米作りを初めて10年、地元に根付く“田んぼオーナー制度”

株式会社ガヤマファームは、神奈川県平塚市の農業生産法人です。有名な米どころでもない土地では採算が取れないと言われる稲作ですが、誰かが米を作らなければ、田んぼはどんどん荒地になってしまう。「だったら自分がやる」と、代表の菊池創太さんは年々、作付け面積を増やしています!

株式会社ガヤマファーム 代表取締役 菊池創太 

 

自分の食べるものは自分で作りたい、から始まった 

 農業従事者の高齢化が今、問題になっています。70代はあたりまえ、60代なら若い!さすがに80歳を過ぎたらキツイ、と耕作放棄地およびその予備軍は全国で増え続けているのです。菊池さんはそういった耕作放棄地や、様々な理由により耕作する人がいなくなった土地を借り入れ、「家族に食べさせたい”特別”なお米」をコンセプトに、農薬・化学肥料を使わず安全・安心なお米を栽培しています。湘南・平塚の地で化学肥料を一切使わずに育てるお米は「米の食味コンクール」で2年連続“特A”を受賞した「はるみ」です。 

 

菊池さんが神奈川県平塚市・湘南エリアで農業を始めるきっかけは何だったのでしょうか。そもそも自分の食べるものは自分で作りたいと考える菊池さんは元高校の英語教師という異色の経歴。「昔から市民農園などで畑いじりはできるけれども田んぼでそういうのってありませんよね。なのであまり機会がなかったのですが、近くの田んぼで耕作している方から頼まれ、お手伝いをしているうちに農業にのめりこんでいきました。」 

 

田んぼオーナー制度とは? 

燦々と輝く太陽の下で田んぼの中に足を入れるとヒヤっと冷たく、ヌルヌルと、ズボッと泥に足が嵌って抜けなくなる。そんな体を使って自然をめいっぱい感じてみたい家族や東京で普通に仕事をしている20代の女性たちに今、「マイ田んぼ」が人気です。田んぼのオーナーは田植え後に2回だけ除草作業を行っていただくだけで、秋には無農薬で大切に育てられた湘南ブランド米「はるみ」の新米が90キロ(約1年分)届くという制度です。 

 

 

無農薬のお米をみんなで作る 

 

「美味しくて安全な無農薬米を食べたい」という方は年々増えているようです。しかし無農薬のお米を売っているところって少ないし、やっと探し当てても結構な値段がしたりして。その一方で、手間のかかる無農薬米は、年々生産が難しくなっています。稲作とは雑草との戦い! 生えてくる雑草をそのままにしておくと稲が育ちません。田んぼオーナー制度では、割り当てられた区画の除草作業をオーナー様が行います。ちょうどこの日は、田んぼオーナーである“日本一予約が取れないお宿”と言われる「箱根吟遊」のみなさんが除草作業を行っていました。さっそく「箱根吟遊」の料理長、菅谷恒夫さんにお聞きしました。 

 

日本一予約が取れないお宿と言われる「箱根吟遊」

-こちらのお米を使って、お客様の反応はどうですか?  

僕の前任者がずっと炊き込みご飯をお出ししていたのですが、それよりお客様の反応が良くて、もう段違いです。養殖の魚にいくら手をかけても天然にならないように、品質の良い食材を使えば、あれこれ手をかけなくても美味しい料理ができるってことですよ。まずお子さんの反応がぜんぜん違います。子どもは正直ですよ。お子さんの食べっぷりにお父さん、お母さんもびっくりされます。 

 

-それって無農薬が関係しているのですか? 

 

関係はしていると思いますが、それよりも、なんといっても作る人の思いですよ。美味しいお米を作って喜んでもらいたいという菊池さんの思い。それは僕たちも同じなんだけど加えて僕の場合、料理を出す時に考えるのは、給仕する人が恥をかかないようにと、いつも心がけています。 

 

-料理人として気になりますよね。 

 

そこを一番気にしてあげないといけないよね。お金を頂戴する以上、それに見合った料理を出すのは当たり前です。中居さん達が困らないような料理を出さないと、旅館はひとつの輪になりません。料理人だけが頑張っても旅館の評判は上がりませんし、フロント、洗い場さんもいなきゃならない。みんなが揃わないと旅館はうまく回りません。そういうチームワークのよさが「箱根吟遊」でありお客様からご評価いただいていると思います。 

 

-旅館で料理の占める役割は大きいですか? 

 

大きいよね。お米も料理もお客様から「美味しい~」って言葉を聞けば、中居さんたちはより気持ちよく働けるだろうし、料理を担当する我々からするとお客様から高評価をいただける食材を使うのはもちろんだよね。 

 

-「田んぼオーナー制度」に参加してよかったですか? 

マイ田んぼオーナーの「箱根吟遊」のみなさん

今回、オーナー制度のおかげで実際に田んぼ作業を体験する事ができたのですが、化学肥料を使わない無農薬の大変さをすごく実感できました。田んぼに足を入れてみて、無農薬にこだわり抜いた菊池夫婦の思いも一緒に体験できたと思います。それに賛同して箱根吟遊がオーナーになった事を、お食事を提供する係が生の声としてお客様に伝えられたらと思います。 

 

無農薬の田んぼを増やしたい 

ガヤマファームの「マイ田んぼ」オーナーは、田植え後のこの時期(6月~7月)に2回ないし3回除草作業を行うだけです。苗が小さなこの時期に中野式除草機(写真)を使って、雑草を根こそぎ取り除くのです。 

栃木県の中野水田除草研究所が考案し、特許も所得

 

菊池さんに聞くと「除草はタイミングが大切なんです」ということでした。この作業を半日から一日行って、あとは田んぼでおにぎりを食べたり、みんなでカエルなどの生き物を追いかけたり、おいしい時間の過ごし方です。 

ガヤマファームが管理する田んぼは現在3ヘクタール。管理する全ての田んぼが無農薬ではありませんが、オーナーさんが増えれば増えるほど無農薬栽培の田んぼも増えていきます。 

 

 

 

#キャプション 

写真⑦:マイ田んぼオーナーの「箱根吟遊」のみなさん  

写真⑧:日本一予約が取れないお宿と言われる「箱根吟遊」 

 

取材協力:株式会社ガヤマファーム 

神奈川県平塚市北金目3-17-29 電話080-5658-1415 

 

記者:スマイラー特派員

谷口光児(テンポス広報部)