっています。」

一般の不動屋さんと違って、自分たちで飲食をやっていると知識の話ではなく自分たちが体感したことをお客さまにお話できます。当然、お客さまへの説得力も違ってくると思いました。

喫茶ひかり

コロナで苦労されている同業者へのアドバイス

思い切って、コロナでどん底の同業者に今、どんなアドバイスをしているか聞いてみました。すると、

「どこまで続くかに関しては全く明言できないのですが、一つは今までと違う動きをしてみてはいかがでしょうか。するといままで届かなかったお客さまに知ってもらえるかもしれません。例えばSNSを強化し、ネット上での露出頻度を上げてみる。そんな普段できないことを今やっておけば、通常に戻った時に、より強い状態でスタートできるのではないでしょうか。」

食べスタ酒場

コロナで心が折れそうな人へ

「次に、気持ちの面で言うと、まず時機を見定めたうえで、一旦店舗を手放すという選択も一つの手です、とお伝えしています。店を閉めることは「悪」、いったん店を手放してしまうと一生飲食は無理なのでしょうか?そんなことは無いです。マイナスなイメージに駆られて、状況を重たく考えすぎている人に対して、それは悪ではない、と言いたいです。

一度、店舗を手放すと考えてみてください。すると、これをやってみたかった、とか。もしかしたらこんな事も出来たかもしれない、とか。柔らかい思考で考えられるようになります。」

正直、細木さんのアドバイスはすごいと思いました。このような話が出来るのも不動産業でありながら飲食店を経営し、コロナで毎日苦しみながら店の経営を続けている細木さんの話は貴重です。後になって「あの時、あれをやってればよかった」とならないためにも、今は思考を変える時なのではないでしょうか。

今、ギリギリのところで頑張っている方へ

さらに細木さんの話は続きます。「遅かれ早かれ、状況は変わります。それが10年かけてなのか、それとも今回のように突発的で強制的に変わらざるを得ないのか。飲食を長い商売として考えられている人は、今までやってなかったこと、やりたくても出来なかったことを考える絶好のタイミングだと思います。あらためてどんな飲食店をやっていきたいのか、それともそこまでのリスクを負うのであれば料理に専念したい、とか。不本意ですが、今起きていることから目を背けずに自己分析すること。それがこれからの時代を生き抜く力になるのではないでしょうか。」

取材協力:株式会社Home Agent
店舗名「北海道地酒とすすきの焼鳥のお店 食べスタ酒場」
場所:北海道札幌市中央区南4条西3丁目2-3第32桂和ビルB1F

特派員:阿川 智希(札幌白石)