メニュー会議
あさくまのメニューには、大皿メニューがない。
日曜日に、女房、子供を連れて4~5人で来たとする。
親父は張り切って「お前らなんでも食っていいぞ、高いの食うなよ」
とか言って、それぞれが、注文する。
各自ばらばらに頼んで、自分の注文したものを食べる。
「店長よ、これじゃあさみしいと思わんか」
「何がですか?」
「親父は張り切って、一つご馳走してやろうとみんなを連れてきた。各自ばらばらに頼んで、好きなものを食う。ここんとこが寂しくないか」
「寂しくはないです」
「4~5人の大人が来たとして、それぞれがステーキを注文した、先輩が一つみんなにごっつぉうしようとしても、喰わせるものがない。それぞれが注文した、別別のステーキを喰っている。そこんとこだよ!先輩として寂しくないか、見せ場がないじゃないか」
「それは、大皿メニューがないって事ですか」
「でかい皿に、大ぶりの海老チリが乗ってるとするか、先輩は、その一皿を注文するだけで、顔が立つってもんだ。そのメニューがないと言いたいんだ」
「大皿メニューですよ」
「タコのカルパッチョのようなものを、7~8つ試作してみてくれ」
1週間後、試作したから食いに来いと言う
「安井お前は何を作ったんだ」
「はい!6種類作ってみました。先ずタコのカルパッチョ、海老チリ、それから、ああだこうだ」
「鉄ちゃんお前は何を作ったんだ。」
「はい、タコのカルパッチョと海老チリと、ああだこうだ、8種類作ってみました。
「待てよお前ら!なんで揃いも揃って、タコのカルパッチョなんだよ。」
「タコのカルパッチョと、海老チリを作れと言われたので!」
「馬鹿たれ!俺は料理を知らん、だから、タコのカルパッチョのようなものを作れと言ったんだ」
「タコのカルパッチョを作りました」
「何度言わせる!タコのカルパッチョを作れとは言ってない!タコのカルパッチョのようなものって言ったんだ。」
「タコのカルパッチョを作りました」
「てめえらよく聞け!ようなものつったら、タコのカルパッチョじゃないって事だ!」
「何ですかそれは」
「頭にくるなぁお前らは!北島さんは男のようだなって言ったら男か!」
「北島さんは女です。」
「北島さんが男か女か聞いてんじゃねえ、この野郎!」
「暑くてまるで夏のようだなって言ったら夏かぁ」
「夏じゃありません」
「良くなった良くなった。プリンのようだなつったら、プリンか?」
「プリンじゃありません」
「絵のようだつったら、絵か?」
「絵じゃありません」
「分かってきたじゃないか、タコのカルパッチョのようなものつったら、なんだ?」
「タコのカルパッチョです」