飲食業界に飛び込んだのは16歳。右も左も分からない中、ひたすらに腕を磨いた。「千切りの太さが違うと師匠に目の前でゴミ箱に捨てられるんです(笑)当時は師匠が恐ろしくて恐ろしく、何が正解なのか分からないけどがむしゃらに働いていました」と当時の様子を笑いながら話すのは、炭火焼鳥吉平の代表、上田貴史氏。ここでの修行や、チェーン店でマネジメントを学んだ後、10年12月、26歳で独立開業を果たした。
1号店はロードサイド。1階と中2階で56席での開業だ。オープン景気で初年度は売上げは良かったが、2年目で落ち込み、3年目で立て直すも横ばい、ようやく4年目で軌道に乗ってきた。売上が伸び悩んだ時期を乗り越えられたのは、開業当初から一貫して、アルバイトが意見を言いやすい環境づくりを意識して取り組んでいたからだ。基本、アルバイトとは呼ばず、社員と同じ仕事ができるという意味を込めて、準社員と呼んでいる。週に一度と月間に一度、全員を集めミーティングを行い、今月の売上、経費、利益、今月あといくら売らないといけないのかを伝え、どうしたらいいのか意見を交換していた。人件費が高い時は、準社員自ら「私、シフト減らします」と言ってくる。売上が足りなければ、チラシを配りに行くし、準社員の友達を呼んできてもらう、接客中の掛け声を変えてみる等、準社員を巻き込み店を盛り上げてきた。
しかし、準社員に意見を出せと言って意見を出せるようになるまでは時間がかかったと話す。そこで、準社員が働いている中で小さな成功体験を増やすように上田氏は常に意識していた。「ほんのちょっとしたことでも褒める」、それを繰り返すことで、準社員の自信にもつながり、自ら意見を言えるようになっていったという。しかし、そもそも働くことに対して意欲がなければ、褒めたところで意味はない。そのため、仕事に関係なく、準社員全員に、仕事に関係なく「何歳までになにをやりたいのか」個人の目標を書いてもらい控室に貼り出し、仕事のモチベーションにさせていた。各個人の目標と仕事をリンクさせて、目標が達成できているかどうかは、週間ミーティングでチェックをした。具体的には、メール会員を500件獲得しようという目標を立て、達成すれば次は1000件、1500件へと目標を高くしていく。地道に数を増やしていき、2年間で1500件メール会員を獲得できた。その会員には平日の夜2日間限定、ドリンク半額などを配信した。販促の時だけくるお客さんもいるが、それはそれでよしと考え、メール販促は今でも続けている。
15年8月に2号店、16年2月に3号店を立て続けにオープン。2号店は元中華屋のスケルトン物件。思いがけず清掃費がかかり、当初の予算オーバーだったが、勢いを止めず2店舗目を出店。1店舗から一気に3店舗となり、上田氏自身がスタッフを直接指導するのではなく、各店の店長がスタッフを育てていくという点で新たな悩みもでてきた。一年目の店長がアルバイトをどう巻き込み、店を盛り上げられるか、見守りたいと話す。
今後の展開を伺うと、「ちょっと休憩。しかし、今後、愛媛県から出たい、本州にトライしていきたい」と意気込みを語ってくれた。
炭火焼鳥 吉平
愛媛県松山市東石井6-11-12
089-905-2998
Smiler31号