大西の寿司の食い方

福岡空港で2時間もある。
大西は那覇行きが8時10分
俺の羽田行きは8時00分
昼間は先月に続き、長浜ラーメンに替え玉喰って、カロリーは900を超えてる。
晩飯は「抜き」と決めていたが、大西の貧相な顔を見ていたら、この野郎に寿司でも食わせてみようとして「大西!2時間もあるんだから、晩飯でも食ってくか、腹一杯か」
「晩飯でかぁ、ペコペコですっ」
如何にも腹が空いてるって風に、腹式呼吸で言いやがる。
そんなにすいているなら、「寿司食ってくかい」
「エッ寿司ですかっ、いいですかっ」
「いいですかって言ったって、自分で払えよ」
途端に大西のがっかりした顔、こいつは、嬉しいにしろ、悲しいにしろ、身体中で表現する野郎で、その顔見てたら「大西!寿司喰わせてやる」
「エッ本当ですかっ」

飛行場の寿司屋は、高そうでまずこんな店では食う事はないような所。
並だったか、下だったか1380円もする。
カウンターに並んでと思ったが、大西は遠慮して一つ空かして座った。
なかなか遠慮深い野郎だ。
ホタテとみる貝を2貫づつ食った。
大西は遠慮してまだ一つも注文してない。
「遠慮してないでどんどん喰えよ」
「いいですかっ」
「板さん!こいつに、安いとこズラッと並べてやっくんな。」
「何にしましょう」
「かんぴょう3本」
「済みません、かんぴょうないですが。」
「大西!てめえで注文しろ、こんなとこまで来て、世話ぁかけんじゃないよ」
「グループ長、赤貝いいですかっ」
「いちいち聞くなっつうの」
「赤貝!」
「大西!一貫づつ頼まないで、二貫づついけ!」
「はいっ」
大西は、赤貝如きを一口で喰わないで、半分口にいれたら、目ぇつぶって、下向いて、
深~い息はいて、「ウーン」
「大西!詰まったか」
「うーん、美味いっすっ」
もう一口喰っては下向いて息はいて、「うーん美味いっす」
本当に感激したようにして唸りながら食っている。
「車海老の踊り喰っていいですか」
「駄目だ馬鹿野郎!ただのエビにしとけ!」
「何だその情けない顔は、板さんこの野郎に車海老の踊り2貫!」
「グループ長!この海老、ピクピクしてますよ。」また一口いれてうーん
「あのう、写真とっていいですか」
「どうぞ!」
車海老を撮っている、手間のかかる野郎だな~はしはし喰えばいいのに。
「グループ長の食べてるとこ撮ってもいいですか」
「構わんよ」
俺も赤貝を頼んだ。二貫喰って、「大西!写真撮ったか?」
野郎、未だ車海老をくわえて唸っていて、写真撮るのを忘れていやぁがる。
6貫食ったところで トロが出てきた。
「板さん!頼んでないよ!」
「いえっおつれさんが余りにも美味そうに召し上がるので、サービスです」

店を出てから「お前な~、ロイヤルホストで食っても、下ぁむいて、唸って食うのか」
「はい!」
「幸せなやつだな~」