戦後ドラッカーを始めとした、幾多の西欧合理主義経営が日本に入ってきた。
プロダクトアウトからマーケットインなども最たるものである。
中でも際立っているのは、我々の日常生活まで変えてしまったチェーンストア理論がある。
戦前までは、チェーン店という考えはなく、多店舗展開にはとてもならないが、徒弟制による支店経営は、多くても20~30店にすぎない。
徒弟制とはトップが商売の奥義を、伝授するのだから、3年や5年勤めたからって、奥義を体得できるものではない。
包丁の研ぎ方では、砥石の置き方、刃先の当て方、研いでみて、刃先に指を軽く当てて、刃先を滑らす。研ぎ直す、指を滑らす、研ぎ直す。
包丁研ぎひとつを取っても、こんな風だから 研ぎを体得するのにさえ、5年はかかる。
10や20の作業をこなすのに15年や20年かかるのは当たり前。
35年ほど前 大森の有名繁盛店 とんかつの「まるいち」に弟子させてもらえることになった。
包丁研ぎ器があるからそれを使ったらどうかと提案したが、研ぎが違うから体得せよという。
キャベツの千切りの指導を受けている時も、心を込めて切れというだけで、指導が合理的でないので、普通に切ってるつもりだが、お客が喜んで食べてくれるように切ってないという。
キャベツ切り器を持って行って、シャーっとやったら、そんなものではキャベツは美味しく切れないという。
「まるいち」の名人によると、納得いくトンカツは、1日ひとつ揚がるかどうかだという。
一方 チェーン店は、名人を作るのではなく店を増やす、メニューを絞り込む、作業を絞り込む、機械を使える仕事は、出来る限り機械を使い、熟練の技を必要としなくして、
覚えるべき仕事を絞り込んで、簡素化して、短い時間で体得出来るようにして、多店化する。
この20~30年個人経営の飲食店の、閉店率が高いのは、1~2店舗しか経営してないのに、技を極めることをしないで、多店舗展開するチェーン店もどきの、機械を使ったり、マニュアル化ている。
多店舗展開しているチェーン店と同じ事をしていて、勝てる訳がない。
「個人店は、技を極める」ようでなくてはいけない。