昨年9月、私の背中の広範囲にぶつぶつができて、まだらに赤くなった。痒いのなんの。自然に治るような代物でもなさそうだったので当然皮膚科に行ったのだが、ドクターに「毛虫ですね」と言われ拍子抜け。心当たりがなかったので妙に腑に落ちない感じだったのを覚えている。たぶんチャドクガという毛虫だろうとのことであった。
自宅に帰って植木を調べてみると、いるわいるわ、隣家との境界にある椿の葉に1cmちょっとの毛虫がビッシリと。そんな状態の葉っぱが20枚くらいあったであろうか。スマホで調べてみると、ドクターが言っていたチャドクガの幼虫だった。0.1mmにも満たない毒針毛というものが1匹あたり10万本単位で生えていて、直接触れなくても風で飛んできたりするらしい。服を着ていても関係ないそうだ。子どもをチャイルドシートに乗せるときに葉っぱに触れる可能性があるので、その時に食らったのだろうという結論をもって現場検証を終えた。
私から見ればこのドクターはマジシャンか予言師くらいに思えたものだ。そう思えた理由は問診にある。
とにかくいろいろなことを聞き出すのが上手なドクターだった。見れば毛虫だろうと分かるのだろうが、聞き出した答えから、きっと頭の中で他の可能性をどんどん排除していったのだろう。痒みはどれくらいか、庭仕事をしていなかったか、ぶつぶつに気づいたのはいつか…。患者のことをしっかり理解しようとするドクターだった。皮膚トラブルを抱えたら真っ先にこの先生のところに来ようと思ったのは言うまでもない。
もし町医者が人気商売ならば、あの丁寧な問診だけで上位人気を獲得することができるだろう。診断や処方という結果ではなく、ポイントは相手を知ろうとするための問診の質だ。どこのドクターが診ても似たような診断をするはずだが、患者側に「自分のことを丁寧に知ろうとしてくれている」と感じてもらうことはそのまま「信頼」につながる。
飲食店でも同じだ。お客さんの本音を知ることができれば、理論上、売上はどうにだってコントロールすることができるはずだ。食事しに来てくれるお客さんで終わるのではなく、今後のお店の行方を左右する情報源としてのお客さんにもなる。コロナ禍で客層が大きく変化しているお店は多いだろうし、そもそもお客さんの外食に対する考え方も以前とは異なる。これを機に一旦、お客さんの考え方や意見を聞いてみる機会を作ってみてはどうだろう。
方法はシンプルにアンケートでよい。ニーズや意見、今後のヒントになるような情報を書いてもらうことが目的なので、開かれた質問でビッシリと回答してもいいくらいのスペースを提供しよう。お願いすることと引き換えに、当日使えるサービスも提供する。例えば「食後ドリンク1杯無料」などだ。意見や感想を真剣に活かそうと考えてくれているお店なら、そこに信頼関係も生まれ意外としっかりアンケートに答えてくれるものだ。
アンケートには今後へのヒントがたくさん書かれている。100人から回答をもらえれば、自分のお店に何を期待して来店しているのかおおよそ読み取れるだろう。医者の問診と同じく、お客さんの声をたくさん聞いて「期待に応えてくれているお店」になることができれば、濃いリピーターが後からついてくることだろう。
話を戻すが…、毛虫のいたずらは眠れないほどの痒さをもたらした。自宅に椿の木がある方は、一度入念に葉っぱの裏側まで調べてみていただくことをオススメしたい。
記事執筆
代表取締役 田中 良平
集客やビジネスモデル構築を強みとする。飲食店のチラシやPOPなどを格安定額制で丸投げできる「助太刀丸」を運営。