―山本社長
ヒッシーさんお久しぶりです。
―日紫喜社長
お〜、プーさん久しぶりですね。
―司会
もともと、お2人の出会いは何ですか?
―山本社長
知り合ってもう2年くらいですかね。当時、私が今一番会いたいと思っていた社長NO.1が日紫喜社長でした。「魚真」から独立されて、精力的に店を展開していた社長に憧れていたんです。それで、日紫喜社長が新橋で店を出すと噂で聞いて、それでオープン時に挨拶にいったのがきっかけです。
―日紫喜社長
それからは、バイク乗ったり、麻雀したり、悪いことばかり一緒にしてますね(笑)
―司会
なるほど、仲の良さが伝わってきます。この1年間振り返っていかがですか?
―日紫喜社長
デリバリーもテイクアウトも、いろいろやってきましたが、どれも利益は雀の涙・・・。でも、その中でも勝機をみいだせたのが、原宿店での店頭魚販売です。豊洲に行って、飲食店の営業用とは別に魚を仕入れて、それを店前で並べて売るんです。近くに魚屋がないので、出してみると需要がすごく高くて。で、それなら本格的にやろうと、この1年間試行錯誤しながら、今の形になりました。
―山本社長
どんな仕組みなんですか?
―日紫喜社長
毎朝仕入れた魚の写真と値段をLINEのオープンチャットにアップしています。今、283人の登録があるので、アップしたら、注文が入ってくるという流れですね。三枚下ろしの要望にももちろん応えるし、居酒屋もやっているから、手巻き寿司のメニューでも出してますよ。
―山本社長
まさか、日紫喜社長がLINEを使いこなしているとは。
―日紫喜社長
LINEの営業マンと仲良くなって、グイグイいって教えてもらったのよ(笑)
でも魚屋をやってみて、こんなに大変なんだということも分かった。魚を売るだけなら薄利多売で儲からないんだよね。店というインフラがあるから、できるビジネスだと思う。
―司会
山本社長のところはどうですか? この一年間を振り返って
―山本社長
昨年5月頃、和食40年の経験がある職人の方を雇用しました。その方は特別な給与体系にして、従業員向けの料理研修もしてもらっています。うちの社員は魚の知識とかスキルはあるのですが、野菜一つにしても、その活かし方だったり、そういうのが弱かったんです。だからいろいろと教わっているところです。
―司会
従業員の料理の技術力に課題を感じていたということですか?
―山本社長
いえ、少し意味が違いますね。私は、「料理」とは、人を喜ばせる一つの手段だと考えているので、これまで職人さんを雇ったことがありませんでした。というのも、「職人」より も「商売人」を育てたいと思っていたからです。でもコロナになって、様々なことを考える中で、原点に戻り「美味しい料理を出す」ということに磨きをかけていこうと思ったんです。魚という武器は変わらず、卵焼き一つにしても、本物を提供していこうかと。そしてお客様に喜んでもらいながら、しっかり稼いでいきたいと考えています。
魚って、結局何が美味しいの?
―司会
お2人は魚の仕入れはどうされていますか?
―山本社長
私は毎朝、豊洲市場に行って自分の目で見て仕入れています。楽しいですよ。市場に行って仕入れて、それを配送業者さんにお願いして店まで運んでいる形です。
―日紫喜社長
うちは、飲食部門は山本社長と同じで、豊洲に行って配送は業者さんにお願いしています。でも、魚屋の方の仕入れは、自分のトラックに積んで配送まで自分でやってます。
―司会
素朴な疑問なんですが、やっぱり産直の方が美味しいんですか?
―山本社長
もちろん、産直で良いものがあるのは確かですが、だからといって、市場の方が“悪い”とはならないですね。今は物流も発達しているから、その点で鮮度によって美味しさが変わるというのは、ほとんどないのでは? むしろ、新鮮じゃない方が美味しかったりする場合もあるんですよね。
―日紫喜社長
そうそう。大きい魚とかは新鮮じゃない方が、美味しかったりするよね。だから新鮮にこだわる意味もなくなってしまうというか。今は熟成が流行っているくらいですからね。「新鮮=美味い」が、消費者に刷り込まれているから、飲食店も“新鮮”を売りにしないと、というのはあるかもしれませんね。
―山本社長
釣り好きの界隈では、魚は血抜きが大事ということで、完全に血を抜く方法が注目されていますが、これも賛否両論あって。血を抜きすぎると雑味というか、旨味も一緒にでてしまうんですよ。抜きすぎると、あっさりしすぎちゃうというか。
―日紫喜社長
僕も魚屋で働いていた時は、親父さんから「血だけは徹底的に洗ってくれ」と言われ、そうとう血を洗った経験はあります。血を抜くと、臭みのない良い状態で保存できるから。でも、僕個人は、山本社長と一緒で、血を抜きすぎると旨味も抜けてしまうなという感覚です。
―山本社長
血合いがあった方が美味しかったりするんですよね。ブリなんかそう。
―日紫喜社長
少し悪い男の方が魅力があるみたいな、それと一緒ですよ。
今後はどう考えているのでしょう?
―山本社長
飲食以外のことも考えてはいますが、実際、自分が飲食以外をやりたいとは全く思えなくて。今は本当に内部強化に注力しているところです。あと、勉強という点では、「羽田市場」さんに注目してます。APカンパニーから独立されて、各地の市場を通さず、飛行機や新幹線を使って産地に適した方法で、ダイレクトに配送するなど、とにかく奇抜なんです。通販もすごいですね。
―日紫喜社長
僕は思いついたことは、まずは何でもやっていきたいですね。思い立ったらやらないと気が済まない性格でもありますし。最近は、代々木八幡店でスナックの二毛作を始めたり、いろいろ実験しています。2年後には融資の返済も始まるので、今よりもっと黒字にしておかないといけないですから。やってだめならやめればいいし、今はとことんチャレンジし続けていきたいです。
取材後記
好きこそ物の上手なれ。対談中、魚の話になると目が輝き、饒舌に語る2人の経営者。飲食店経営者仲間のツーリング、ゴルフ、食べ飲み歩きなどにも積極的に参加。良き情報交換の場でもあり、ストレス解消にもなると語る。とはいえ、少し話が脱線すれば時折、経営者の顔から、ふと青年のような笑顔に変わるのが印象的だった。仕事に遊びに全力投球。この2社の強さは、どうやらここにあるようだ。
◇株式会社 フィッシュウェル
代表取締役 日紫喜 智
取材協力:魚屋 眞吉
東京都渋谷区神宮前2-19-16 ☎︎03-3401-3917
株式会社 フィッシュウェルは現在、「魚屋 眞吉」を併設する、ここ神宮前店をはじめ「魚まみれ眞吉」を都内4店舗。新橋に「すし屋眞吉」5店舗を展開。この程、二毛作の第2弾として「魚屋 眞吉」代々木上原店でスナック「紫喜(しき)」をスタートさせる
◇株式会社FF.a
代表取締役 山本 怜
取材協力:酒とさかな うなり 虎ノ門
東京都港区西新橋1-21-1 サンクレスト弐番館1F ☎︎050-5487-1645
「海鮮大衆酒場ル うなり」本店を東京・王子に構え、虎ノ門、経堂、大宮に展開。コロナ禍真っ只中の、2021年4月に「食堂うなり 日本橋小伝馬町」をオープンさせる。看板メニューの刺盛りをはじめ、「名代生アジフライ」などちょい飲みニーズにも応えている