コラム:マーケティングとか言うからややこしい vol.3
春を経て、これから暖かい初夏の季節を迎える。日本アイスクリーム協会の調査によると、この時期からアイスクリームの売れ行きが伸び始め、8月をピークにして10月には山を下りきるらしい。私も夏になればアイスを食べるのだが、必ず口にするのがガリガリ君(赤城乳業)である。毎年、ソーダ味7本入りの箱を少なくとも5箱は購入していると思う。庭仕事や草野球から帰ってきた後のガリガリ君は格別である。
仕事柄、キャッチコピーやネーミングを検討することが非常に多い。そういった視点で考えると、もし「ガリガリ君」というネーミングでなければ今のような大ヒット商品にはならなかっただろうと思う。かき氷との複合技であるとはいえ、基本はアイスキャンディーで競合商品も多い。もちろん商品開発の苦労を経て生まれた商品だからこその美味しさであることは言うまでもないが、売上にそのネーミングが大きく貢献していることは間違いないだろう。
ここ最近でネーミングが秀逸だと感じたのは、ジャイアントコーン(江崎グリコ)の「しあわせのチョコだまり」だ。初めて聞いたときはズキュンときた。これは、およそ1年前に同商品がリニューアルされる際の目玉にしたもので、コーンのしっぽ、最後のひとくち部分に溜まっているチョコを増量したものだ。あそこには以前からチョコが溜まっていた気がするが、ガリガリ君ほど食べないので、どれくらいの「チョコだまり」があったのかは残念ながら記憶にない。ズキュンときたのは正しかったようで、このリニューアルにより、発売からわずか1ヶ月で出荷本数1,000万本を突破したのだから驚きだ。
中小企業から見れば、CMをバンバン流せることはもちろん、イメージキャラクターが綾瀬はるかさんである時点でズルいと感じる。ただ、それを差し引いても、「しあわせのチョコだまり」というネーミングが売上アップの大きな役割を果たしたことは間違いないだろう。これに決まるまで相当の打ち合わせを重ねたのではと思う。
商品としては、消費者から見ればコーンの底に少しだけチョコが増えたというだけの変化である。それだけで前年同月比188%をたたき出すことは通常考えにくいので、いかに「ネーミング」が売上に影響を与えるのかが分かる好事例といえよう。商品名ではなく「特徴」に対してのネーミングだからより面白い。ちなみに、綾瀬はるかさんはそれより10年以上前からイメージキャラクターをやっていたので、タレント効果でたまたま売れてしまったというわけではなさそうだ。
これら事例を出したのは、ネーミング次第で売上がアップすることを知っていただきたいためだ。身近でシンプルな事例としては、「オードブル」を「ファミリーセット」に名称変更しただけで、同じ商品なのに売上が3倍に増えたケースもある。何の工夫もない変更ではあるが、結果的にファミリー層をターゲットに置いたほうがよかったということであろう。
正解を見つけるのは難しいが、ぜひいろいろなパターンを試してみてほしい。最も簡単なのは「絵に描けるようなネーミング」にすることだ。例えばメニューに豚の角煮があるなら、「箸で崩れるトロっとろの豚角煮」といった具合に。
記事執筆
ビズクルー株式会社
代表取締役 田中 良平
集客やビジネスモデル構築を強みとする。飲食店のチラシやPOPなどを格安定額制で丸投げできる「助太刀丸」を運営。