創業30年。ピンチを救ってくれたのはお客様だった

「安い・美味い」で30年。早稲田の大学生が青春を過ごす居酒屋「わっしょい」のピンチに、予想を遥かに超える支援者が集まった。コロナの影響を機に5月7日に開始したクラウドファンディングは、わずか36時間で目標金額の1000万円を達成。6月1日現在、2000万到達も目の前だ。でも、なぜこんなにも「わっしょい」のクラウドファンディングは成功したのだろうか?取材をしたところ、そこには学生街ならではの縁が生み出した温かいパワーが溢れていた。

創業は1988年。集客のためにと半ばやけで始めた「中ジョッキ100円」がヒットすると地元客と学生を中心に徐々に客足を伸ばしていった。その後、隣のフロアを宴会場として運営を始めると、一気に学生の団体利用が増えという。今ではすっかり早稲田学生御用達の店として愛用される繁盛店だ。

そんな同店も新型コロナウイルスの影響を受け売上は8割減となった。通常、4月は歓送迎会予約が多く年内で一番売上が高い月だ。本来ならば学生の夏休み期間の売上を補填するほどの売上をあげなければならないところだが、今年は自粛要請によってそれができなくなった。現在、ビル内の1階、2階の4フロア(計150席)を賃貸契約しており、収入が途絶えたままではもはや経営が立ち行かない。そこでピンチを救ってくれたのがクラウドファンディングだった。

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始まりは何気ないTwitterへの投稿だった

ある日、「わっしょい」の社員である今村さんは、店内がガラガラの様子をTwitterにアップした。すると常連客から心配するメッセージがいくつか届いたという。「大丈夫ですか?店内の写真をオンライン飲み会の壁紙として1枚500円で販売できるサイトがありますよ。使ってみてはいかがでしょうか?」等、店を気遣う連絡がほとんどだった。実際に、写真をSNSにもアップしてみたところ、思いがけず反響は大きかった。販売目的ではなく、単純にお客さまとの交流を目的にアップしたのだが、「さっそくオンライン飲み会で使ってみた!」「懐かしい、最高すぎる」、そんなコメントといっしょに投稿は瞬く間に広がっていった。

クラウドファンディングも常連客の一人から教えてもらったものだ。その常連客は、以前オリジナルTシャツを制作してくれたデザイナーで、今回もリターン品(クラウドファンディングのお礼の品)のグッズのデザインも買って出てくれた。また彼の友人で「わっしょい」の常連客だった男性は、1千7百万円のクラウドファンディングの仕事をした経験があるという。そこで、「わっしょい」の社長と今村さん、常連のお客様2名の4名でプロジェクトをスタートすることにしたのだ。

クラウドファンディング、成功のカギは絆をカタチにすること

リターンの内容を決める時は、とても悩んだという。周囲のお客様からは、「今は大変な時期なんだから、返礼品はほどほどに資金を援助してもらう形に徹した方がいいよ」そんな声もたくさん頂いた。しかし、頂くだけでは申し訳ない。何か喜んでもらえる方法は無いものかと悩みぬいた結果、資金援助のみのリターンを設定しつつも、食事券やグッズ等様々な返礼品を用意することにした。金額も、3千円~1万円のものを主軸に、500円と少額から支援できるものもある。珍しかったのは「木札3万円」のリターンだ。木札に支援者の希望の名前を彫刻し、店内で無期限に掲示するというものだ。卒業して店には行けないが応援したいという想いがカタチとして残るから、既に138名が購入している。驚くことに、「わっしょいドリームチケット100万円」を購入したのも学生OBだった。若い頃お世話になったお店に恩返しがしたいと、有志が中心となって、同級生や知人、同じサークルの仲間で、100万円のリターンの購入に至ったという。

今回、取材に協力して頂いた、今村浩祐さんは、

「今まで、単なる“店”と“お客様”ではなく、その垣根を超えた関係を築けてこれたからこそ、こんなにも応援して頂く結果になったのではないかと思います。皆様にとても感謝しています。まだ予断は許さない状況ですが、諦めずにしっかりと取り組んでいきたいです。」

取材協力

大衆酒場 わっしょい
今村 浩祐氏
東京都新宿区高田馬場1-3-13 2階

Twitterアカウント▶

TEL:03-5273-0267

記者:スマイラー特派員
乙丸千夏(テンポス広報部)