クリスプ・サラダワークスが「オンライン接客」を始めた理由とは

カスタムサラダ専門店を都内17か所に展開するのは株式会社CRISP。8月31日にオープンした「CRISP SALAD WORKS(クリスプ・サラダワークス)三軒茶屋店」は、オンラインを活用した接客を取り入れている。クリスプのオンライン接客とはどのようなものなのか、またその狙いとは、同社の代表取締役、宮野浩史氏にお話を伺った。

コロナで変わる接客意識

「クリスプ・サラダワークス」はオリジナルサラダ8種類の他に、サラダベース3種、トッピング24種、ドレッシング10種の中から好みのものをカスタマイズし注文するカスタムサラダ専門店だ。

“カスタムサラダ専門店”というと女性客がターゲットのように思えるが、実際には男性客の利用も多い。日曜日の14時、「クリスプ・サラダワークス 恵比寿店」に行くと、20席の店内はほぼ満席で、そのうち男性客は7名。男性の1人客や男性同士の来店も多いようだ。

―宮野氏

「“美味しいものを食べに行きたいな”と思った時に、クリスプが選ばれる店でありたいと考えています。食事制限のために仕方なくサラダを選ぶのではなく、日常生活の中で“ご褒美”となるような食事を提供したいなと。だから素材一つ一つ手作りにこだわるし、ボリュームにもこだわっています。うちのサラダは男性でもお腹いっぱいになりますよ。PRするときも“ヘルシー”という打ち出し方は一切しません。食べ方はお客様の自由!たっぷりドレッシングをかけてもいいし、チーズを大盛りにしてもいい。自分の好みにカスタマイズして食事を楽しんもらいたいですね。」

リアル店舗の意味ってなんだろう

8月31日にオープンした「クリスプ・サラダワークス 三軒茶屋店」を訪ねると、入り口で「こんにちは!」と声を掛けられた。声の先を見ると、高さ1mほどのロボットが筆者を見ている。ロボットといってもペッパー君のような人型のロボットではない。自走式のロボットではあるが“顔”の部分にタブレットがついており、その画面にスタッフの顔が映し出されている。映像はリアルタイムでスタッフルームや、スタッフの自宅と繋がっているため、お客様が店前を通ると「どうぞ、いらっしゃいませ!」「カスタムサラダ専門店です」とスタッフがロボットを通してお客様に声を掛ける。反対にお客様から声を掛けることも可能だ。音声が遅延することもなく、なんら普段のコミュニケーションと変わらない。三軒茶屋店ではこの自走式ロボットと店舗勤務のスタッフが接客を行っている。また、店内の大型ディスプレイには厨房が映し出されていた。厨房と店内は常時ZOOMで繋げており、普段は調理風景を映しているが、今後はライブ配信にも取り組む考えだ。

「コロナにより、世の中は室内で話すことや、人との距離感に神経質になり、声を掛けるスタッフも、声を掛けられるお客様側も気を使うようになってしまいました。そこで対面での接客が気になるお客様にも満足して頂けるように非対面で接客を受けられる「オンライン接客」を始めたのです。飲食店がECやデリバリーで販売チャネルを増やすのと同じように、店内での接客方法もお客様に合わせて変化していく必要があります。」

現金決済では「クリスプ」が目指すビジョンを実現できない

経営理念に“熱狂的なファンを作る”を掲げる同社が重視する経営指標は「ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)」だ。これは顧客が飲食店を利用し始めてから終了するまでの期間にその顧客がどれだけ店を利用し、どんな商品を買い、どれくらい支払いをしてくれたかを計算する指標である。

「売上や人時生産性を経営指標にしている飲食店は多いですよね。でも僕はその指標は間違っていると思うんです。飲食店で大事なことは、いかに顧客体験を上げリピートに繋げられるかどうか。そしてそのリピート率を上げていくためには、ライフタイムバリューの観点から何をしなければいけないかを考える必要があります。」

顧客体験を上げていくために必要なことは何か。それは「相手を知る」ことだと宮野氏は話す。

「“熱狂的なファンを作りたい”と僕たちが思っていても、どんなお客様かも分からない相手には何もできません。そのため、お客様の属性や購入データを知る仕組みが必要です。私たちはその手段の一つとして、モバイルオーダーや完全キャッシュレス決済を取り入れています。」

2014年に1号店をオープン後、2017年にモバイル事前注文アプリ「CRISP APP」を導入。2018年には完全キャッシュレス化の店舗をオープンする等、テクノロジーを積極的に取り入れてきた。

「僕たちがシステム化にこだわる理由は、生産性向上のためでも人件費削減のためでもありません。1つは、スタッフの時間を“作業”ではなく、お客様とのコミュニケーションに集中させるため。もう一つは、お客様を知るためにデータを集め、得た情報をもとにお客様に還元するためです。そのため、情報を得られない「現金決済」では僕たちが目指す“熱狂的なファンを作る”を実現できないのです。目の前の売上・予算を達成するためではなく、どうすればもっとお店に来てくださるか、それは接客なのか、メニューなのか、空間なのか。“熱狂的なファンを作る”、これをお題目で終わらせることなく、必ずや達成する想いでお客様の顧客体験の向上に励んでいきたいと思います。」

取材協力

株式会社CRISP

代表取締役、宮野浩史氏

東京都港区麻布十番1-5-6 2F

記者:スマイラー特派員
乙丸千夏(テンポス広報部)