鮮魚鶏出汁麺 沢むら 店主 大原幸一氏
飲食を取り巻く環境を見渡したとき、今までと同じことをやって稼ぐのが難しくなっているのではないか。例えば、外食といえば、真っ先に頭に浮かぶのがラーメン店。ラーメン店の中にはテイクアウトやっています、お弁当はじめました、みたいな感じで人気ラーメン店といえども、新しいお客様のニーズに対応していかなければ明日はない。
寿司屋を26年間続け、ラーメン屋に業種転換してからも多くのラーメンファンから支持されている「鮮魚鶏出汁麺 沢むら」の店主、大原さんの経験は貴重だ。
やっぱり、世の中の変化に対応していかないとね
料理は和食も中華も洋食も、食材と調味料が違うだけでどれも切ったり煮たり焼いたりと同じようなもの。それならばと、寿司屋で培った技術を好きなラーメンで活かしたかった大原さん。やっぱりラーメン、好きな人多いからね。
初代のオヤジの跡をついでこの地で寿司屋を8年やりました。銀座で寿司屋やっていれば、そのまま寿司屋を続けていたかもしれない。新しいことがやりたくて海外で寿司を広めようとタイのバンコクに渡って9年。雇われ職人から始めて自分の店を持って独立しよう思ったんだけど、楽しくってさ、散々遊んじゃったんだよ。それで日本に戻ってきて寿司屋からラーメン屋に業態転換した。
-ラーメンよりも寿司のほうが、正直儲かるのでは?
ここで寿司屋をやっていたとき、1日で100万円売り上げたこともあった。ラーメン屋はどんなに頑張っても一日20万円が限界だね。
-飲食店が生き残る方法として、今、業態転換が話題ですが?
そんなに簡単じゃないよ。
確かに、寿司屋で身につけた技術をラーメンで活かした「ちらしラーメン」と「貝出汁ラーメン」でスタートしたんだけど、店を開けたときは月1万円2万円しか売上がなくって、5年経ってようやく300万円くらい売上の店になったよ。
寿司屋の常連客も最初は来てくれたけど、やっぱり違うんだよね、客層が。
だからターゲットを昼のサラリーマンと職人さんに絞ったメニューを考え、ボリュームも変えていった。
そして、寿司屋とラーメン屋とでは段取りが全然違う。ラーメン屋は重労働ですよ、寸胴は重たいしね。
-「鮮魚鶏出汁麺 沢むら」の繁盛は寿司屋で培った技術があったから?
それはもちろんだね。料理を長くやっている人って、頭でイメージしたのを作っちゃうんだよね。そのイメージ通りの料理を作る技術があるか、ということだよね。もちろん若干の改善はあるんだけど、最初のイメージからそれほど離れたことはないよ。大切なことは頭で考えたことは、何でもやってみること。
それと寿司屋の技術って、料理だけじゃない。接客ですよ。大切なのは、お客様との会話が弾むかどうか。寿司屋は会話と合わせて料理を提供する。
一方、ラーメン屋は入ってすぐに券売機があり、忙しいときはお客様と一言も口を利かないことがある。それでもできるだけお客様とは会話するようにしているし、常連さんには「こういうの試作してみたんだけど、食べてみて」と言っては、お客様とのやり取りを大切にしているよ。
業態を転換するって、大変ですか?
飲食店で何かを変えるってのが大変なんですよ。
新しく始める時って、それほど大変じゃない。でも、やり方を一つ変えるだけでも大変だ。物理的なことで言うと、今まで、やってきたことと違う方法で一から始めないといけない。従業員がたくさんいるとそれはもう大変ですよ。飲食店がなかなか変われないのも、こういうところにある。頭を切り替えればいいってことじゃない。それでも「俺はこうしたい!」って強い気持ちがあればなんとかなる。業態転換を成功させるためには今、変わらないと未来はない、くらいの気持ちが必要だと思う。
取材協力
神奈川県藤沢市大鋸999-8
電話0466-23-0200
谷口光児(テンポス広報部)