キッチンカーで、業者さんからの電話・FAX・メールに怯える日々

値上げ恐怖症

理由はもちろん“値上げ“です。

食材や資材を扱う取引業者さんとの連絡は、通常は仕入れをする時にこちらからします。

よほどの事がない限り、業者さんから連絡が来ることはありません。そして、その“よほどの事“というのは悪い知らせがほとんどで、一番最悪なのが廃業。

もう自分にはどうしようもなく、相手の気持ちを考えると言葉がありません。しかし廃業の場合は基本的に連絡がないことも多いので、最悪な知らせではありますが『こんな時に連絡をして戴いてありがとうございます』という気持ちもあります

次は、自分が仕入れをしている食材もしくは資材の取り扱いがなくなること。

同じようなモノがあればいいのですが、まずありません。またイチから探したり、食材の場合は実際に何度もたこ焼きを作り、常連さんに何度も試食をしてもらったりと物凄く手間と時間とお金が掛かります。

そして、ここ数カ月頻繁にあり過ぎて恐怖症気味なのが冒頭に挙げた“値上げ”です。小麦粉・かつおぶし・ソース等の食材は当たり前。資材もしっかりと上がり、ガソリンの値上げも、移動をするのでもちろんですが、発電機を使う事も多いのでこれまたキツい。

自分のような、細々と軽自動車で営業をしている個人事業主には価格交渉をするほどの力もなく、多くの飲食業の方と同じで本当に悩みが付きません。

どのくらい値上がりしたのか

そこで、少し気持ちを切り替え、自分が移動販売を始めた約20年前と今ではどれぐらい価格が変わっているのか調べてみました。

まずは一般の方にも身近なガソリン。

20年前(2002年)のレシートを確認してみるとレギュラーの最安値は1リットル87円で、平均だと92円ぐらい。それが今(2022年5月)は151円です。

当時はローバーミニとハーレーに乗っていたのでハイオクも入れていたのですが、最安値が102円!ですが、当時はハーレーで日本中を走り回っていて気付きましたが、地元以外はどこもガソリンが高かったので、愛知県は全国的に見てガソリンは少し安めかと。

次に、食材の中でも多くの方々に影響のある小麦粉。

開業時から今まで同じ仕入先で、20年前の一袋(25キロ)の価格は2500円。今は4500円です。が、皆さんもご存じの通りこの記事が掲載されている時にはまた値上がりをしている可能性もあります。

小麦粉は国の需要量の約9割を外国(アメリカ・カナダ・オーストラリア)からの輸入です。安定した供給と安全性の確認を行うために、国が輸入し、売り渡しをしているため、通常の食材とは価格の決まり方が違います。

この件(輸入小麦の政府売渡価格の改定)に関しては、以前農林水産省に問い合わせ、農林水産省農産局農産政策部貿易業務課麦類需給班という、とても長い名称で、この班の方もしっかり言えるのか心配してしまうような部署から、ていねいな返事を頂いたので、もし機会があればまた記事にしたいと思います。

次は資材で、フードパック。こちらも開業時から同じ仕入れ先ですが、以前は店舗で購入をしていたのを、今はネット経由で注文をして、自宅まで配達をしてもらってます。

20年前は100個入りで260円。今は451円。ですが、こちらも記事が掲載されている頃にはさらに値上げされている可能性が。とはいえ、たこ焼きの販売価格全体からみたら資材の割合はまだ小さいので、何とか耐えられる範囲かと。

最後に、一番重要で一番の悩みの種。タコです。

こちらは同じ仕入先でも度々産地や質が変わり、仕入先も20年の間で2度変更。以前は業務用食材を扱う卸売会社さんから仕入れをしていましたが、今は水産専門商社さんから直接仕入れをする形をとっています。

20年前は1キロ720円。今は2052円ですが、次の仕入れではさらに若干上がっている可能性があります。たこ焼き屋にとって一番重要で、原価の中でもかなり多くの金額を占めるのがタコ。そのタコが20年で約3倍!開業時には全く想像もしていませんでした。

乗り越えるために

話は少し逸れますが、自分がたこ焼き屋を始めた当時。地元でよく耳にした言葉で“粉もん1割”という言葉がありました。

これは、粉もん(主に小麦粉を使う食べ物)は原価が1割という事らしく。これにたこ焼き屋も入るのかはよく解りませんが、粉もんは原価が低いから儲かる、ということらしいです。ですが、開業時で自分のお店ではタコの値段だけでだいたい1割。今は約2割。

おまけにたこ焼きの生地になる粉は自家製で、その中に配合する粉の一つは正式に取引できるまでに10年も掛かってしまい、手間も金額もかなり費やしました。塩に至っては全国を旅しながら探したんですが、結局は自分で海水から作っています。

手間を掛ければそれだけ美味しくなるかと言えば、それは違うとは思います。高価な食材に関しても同じ。味は所詮好みの部分が大きいので。安い食材で時間も掛けずに美味しいモノができるのならそれが一番で理想です。たこ焼きはそもそも庶民の身近な食べ物。大阪では今でも激安でめちゃくちゃ美味しいたこ焼き屋がたくさんあります。

いくら仕入れ価格が上がったとはいえ、そのまま販売価格に反映させるのはとても難しく、今現在は価格を据え置きにしています。恐らくこの記事が掲載されている頃には何かしらの答えを出しているとは思いますが、いい機会なので開業時の気持ちを思い出しながら乗り越えたいと思っています。

変化を楽しめている間は頑張れる

あ、そういえば今回も出店先のお話が。前回新たに二カ所増えたと報告させてもらいましたが、あれからまたお誘いがあり、出店先がもう二カ所増えました。毎月一カ所づつ増えていることになりますね。

出店先が変わればお客さんもガラッと変わります。そこが移動販売の楽しみでもあり、怖さでもあるのですが。この変化が定期的にあるおかげでいつまでも初心を忘れることなく新鮮な気持ちで営業ができる、これは本当に移動販売ならではのメリットだと思います。

一人旅の時もそうですが、偶然の出逢いで全く予期しない展開になり、それが人生を変えることになることもあります。この変化を楽しめている間は、移動販売をまだまだ頑張れそうな気がします。

※小麦粉の値段ですが、記事を書き終えた後に電話があり500円の値上げという事になりました。今まで4500円だった価格が6月20日から5000円という事になります。開業時の2500円から約20年で倍になったという事です。そして、まだまだ上がる事を想定して値上げのタイミングや価格を考えないといけませんね。

記事を書いた人

たこハシロウ 10代で両親を亡くしホームレスも経験。今は買い取った学習塾の6号教室で一人暮らし。5号教室は制作途中のバーカウンター、台所は元職員室、黒板は特大のメモ帳、下駄箱には工具とキャンプ道具。今も一人で改装中。過去にテントと寝袋、調理器具をチョッパーハーレーに積み、北海道・東北・北陸・関東・関西・九州、全国各地で調味料や食材探しとたこ焼き屋巡りの一人旅を経験。2001年、軽自動車のウォークスルーバン を一人で改装し85万で”HIRO君のたこ焼き屋。”を独学で起業。今は2台目で走行距離は地球約5週。営業回りは2000軒、出店した場所は100ヵ所を越える。